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14:アダム

「死ね!!矢吹光!!」

ペガサスが銃を構えた。


「光!!あぶない!!」

さおりが光の前に走った。


そこで光はようやく事態を把握した。


「さおりーー!!」

光はさおりの肩を掴み、包み込むようにさおりを抱きしめた。




ズドンッ!!!


銃声が響き渡り、銃弾は光の背中に命中する。



床に血が飛び散った。



「さおり…無事か?」


「だ、大丈夫…」

さおりは何が起きたのか、わかんなくなっていた。


光は膝をついて、さおりに寄り掛かった。

「光…?」


「おまえが無事で……よかった。」


光は床に倒れた。



「光?

ねぇ…光ーーー!!!」

さおりは叫んだ。



里志や慶たちも光のもとに駆け寄る。


「おい、しっかりしろよ光!!

せっかく…せっかくさおりに会えたってのに死ぬんじゃねぇよ!!!」

慶は泣いていた。


「おまえはこんなとこで死ぬ奴じゃねぇだろ!!

目を開けろよ!!?」

里志も叫ぶ。



美樹や美月も必死に光の名を呼ぶ。

しかし光は目を開けない。





「ふふふ……はっはっはっは!!!」

ペガサスは一人笑う。


「ついに邪魔だった矢吹光を殺した!!

この手で殺した…

神に背くからそうなるのだ。

はっはっは!!」



一人笑うペガサスに慶が怒りを爆発させた。


「てめぇ…

光を撃って何が楽しいってんだ!!

てめぇは神の使いでも何でもねぇ。

ただの殺人鬼だ!!」


「貴様らも神に盾突く気か?

いいだろう。奴のように地獄に送ってやる。」


ペガサスは再び銃を構えた。






その時、光の意識はどこか別の場所にあった。



「思い出せ…」

誰かの声が耳に響く。



「自分が誰か思い出せ…」


俺が誰か?

知っているさ…

俺は矢吹光だ!!




その瞬間、目の前が真っ白に輝き、気がつくと全体が白く輝く不思議な場所に立っていた。




「ここは……どこだ?」

辺りには何もない。

真っ白に輝くだけ。



「おまえは自分をわかってない…。」


突然後ろから声が聞こえ、光は振り返る。


そこには、とてつもなく大きく、圧倒されるほどのオーラを放つ不思議な人がいた。

白髭のおじさん。

一言でいうとそうなのだが、それだけではない、何か不思議な感じがするおじさんだった。



「あなたはいったい?」

光は聞いた。


「私が誰かは問題ではない。

今大切なのはおまえが誰かだ。」


「俺は矢吹光だ!!」


「違う…それは今のおまえの名だ。

本当の自分を思い出せ。」

男の言っている意味が理解できなかった。


「今の名前?

本当の自分……?

訳わかんねぇよ…!!」


「目を閉じろ…」



光は言われるまま目を閉じる。



その瞬間!!

頭の中をいろいろな記憶が駆け巡った。


あまりの記憶の量で、光にひどい頭痛が走る。



「うぁああああーー!!!」



少しして、頭痛は治まった。


「はぁ…はぁ…

い、今のはいったい…」



「本当のおまえに必要な記憶だ。」

男は冷静に答える。



「本当の俺って何だよ?」

光はついに聞いた。



「おまえは私の息子。

アダムの生まれ変わりだ!!」



「えっ…?

俺が……アダム?」



「そうだ。

おまえは神の息子。

そして、おまえの使命はHIVEを殺すことだ。」



「使命…?

俺は……俺は化け物を殺すために生まれたってのかよ!!」



「そうだ。

おまえは今まで何体かHIVEを殺したな…

だが、おまえの力はそんなものじゃない。

もっと奴らを殺せ!!

命ある限り殺すのだ!!」



「ふざけるな!!

俺の使命だと?

俺はお前の言う運命など信じない!!

おまえが神で、今まで多くの人間の運命を弄んだだろう。

だが、俺は俺の信じる道を行く。

俺は神に背く男、矢吹光だ!!!」



「私に刃向かうか?

後悔するぞ?」

神は最後の脅しをかける。


「後悔なんてしない。

大切な奴を守る…

それが俺の生きる道だ!!」




!!!


光が叫んだ瞬間、辺りは真っ白に輝き、何も見えなくなった。









「悪いがおまえらもこいつのように死んでもらう。」

ペガサスが慶に銃を向ける。


「くっ…こんな奴に殺されんのかよ!?」

慶は下を向き、里志も動けず、さおりは泣き叫んでいた。


「助けてよぉー光!!」





ドクンッ……

光の中に、アダムの血が流れるのを感じた。



ドクンッ……

俺は父親の言いなりにはならない。

俺は俺を信じる!!




ガバッ!!!


光は起き上がり、慶の前に立つ。



「なっ…!!

矢吹光……死んだはずじゃ!?」ペガサスは驚きひるんだ。


「悪いがな、俺はまだ死ねないらしい。

守るものがある限り、俺は生き続ける。

それがアダムの力なんだろ?」

光はペガサスに向けて笑った。



「まさか…まさかおまえがアダムか!!?」

ペガサスは後ずさりする。





その時だった…




ブー

ブー

ブー




サイレンが鳴り響き、赤いランプがついた。


「なんだ!?」


『緊急事態発生!!

緊急事態発生!!


本館にHIVEが侵入…

A地点突破。

避難してください。

避難してください。』




「なに!?

奴らにここを気付かれた?まずい……」


ペガサスは光たちのことなどお構いなしに外へ逃げ出す。



「A地点って、ここのすぐ近くだよ?」

美月が叫んだ。



「逃げよう!!」


6人は実験室を出る。

左側から銃声が響く。


「まずい…すぐそこにきてるぞ!!」


「エレベーターは…

右だ!!右に走れ!!」


6人は必死に走る。



「ぐあぁああ!!!」

兵士がやられているようだ。


「まずいぞ!!」


6人から100メートルほど離れた位置で防御用の壁が降りて来ていた。



「あと数十秒で壁が完全に降りてきちまう…

みんな急げ!!あれをくぐらないとアウトだ。」

光が走りながら叫ぶ。




ガタッ!!


壁は徐々に降りている。



「はぁ…はぁ…先くぐれ!!」

光がさおりを先に行かせ壁をくぐる。


続いて慶、美月、光とくぐっていく。



「いたっ…!!」

美樹が、5メートル手前で足をくじいた。


「美樹!!

ほら掴まれ!!!」

里志が肩を貸す。



壁はもう閉まりそうだった。



「早くこい!!

もう閉まっちまう…」

光が叫ぶ。


「はぁ…ほら美樹、くぐれ!!」

美樹は床に伏せながら、ギリギリ通れた。



「里志!!

おい里志!!?」



ガシャン!!


壁が完全に降りる。


里志だけ間に合わなかった。



「わりぃ、間に合わなかった。」

壁の向こうから里志の声がした。


「わりぃじゃねぇよ!!

待て、今開けてやる。」


光は力いっぱい壁を持ち上げようとする。


「ダメだ…あがんねぇ。」



「なぁ光…」

里志が呼ぶ。


「何だ里志…」


「美樹のこと、守ってやってくれ……」


里志の涙混じりの声が聞こえた。



「バカヤロー!!

美樹はおまえが守るんだろ!?」

光も涙が止まらない。



「俺には……出来そうにない。頼んだ…。」


「………。」

光は言葉がでなかった。




「美樹?いるか?」

今度は美樹を呼ぶ。


「里志…。

ここにいるよ、里志。」

美樹も大粒の涙を流す。



「美樹との約束守れなくてごめんな…

死なないって約束したのに……。」



「バカ!!

どうしてくれんのよ!!

約束したじゃないの…

生きて、私と付き合うんでしょ!!!」



「わりぃ。

でも俺、美樹のこと大好きだ……」

里志は泣いている。


「私だって大好きだよ…

こんなに好きなんだよ。


死なないでよ里志…」



「わりぃ…

ホントにごめん。

お別れだ…」





「ギィヤァアア!!」

壁の向こうから奴らの声がした。



「みんな、楽しかったよ!!

おまえら死ぬなよ!?」




「里志ーー!!」






「………。」


壁の向こうから音が消えた。




「外に…外に出よう。」

光は涙ながらに言った。



エレベーターで教会に出る。


5人は泣きながら座り込んだ。




「私が転ばなかったら…」

美樹が責任を感じる。



「いや、里志は覚悟の上だった。

命をかけて、美樹を守ったんだ。」

光が慰める。



「でもなんでだよ…

なんで奴らがこの時間にいるんだよ!!」

慶が疑問に思った。



「HIVEにかけられた呪いは地上で動けなくなる呪いだ。

地下なら行動出来るんだ…」




「里志………」



仲間がいなくなったやる瀬ない思いを抱えながら、5人は1度ビルに戻った。






ビルの中で休む5人。

一つだけ空いたままの席がいつもより目立っていた。



「戦おう!!」

光は突然叫んだ。



みんなが光を見る。


「里志がいないのはすごく悲しいよ…

でもあいつは、いつまでも悲しみに浸ってはほしくないって思ってんじゃないかな…」



「いつまでも下を向くな!!

前見て生きなきゃ未来は見えないぞ

なんて……あいつ言いそうだな。」

慶が前を向いて言った。



「戦おう!!

この戦いを終わらせなきゃ、何も変わらないもん。」

美月が立ち上がる。



「美樹…?

里志のためにも生きなきゃ……」

さおりが美樹に手を伸ばす。



美樹は少しためらったが、さおりの手を握る。


「里志にもらったこの命、絶対に無駄にしないよ!!」

美樹は涙を拭く。




5人は里志の死を乗り越え、この戦いを終わらせることを里志に誓うのだった。

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