六話
部屋に戻って作戦を考えてるときふと小腹がすいてリビングへ食べ物を探しに行った。冷蔵庫の中を見ながら自分の好みの食材を探していると、昨日の夜ご飯の残りの漬物が目に入った。
(これはラッキーだな、確か冷凍庫の方にご飯があった気がしたな、これで漬物ご飯で夜ご飯まで耐えることにしよう)
レンジで解凍した白米は出来立てのような湯気を上げながら今すぐに『俺を食べろ』と言わんばかりにそこに光り輝いていた。そこに冷蔵庫から出した漬物を乗せ口へ運んだ。口の中で漬物のしょっぱさとあたたかい白米の甘みが混ざり、無駄な味が一切ない純粋なおいしさ。すぐに口の中から消えてしまう味に箸が止まらなくなってしまった。気づくとお茶碗の中には白米は残っていなかった。
(白米に漬物を乗せただけなのにこんなにもおいしくなるとは、おいしさというのはここまで人を豊かにされるのか、食事というものはとても素晴らしいものだ)
俺は妹の部屋の前に立ち、扉に向かって話しかけた。
「なぁ結衣、今から俺コンビニ行ってくるんだけどなんか食べたいものないか、何でも買ってやるぞ」
中の音が急に騒がしくなった、と思ったらゆっくりと扉が開き、その奥には満面の笑みの妹が佇んでいた。
「行こ、お兄ちゃん」
「お、おう…」
(なんだこいつ、急に態度変えるじゃん、最初から何か買ってもらうのが目的だっただろ絶対、こういう図々しく生きるところはとても素晴らしいと思うんだけど立場的になんか微妙な気分…なんだこいつ)
「いらっしゃいませー」
挨拶を快く全身で受け止めて店内の奥に足を延ばした。