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まぁ、ゆるーく書いていきます
「やっぱりここに居たのね?トール。いつも本を読んでて飽きたりしないの?」
「はい、本は知識をくれますから。読めば読むほど知らない事を覚えられるので読んでて飽きません。」
転生して早8年。
自分は商人の家に三男として生まれたらしい。
名前はトール・スカーティア。
スカーティア商会は、国で一二を争うトップレベルの商会なんだとか。
彼女は母親の、フィーナ・スカーティア。
かなりの美形で、この世界では珍しい黒髪だ。
自分は今、家の書斎に居る。
この世界の本は読んでいて楽しい。
地球には存在し得ない魔法に関する理論なんかは、特に面白い。
知らない事を知るのは本当に楽しい物だ。
「トールは本当に本が好きなのね。でももう時間切れよ。今日は何の日か覚えてる?」
「確か、今日は魂開の日ですよね?」
「そうよ、じゃ早く行くわよ。トールも自分がどんな権能を持ってるか楽しみでしょ?」
「はい!」
魂開の日というのは、いわゆるスキルの様な物である権能を神より授かる儀式を行う日なのだとか。
世界中教会で、全く同じ日に開かれ、平民だろうと貴族だろうと関係無しに、平等に無料で受ける事が出来る。
権能は人それぞれに与えられた特殊なスキルに近い力で、基本は一人につき一つしか与えられないが、稀に二つ以上の権能を持つ事もあるのだとか。
はるか昔の魔王を討った勇者は、権能を六つ持っていたなんて言われていたりする。
未知なる己の権能。
力の象徴であるソレを漸く手にする事が出来ると思うと、正直ワクワクが止まらなかった。
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母と共に馬車に揺られ教会に着く。
そこには既に、同い年の子供達が沢山並んでいた。
「さ、トールも並んでらっしゃい。お母さんは馬車に乗って待ってるから」
「分かりました。では、行ってきます。」
馬車を降り、母に少し手を振ってから列の最後尾に並ぶ。
列、と言ってもかなり大きめの教会に来ているので、そこそこのスピードで前に進む。
暫くしてようやく自分の番だ。
シスターに案内され、教会の中にある魂開の部屋に入る。
そこは、そんなに広くなく、部屋の中央の細長い台の上に、丸い水晶玉が置いてあった。
「では、トール・スカーティア君。その水晶の上に手を乗せるんじゃ。すると、頭の中に権能の名が浮かんで来る筈じゃよ。」
神父の言う通りに、水晶に手を乗せる。
すると、水晶が淡く光り、脳裏に3つの名が浮かぶ。
魔剣士と剣に選ばれし者、そして魔道の英智だ。
その効果はそれぞれ
魔剣士
魔術と武術の頂きに立つ者。
魔術を用いて、魔剣を顕現させる事が出来る。
剣に選ばれし者
ありとあらゆる剣を、完全に使いこなす事が出来る。
魔道の英智
魔術を自由自在に操り、魔法も扱える。
正直、強過ぎる。
三つ権能がある、それだけでもかなりの幸運だが、それぞれが英雄クラスと来た。
正直一生分の運をここで使い果たしてしまったのでは?と思ってしまう程だ。
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「さて、トール。お前の権能はなんだった?」
家に帰ると直ぐに、父に呼ばれた。
父の名は、シャーレ・スカーティア。
言うまでもなく、スカーティア商会の現会長だ。
「権能は三つありました。」
「な、なんだって!?三つもだと!?」
やはり三つも権能があると言うのはそれだけレアなのだ。
普段は冷静な父が、驚きのあまり勢い良く立ち上がる。
「そ、それで!権能の名は!なんなのだ!」
三つある、と言うだけでこの反応なのだ。
それら全てが英雄クラスだなんて言い出してしまえば、気絶してしまうだろう。間違いなく。
何より混乱を招く可能性が大いにある。
そういう展開は、何度も前世の本で読んだからな。
「1つは魔剣士でした。残る2つは剣術・上と魔術適性でした。」
流石に面倒事は、どう転んでも間違いなく楽しくないだろうから、あえて2つは同系統の別の権能の名を言った。
流石に英雄クラス全部を偽る事は、限りなく無理に近いので、魔剣士だけは隠さずに言う事にした。
「三つの内1つは英雄クラス……しかも残る2つは上位の物と来たか……」
椅子に座り直し、冷静を取り戻した。
とは言っても、かなり困惑しているようだが。
「……中々に素晴らしい権能に恵まれたな。」
「はい、僕自身も、かなり驚きました。」
勿論嘘だ。
どうせあいつが干渉してきたんだろ程度にしか思ってなかった。
「それでだ、商いに関する権能が出なかったのは少し残念ではあるが、トール。お前には、戦いの才能がある。そこでだ、学園に通ってみたくないか?」
「学園ですか……?」
「あぁ、トップレベルの術師や剣士達を数多く排出してきたフォートレート学園にだ。」
異世界の学園、それもハイレベルな……
是非とも、是非とも言ってみたい。
まだ知らない術式を、もっと知りたい……!
「是非とも行きたいです!」
楽しんでくれれば幸いです
軽い補足をば
魔術と武術の頂きに立ってんなら別に他の権能要らないんじゃないの?って思われるかと思いますけど
いくら戦えても聖剣だとか神剣等々、魔剣以外が使えないのです
そこで剣に選ばれし者です。これで魔剣以外も使えるぜぃって感じです
で、魔術の方ですが、魔道の英智は術式の作成、改変等を可能にする
って感じになります
詐欺った2つの方は完全に適当になります。
ただ魔剣士は名前だけは知られてるだけで能力の詳細はよく知られてない、と思っていただければ。