苦手でも
「うわ」
「どうした?」
「いや、ちょっと、うーん、、」
ソファに横並びに座っていると彼女が声を上げた。ちょっとしかめ面になっている。
「思ってたより…あんまり…美味しくなかった…」
彼女が飲んでいるのは、さっき一緒にコンビニに行った時に買っていたものだ。
「前飲んだ時美味しかったのに似てたから買ってみたんだけど…あれもうなくなっちゃったのかなぁ。」
「あらら、残念だったね、一口飲んでもいい??」
「うん、どうぞー」
受け取ってよくみると、アーモンド入り、と書かれた健康志向っぽい、女性うけを狙った感じのパッケージだった。確かに、以前同じようなのを飲んでいた気がする。
「あー、思ったより甘くないね。でも俺は結構いけるかも。」
「えー、本当?」
戻ってきた飲み物にもう一度口をつけて彼女はやっぱり微妙な顔をした。本当は苦手な味なんだろう。だけど自分で買ったからには捨てる、とか、代わりに飲んで、とか言わないところが好きだ。強気で少し意地っ張りで責任感のある彼女らしい。それと同時に甘やかしてあげたくもなるんだけど。
「じゃあそれもらってもいい??交換しよう」
「え、いいの??」
「うん、ほら、はい。」
「ごめん、ありがとう。」
彼女は眉を下げて申し訳なさそうにしたが、別に無理してるわけじゃない。本当に苦手な味ではないし、渡したホットミルクティーは彼女の好きな味だと知っている。
「…美味しい。」
そう言って、彼女がふわっと笑う。
「でしょ?今日は上手く淹れられた。」
「ふふ、いつも美味しいけどね。」
二人で笑い合って過ごせるのが心地よくて、彼女の笑顔を見ていたらとても幸せな気持ちになった。
ありがとうございました!