7:きらめく恋心。
「・・・・。」
「・・・・。」
校内を見回る光とさおり。
しかしどちらも会話はない。
光は、さおりが何で一緒に行くと言ったのかわからず混乱し、
さおりもまた、美月に優しい光に焦りを感じ、勢いで来てしまったからだ。
「…なぁ?何で急に来るって言い出したんだ?」
光が思い切って聞いてみた。
「べ、別に何だっていいでしょ!?」
さおりは慌てて答えた。
さおりの様子を見て、光は正直に聞いてみた。
「なぁ…昨日からずっと何で怒ってたんだ?」
「光が鈍感だからだよ…」さおりがボソッと喋った。
「えっ!?何て言った?」
「別に!!あんたが呑気だからイラッとしてただけよ!!!」
さおりが顔を赤らめながら言った。
「そっか。じゃあもう怒ってないんだな?」
光が笑顔で聞く。
「お、怒ってない……けど。」
まださおりは顔が赤い。
「そうか!!よかった。」
光は笑顔で言った。
見回りが済んだ頃、辺りはすっかり朝だった。
ガラッ
「見回り終わりました。」
「終わりました!!」
仲直りした2人を見て里志と美樹は安心した。
「ご苦労さん」
その直後終わりを告げる地震が起きる。
ゴゴゴゴゴ!!!!
ゴゴゴ!!!
「7時か…。」里志が言った。
「一先ず今日は安心か。」
慶がふぅっと安堵の表情を見せる。
「このあとはどうする?」
光が里志に聞いた。
すると慶が割り込んで喋る。
「まず朝飯食おうぜ!?」
「さんせーい!!」
女子3人が元気になる。
女子が朝飯を作る。
その間男子は今日の作戦を考えていた。
光が自分の考えを話す。
「広場に行ってみねぇか?情報収集したり、自衛隊の武器が置いてあるかもしれない!!」
「決定だ。」
広場に行くことになった。
「お待たせ〜!!」
スーパーに行ったばかりとあって豪華な料理だ。
とても朝飯とは思えない。
全員でご飯を食べ広場に向かう。
12月8日9時02分広場。
「な、何だよこれ!!?」
全員言葉を失った。
昨日の賑やかさなど嘘のような荒れ果てた広場がそこにあった。
化け物の死体と自衛隊の死体。
大破した戦車、散乱した銃の薬莢、木々も焼けこげていた。
まるで戦争の跡地のように……
「女子は向こうを向いてろ!!」
光が気にかけて言った。
同じことが前にもあったからだ。
「やっぱ夜の銃撃はここからだ。かなり激戦だったようだな…」
冷静な里志に対し慶はパニックになっていた。
「てゆーかこいつら何匹いやがんだ!?」
死体を見る限り30匹はいる。
「情報収集は出来そうにないな…」
「それより、一般市民はどこだ?」
光が気になった。
すると美月が話し出した。
「私、ここから逃げて来たの。寝てたら急に銃の音が聞こえて…気が付いたら夢中で走ってた。
たぶん他の人も逃げたんだと思う。
それかあいつらに……」
「それ以上はいい!!」
光が叫んだ。
「ごめん……さおりが怯えるから…それ以上はいい。」
そう言って光は地面に落ちていた拳銃を取った。
カシュッ
銃をスライドさせ構える。
カチャッ
「まだ使えるな……」
「銃に詳しいのか?」
里志が聞いた。
「映画オタクでね…この手のものは扱えると思う。」
まさか光も、こんなところで無駄な知識が生かされるとは思わなかっただろう。
その後光を中心に武器を集め、一度学校に戻った。
ガチャッ
「ふぅ…重かった!!」
慶が持っていた四角いケースを床に置く。
「慶がそれを見つけてよかったよ!!」
中にはセントリー銃(設置するだけで、敵を撃ってくれる自動式銃器)が入っていた。
「こいつは役に立つ…」
「映画ってそんなに詳しいのか?」
里志が聞く。
「あぁ、エイリアン2で使っていた。」
「へぇ…」
5人はそれとなく流した。
ハンドガン10丁、ライフル5つ、手榴弾8個セットが2ケース、ナイフ6つ、セントリー銃2機、それと大量のマガジン。
「これだけ集まれば十分だろ?」
「確かに…」
12時00分
昼食を早めに食べ、
それぞれが自由な時間を過ごす。
さおりはキョロキョロしている。
光を探しているようだ。
「もう…どこいっちゃったんだろ?」
その頃光は屋上にいた。
この短期間でいろんなことがありすぎて疲れたため、風に当たって、無心でいようと思ったのだ。
「はぁ…ここはいいな!!気が落ち着く。」
光は床に寝転んで目をつぶった。
風の音が聞こえる。
いつもと同じ風なのに、こんなに心地良いとは。
ザッ
誰かが光の目の前に立った。
光は目を開けた。
「よっ!!」
そこにいたのは美月だった。
「パンツ見えてるぞ!!」
「見ないでよ…」
2人は屋上の壁に背中をつけ座った。
「どうかしたのか!?」
光が美月に聞く。
「いや、ただ風に当たりたかっただけ。」
美月が笑った。
「あっ!?さっきはごめんな、叫んだりして…」
光は広場でのことを謝った。
「大丈夫、気にしてない。それより…光君はさおりちゃんのことどう思ってんの?」
美月が聞いた。
「え?何だいきなり…」
「だってあの時さおりちゃんが怯えるから止めさせたんでしょ?
そこまでするんだから特別な感情があるのかな〜って思って。」
「……それはその…あいつが悲しむところは見たくないってゆーか、特別な存在なんだ!!さおりは。」
光がそう言ったときだった。
チュッ
美月は光の頬にキスをした。
「なっ!?」
光は驚き、焦る。
美月は少し照れながら言った。
「光君にとってさおりちゃんが特別であるように、
私にとって光君は特別な人なの…」
そう言って美月は、走って屋上を降りて言った。
「えっ?今の……告白?」
光は頭が混乱した。
「……どう…したらいいんだろう。」
考え事をしながら宿直室に戻る光。
途中でさおりに見つかった。
「あ〜、やっといた!!
どこ行ってたの?」
さおりは汗だくだった。
「屋上だよ。そんなに汗かくまで探してたのか?」
「え、まぁ…ね。」
やっぱり俺が好きなのはさおりだ。
そのことに嘘はない。
なのに、後ろめたい気持ちがするのは何故なんだ?
「どうかした?」
反応がない光を心配したさおりが聞く。
「なんでもないよ。」
ニコッと笑う光。顔が引き攣ってるのが自分でもわかった。
どうして恋愛って難しいんだろう!!
悩みが尽きる事なく出てくる。
宿直室に戻った2人。
中には全員いた。
美月と目が合って光は思わず目をそらす。
気まずい……
その様子を見たさおりは、またしても不安を感じるのだった。
18時20分宿直室
夕食をすませ、順番に風呂に入る。
「ふぅ、さっぱりした!」
1番に入った美樹が宿直室に戻って来た。
さおりが言う。
「じゃあ次は私が入るね!」
「あっ待ってさおりちゃん。一緒に入ろ?」
美月が誘った。
「えっ!?」
その出来事に1番驚いたのが光だった。
「何でおまえが驚くんだよ?」
慶がツッコミを入れる。
光は一人焦っていた。
俺が好きなさおり、俺を好きな美月。
その2人が風呂に行くのだから心配でならない。
人の心配をよそに2人は風呂場に向かった。
「あ〜なんかまだあっついなぁ…」
風呂上がりの美樹は愚痴った。
「そーだ、里志。一緒に屋上行こうよ?星が綺麗だと思うよ…」
「え、いいのか?」
「はっ?いいに決まってるじゃん。行くよ〜」
2人は屋上に行った。
「あいつらも急接近だな…」
呑気な慶。
光はそれどころではなかった。
………心配だ…。
風呂場内
「ねぇ…」
美月が言った。
「さおりは光が好きなんでしょ?」
美月が知っていたことに驚いたが素直に答えた。
「………うん。」
美月が言う。
「そっか!
…私ね、光にキスしちゃった。」
「…え!?」
さおりは一瞬頭が真っ白になった。
キスした?
どーゆーこと??
「まぁしたっていっても頬にだけど…」
「……。」
さおりは黙って聞く。
「私も光のことが好き。」
美月のその一言に言葉を失った。
しかし、次の一言で我にかえった。
「さおりには負けないよ。」
さおりも負けずに言った。
「私だって負けないから」