5:すれ違いとスタートライン
「で、どこに行く?」
里志が聞いた。
「う〜ん…見つかりにくい場所がいいよね。」
4人が悩んでいると慶が言った。
「学校でいいじゃん。」
「何で学校なんだ?」
「だってよ、学校なら広いから隠れやすいじゃん。
食堂、自動販売機、売店で食料もらえるし、貯水もしてるから風呂にも入れるだろ?」
「……いいかもしれない。」
「たしかに。」
4人とも納得した。
でも慶のアイデアってのがなぁ…
「おい!?おまえ今慶のくせにとか思ったろ?」
俺を見ながら慶が言う。
「な、なぜわかった?」
「わざとらしい!!
つか、おまえすぐ顔に出るんだよ!!」
「じゃ学校に行くぞ!!」
里志が先頭で行く。
やっぱ頼りになるなぁ
とか思いながら何となくさおりが目に入った。
さおりもこっちに気付き、ニコッと優しい笑顔を見せてきた。
思わずドキッとしてしまった。
くそ……
やっぱあいつかわいいじゃん。
………さおりは俺のことどう思ってんのかなぁ……
「着いたな…」
高校前に到着した。
見るかぎり……誰もいないようだ。
「よし、中に入ろう。」
ガチャッ
中は薄暗かく、不気味な感じだった。
電気をつけないとこんなに違うんだなと思った。
「なんか……怖い。」
さおりが怯えている。
…仕方ない。
元気付けてやろう。
「さお……」
「何ビビってんの、さおり。いつものさおりらしくないじゃん。元気だせ!!」
美樹が言った。
美樹の言葉に元気になるさおり。
「美樹……。そうだね!!こんなんじゃ先持たないよね……よし!!もう大丈夫。」
美樹に先を越された。
なんか恥ずかしくなって俺は肩を落とした。するとさおりに肩を叩かれた。
「何で光まで落ち込んでんの?元気出しなよ〜!」
「うっせー!!」
誰のせいだと思ってんだよ。
「ところでどこに入る?」美樹が聞いた。
「決まってんじゃん。」
真っ先に慶が言った。
「女子更衣室。」
「この変態!!!」
美樹がキレた。
俺がハッとひらめいた。
「宿直室は?」
宿直室はなんかあったとき先生たちが泊まる場所。
「いいんじゃねぇか!?」
里志も賛同する。
宿直室に向かうことにした。
偶然にも宿直室は2階の物置の隣に目立たない感じであった。
「俺天才?」
「光、なんか言った?」
美樹がキレ気味に言う。
「いや、何も。」
ガラッ
中は意外と広く、
キッチン、テレビ、テーブルに布団と必要な物が揃っていた。
「やっぱ俺天才?」
「なんか言った!?」
また美樹が言う。
「な、何も…」
中に入り、テーブルを囲んで会議を始める。
議長役は里志。
「えっと、決めることはこのあと何をするか。」
「1時間休みたい。」
慶の提案?
「食料集めようよ。近くのスーパーから缶詰とか集めないと。」
美樹の提案。
「武器探さない?なんか手元にあれば安心できるし。」
さおりの提案。
「アニメとかであるように空き缶を紐でつなげてセンサーみたいにする。」
光の提案。
里志が言った。
「じゃあまとめると…」
まとめれんのかなぁとか思った。
「1時間休憩したあと、チームごとに行動する。食料班2名、武器班2名、バリケード班1名。」
一瞬でまとめた里志にびっくりした。
「じゃあ私と里志で武器集めるからさおりと光は食料お願いね?」
美樹が笑顔で言った。
「あ、あぁ…」
「わかった。」
2人は動揺しながら言った。
それと同じく、
人一倍動揺している男が1人。
里志だ。
「……っと、俺は美樹と武器集めだな。よし、頑張るぜ!!」
美樹は困惑した。
「え、あぁ…頑張ろうね。」
完全に里志が空回りしていた。
慶が言った。
「つーか俺一人かよ!!」
4人が声を揃えて言う。
「ファイト。」
12時00分
スーパーに向かう光とさおり。
「・・・・。」
「・・・・。」
突然の2人きりに何を話していいかわからなかった。
「なぁ…」
「ねぇ…」
お互い声がかぶる。
「あっ…ごめん。何?」
さおりが謝る。
「いや、たいした事じゃない。そっちは何?」
「え……あの………、光って好きな…人いる?」
「えっ?」
いきなり、すごい質問が来て驚いた。
実は光も同じ質問をしようとしていたのだ。
「いるの?」
さおりがさらに攻める。
「……い、いないよ!!」
正直には言えなかった。
さおりが好きだと言って今の関係が崩れるのが怖かった。
「……そう。」
「さおりは?」
「私もいない。」
さおりは笑顔で答えた。
それからさおりは無言だった。
気まずい雰囲気のなか、2人は食料を集め学校へ戻った。
「おかえり〜!」
玄関で待っていたのだろう。
美樹がお出迎え。
「あぁただいま。」
2人の暗い空気を感じたのか美樹はおとなしくなった。
「どうか…した?」
「えっ!?いや…」
俺が動揺してるとさおりがサラっと言った。
「ううん。何もなかったよ。」
そう言ってさおりは先に行ってしまった。
「あんたなんかしたの?」
美樹が言った。
少し考えてから光は言った。
「……よくわかんねぇんだ。」
宿直室に入るとご機嫌な里志とぐったりした慶がいた。
「おつかれ!!」
里志が言った。
「あぁ。おつかれ」
部屋にはいろんな物が置いてあった。
木刀、日本刀、バット、釘打ち機など、主に武器。
「こんなによく集めたなぁ…。」
「あちこち回って集めたんだ。」
里志が楽しそうに言った。
「慶の作った空き缶バリケードもみてきたよ。」
慶がムクッと起き上がり言った。
「つーかバリケード班1人っておかしいだろ!?」
「あぁ。おまえだから出来たんだ。よくやったよ……なぁ里志?」
「その通り。」
2人は褒めてごまかした。
「納得いかねぇ。」
16時00分
食事やら入浴をすませ、ふたたび会議を開く。
里志が言う。
「あの化け物は明日の地震で出来た地割れから出て来るはずだ。
だから今日は、後眠り明日に備えてほしい。」
「なんか怖くなってきたな。」
慶が、恐怖を予知したかのように重く言った。
そりゃそうだ。
俺だって今日奴らが人を殺すところを見てる。
恐怖を感じずにはいられないさ。
でも、向き合わないと恐怖には勝てない。
「必ず…全員で明日を生き抜こう!!」
俺は気合いを込めて皆に言った。
「光。」
美樹が言う。
「なに?」
「さおりのこと頼んだわよ。」
「あぁ、わかってる。」
そういってさおりを見る。
さおりも気付き、目が合うのだが、さおりはすぐに目をそらした。
「じゃ寝るぞ。目覚ましを23時にしとけよ。」
里志が言って寝た。
皆が寝るなか光は寝れなかった。
さおりのことが気になっていた。
あいつが俺を避けていても俺はあいつを守らないといけない。
でも…あいつに嫌われるのがこんなに辛いとはな。
それぞれ明日への思いは違うが、同じことが一つある。
それは生きたいという思い。
謎の生き物との生死かけた戦いに巻き込まれた5人。
彼らはようやく戦いのスタートラインに立つことができたのだった。