じ~しゃでやります
「な、だから言ったろ……」
お客様は時にこの企業を使いたい、こちらを使うと言ってくれる。
そしてある時、自分達でやるという。
どうぞ、どうぞ。ウチ等は仕事でやってるし、客は選ばない。……ではなく、選べない。
批判共々、現場は関係なく。今日も今日とて仕事中。
「だから、そんな仕事は普通ならやりたがらないって……。ウチだって、安くないよ。ただ、サービス落ちたとか言うけど、続かないって。他を使っていいよって……他がやってくれないって、知らねぇよ。ウチだってやりたくないんだけど。めっちゃ悪評書いてくれてるのに……」
壁に何でも書いていいのなら、無い噂もあるように書くものさ。それを間に受け、ホントにやってしまう人もいる。
会社が悪いという声は構わないが、現場までやってくるとその人物にしか話が来ない。
「ええ~~、結局ぅぅ~~?……まー、いいっすけど。サービスないよ」
どんなサービスにも本来、金というのがかかり、そいつに”均一”などという事を設けるのは大変。
◇ ◇
「え?あの系列の荷物。自社でやるんですか。ありがたいっすね」
「あー、そうらしい。まー、荷物が少し減ったところで、配達員は増えねぇけどな」
事の発端は、自分達の企業の不手際やトラブルの多さから、見放された形のようなものであったが……。いいんじゃないって、現場は思っておく。
現場のやる事は
「届いた荷物をちゃんと届けるだけだ」
「そーいう事はちゃんとした業務をしてからほざけよ、木下さん」
「うるせぇー、山口」
人が増えねぇんだから、荷物が減ることは……良くは無いが、嬉しい事だ。全国各地、トラブル数えたら日常茶飯事なんだろうが。仕方ねぇと思って、切り替えるのが中堅どころ。
知るかボケと、開き直る精神力は必要だ。
そんなお話が1ヶ月前にあって……現在。
「はぁ?……俺達が配達しろ?」
「そーいう事らしい。ニュースにもちょっとなったな」
「自分達でやれよー」
せっかく良いニュースが来たなーって思っていたのに、結局元通り。なんやねん、ってがっかりしちまう。それをアッサリと受け入れちまう辺り、こちらも方向音痴ぶりというか、お人好し過ぎるのだが。
「自社でやったら、コスト掛かるからな。どのみち、トラブルってのは誰が配ろうが関係なく、トラブルを起こしたい奴が起こすもんだから」
詳しい事情は知らないが、……大方、採算とれないから結局はこっちに来たという話。……逆に、配送側がどうしてもと、頭を下げたんじゃないかとも……。現場にはそこまでの事は降りて来てないが。
カンケーない。やることは1つ。
「はいはい、配達するだけですよ。まったく」
ぶつぶつ言いながら、引き受けた荷物を届けるだけ。
◇ ◇
「結局な。その金で人を雇うのは、現実的じゃない。今だったら、尚更。運転手は珍しくないけど、配達員は貴重」
自社でやるというお話から、別の業者に委託する流れになった理由は色々とあるが。その大半を占めたのが、荷物を配る人間の確保の問題だった。
金さえ出せばいいじゃないかと、軽々しく思うかもしれないが。そんなに送料を高くしたら、他を安くすることになる。できない。……簡単に言えば、こんな馬鹿しかできない仕事なんて。無料が適切と言っていいと、9割の良識的な人達は首を頷かせるだろう。自分がやらないなら。
ともあれ、用意できる人件費はこんなもん。それを見て
「こんな金じゃ誰もやらないよ」
そーいう返しが来る。
ホワイトな労働と思える環境だとしても、仕事量はその日にならないと分からない。与えられる金も限られる。
「車ってタダじゃないんだけど。保険だけじゃなくてさ……。ガソリンとか駐車とか……タイヤとか色々と……」
あまり言いたくはない話であるが、それが別途の料金であった。
「専用端末も無料ってわけじゃないんですね。ないと仕事にならないですけど」
配達員も手ぶらってワケじゃない。
どの配達員にもそーいった機械を常に所持している。
「えっ、住所が存在しないんですけど!」
通販で止めて欲しいのは、住所の記載を間違えてしまうこと。電話やメールなどですぐに解決するものでもない。もっと厄介なのは、昔の住所のところにすでに人が住んでいた場合。ほとんど、避けようがない。トラブルの責任は……可哀想だが、配達員。
土砂降りやらの悪天候、セールなどで爆発した荷物の配達などなど……。
そうして受け取ったお金に
「これしか手元に来ないんですか……」
そう思って辞める人もいる。
辞めるのは自由だ。
人がいないから、配達ができないとかいう言い訳は、お客様と上層部には通じないんだ、馬鹿野郎。
現場は死んでも働け。
そりゃあ、資格が必要な仕事が多いんですが。
資格や経験を持ってても、その仕事を辞めた方とかいるわけです。
その仕事内容と報酬、待遇、人間関係などを見て、やるかどうかを考える事なんですよね。
自分は昔と違ってかなり給与が減りましたが、昔の現場を思い出すと吐きそうになるので、これで良かったと思えて、仕事が辛かったから辞めていく人達もかなり見て来たので、難しいですけど。誰にでもできる事でもずーっと続けるのは難しいんですよね。
自分がやらないと、それってあんまり分からないのが、また……。