四話
「遅刻の理由を教えてくれるか」
「人助けです…」
「わかった、席に着け」
ちょうど三時間目が始まる時間、教室の中で注目を集めながら俺は席に着いた。なんだか今日の教室はぱっとしない、何かが起こる前触れのようにも感じられた。
四時間目の数学の時間が終わり学校全体に穏やかな時間が訪れる。親が作ってくれた弁当を自分の机の上で一人食べる。今日は一段と独りを感じた。
ほとんどの人が昼ご飯を終えて活発に活動し始める昼休み後半、俺はいつも通り一人携帯を触っていると、教室の窓側後ろが何やら騒がしい、横目で様子を伺うと会話が何かのスポーツのように白熱してしまっていた。どうやら二人で対戦していたゲームで邪魔が入ったという趣旨の会話をしてるらしい。
「最初に一回だけって言ってたじゃんいい加減にしろよ」
「何言ってんだよ、お前も見ただろ対戦中に俺の携帯が手から落ちたのを、あんなのは無効試合だ、もう一回やるぞそしたら必ず俺の方が強いって証明できる」
「手から携帯が落ちたことも含めて実力、運が君にはなかったんだよ、君は弱かったの」
しばらくの間口論が続きそろそろ誰か止めに入ると思っていた時『ふざけんなよ』という怒号とともにガラスの割れた音が教室中に鳴り響き、一瞬にして静まり返った教室の中には隣のクラスの賑やかな会話が聞こえてきた。
しばらくして今浪先生が教室に駆け付け事態の収拾を図り何事もなかったかのように皆五時間目の体育に向かっていった。
更衣室に向かっている途中に保健室の中から顔立ちがとても整っている比較的脊の高い優しそうな男と何もかもが平均的な陽キャっぽい男が出た来た。平均的な男の左腕には白い布が何重にも巻かれているののをイケメンの男が心配そうに眺めていた。その光景を眺めていると包帯を左腕に巻いた中二病らしき男が話しかけてきた。
「ガラスが割れたのってうちのクラスだよな、だれが割ったかわかるか、もしかしてお前じゃないよな」
「俺じゃない、名前はわからないけど割ったのは男子だよ」
俺から話を聞いた中二病は早歩きで更衣室の方へと消えていった。後を追うようにして俺も体育館に向かった。
静かな体育は俺たちのクラスに湿った空気を運んできた。