七話
昨日妹に財布の中身をほとんど持っていかれたせいで本日土曜日に予定されていた『みんな仲良し、ボウリング大会』という高校のクラスの生徒で行われる親睦会に参加できずにいた。
(昨日、結衣のやついつにもまして機嫌が良かったな。まぁそのおかげなのか理由を話したら簡単に許してくれたからよかったが。…それにしても急に予定が無くなると暇だな、受験勉強であまり運動できてなかったから少しその辺ランニングでもしてくるか)
以前までは週に1回ランニングをしていたが受験生の大義名分である勉強という超まじめな物事に本格的に取り掛かるにあたって仕方なく運動しなくなっていった。久しぶりに走る街の中は何一つ変わらない景色だった。
(あれ…こんなにきつかったっけ…公園の給水所までは余裕で走れてたはずなのに…まだ半分じゃん…もしかして俺…歳か⁉)
そんなことを考えて走っていたらいつの間にか公園に着いていた。公園の中に入り水を飲んで、いつものように近くにあるベンチで休んでいると、金髪で巻き髪、さらに白い肌というどこかの物語の中から出てきたんじゃないかというほどテンプレな女の子が右往左往しながらこちらに向かってきて、俺の前に堂々と仁王立ちをし、はっきりとこう言った。
「そこ私の場所なんだけど」
「どういうことですか」
「ここいい感じに暖かいから11月から6月までは私の場所なの、わかったなら早くそこどいて」
(なんということだ、11月から6月なんて俺がこのベンチで休憩する期間と被ってしまっている。ここは俺が前々から見つけていた最高のポジション、まさかほかの人に見つかってしまうなんて…もしここでこの位置を譲ってしまったら俺はこれからランニングするたびに寒さとの戦いになってしまう、絶対にこの場所は守って見せる)
「この場所は…」
彼女に反論しようとした俺に金色の艶やかな糸が勢いよく落ちてきた。