二話
しばらく教室の中で待っていると明らかに制服ではない服を着ている人が教卓に立ち、偉そうに話し始めた。
「新入生の皆さん、初めまして私の名前は”今浪 由美子”といいます。よろしくお願いします。そして、高校入学おめでとうございます。皆さんとゆっくり話したいですが、知っての通りこの後すぐに体育館で入学式があります。貴重品だけ持ってすぐに体育館に移動してください。あっそうだ、今のうちに携帯電話の電源を切っておいてください」
学校生活の中でなるべく教室にいないようにすることが多かった俺は、いち早く体育館へ向かった。道中今浪先生の声が聞こえた。
「あぁ、昨日は久しぶりに一瓶全部空にしてしまってな、まだ頭が痛いよ」
体育館には一面ブルーシートが敷かれていてその上に何百というイスが規則的に並べられていた。偉そうに指示を出す大人に従い学生は席に着いていく。
(正直式典は退屈だ。いったい俺以外の生徒は入学早々勝手に振り回されて何を考えているのだろうか。周りの表情を見る感じまゆ一つ動かさず静かに座っている。何とも思っていないのだろうか。だが、人は表で平然としていてもそれは本心とは違う、裏では何を考えてるかわからないものだ。だからこんなことを考えるのはやめよう。)
式が進む途中前の人が定期的に頷いてるのが見えた。きっと先ほどの問いの答えは『何も考えてない』が正解なんだろう。
「これから皆さんに何枚かプリントを配った後少し連絡をして解散にします。」
体育館から戻ったら早速今浪先生が話し始めた。連絡の内容は日直がどうとかこれからの授業がこうだのというどうでもいいようなものだった。
帰り際自分のげた箱の前で柔らかい香りがして左を見たら、満月のようにきれいな今朝の少女と目が合った。今朝はうつ向いていてよくわからなかったがよく見てみると隣の席の人だった。
「あっ…あの…今朝はぶつかってしまいすいませんでした。」
そう言うと彼女は走って帰ってしまった。
俺は乾いた耳を潤し別世界へと旅をした。