3:それぞれの想い
2010年12月5日
キーンコーンカーンコーン
「光、テレビみたか?」
里志が話しかけてきた。
「いや、どうした?」
「昨日の特番でやっていたんだが、地震後の映像を一般人から入手したらしいんだ。その内容がな、地震後に地割れが起きる。その地割れからなんか不気味な生物が出てきて、近くにいた人をその地割れの中に引きずり落としたらしい。」
「生物?」
「あぁ、暗くてよく写ってないんだが人ではない生き物だった。ただ一般人の投稿だからヤラセって話もある。でも、」
「でも本当なら地震の起こるタイミングも行方不明も説明がつく!って言いたいんだろ?」
「その通りだ。光はどう思う?」
「たしかに説明がつくけどそれだけじゃ信用はできないな。」
「やっぱりそうか?テレビもそういってた。」「でも本当なら…」
2人は言葉を失った。
そこに明るく飛び込んできた慶。
「らしくねーぞ!2人してじぃさんみてーに老けちまってよ。わかんねぇならわかんねぇでいいじゃねぇか。」
「プッ」
「ククク…」
「なんだよてめぇら!?」
「いや、慶に元気付けられるとは思わなかったから」
「同感だ。」
慶に励まされて不思議とすっきりした。
「そぅだよな!わかんねぇことで悩んでも仕方ねぇよな。」
それに俺はさおりを守らなくちゃならない。
そんな弱気であいつを守れるわけねぇもんな。
助かったぜ慶。
心の中でそう思いながら一人で笑ってしまった。
「おい!いつまで笑ってんだよ!」
「わるい、もう平気だ。」
女子更衣室内。
「ねぇ美樹。」
「ん?どうしたの、さおり。」
「もしだよ?もし、男の人が美樹を心配して抱きしめてくれたらその人を好きになる?」
「はぁ?なにそれ!?」
「だからもしもの話。」
「ん〜。私はならないと思う。だって心配してくれるにしても、抱きしめるって…恋人でもあるまいし。」
「そうなのかな。」
「でも、ずっと気になってたやつが心配して抱きしめてくれたら、私この人のこと好きだったんだって気がつくことはあると思う。」
「えっ!?」
「光に抱きしめられたんでしょ?」
「えっ。ちょっと、な、なんで。」
「さおりすぐ顔にでるもん。わかるよ。」
「……私光のこと好きなのかなぁ。昔っからあいつといると変にモヤモヤして、喧嘩するとすっごい不安になって、ずっと違うって思ってたんだけど、抱きしめたらとき、すごく嬉しかったの。」
「それが恋なんだよ。」
「うん。・・・光は私のことどう思ってんのかなぁ…」
「さぁ、あいつ謎めいてるからなぁ…」
教室内。「なぁ光。」
「ん?」
慶が真剣そうに聞いてきた。
「今女子2人いないから聞くけどさ、お前ってさおりのこと好きなの?」
「あ?なんだよいきなり!」
「俺もそれ前から気になってた。」
里志も混じって聞いてくる。
「どうなんだよ!?」
「どうって、普通だよ。好きでも嫌いでもない。」
「じゃあなんであんなにあいつにかまうわけ?」
「かまってんじゃねぇよ。なんかほっとけねぇんだよ…あいつ。辛いのに無理して頑張ったり、前なんて一人でバスケ部の仕事全部やろうとしてオーバーワークで倒れたんだよ。そんなやつだから心配なんだ。」
「ふーん…」
「まっそうゆうことにしといてやろうか!」
里志が言った。
「俺のことよりお前らはどうなんだよ?」
「俺は一人の女とは長く付き合えねぇからな。里志は?」
「俺はいねぇよ」
「何だよ、隠すなよ。」
里志はしばらく沈黙した後、重い口を開いた。
「実は…美樹のことが……な。」
「だろうと思ったよ。」
「確かに!」
「2人ともわかってたのか?」
「いつも一緒にいたからな…。」
「まっこれで、光はさおり、里志は美樹ってのがわかったわけだ。」
「俺は違うっての!」
なんて会話を俺達は楽しんでいた。
それぞれ考えることはたくさんある。
俺はたださおりを守りたい。そのためならなんでもしてやる。
あいつのことが・・・好きだから。