10:孤独
0時を過ぎてからどれだけの時間がたったのだろう…
俺は今何をしているのだろう。
俺は何を…
何をしたいんだろう……
「キシャアアア!!」
「!?」
回りに醜い化け物。
俺は…
俺は大切なものを守るために戦っているんだ!!!
「はっ!!」
一瞬意識が遠くにいっていたようだ…
死ぬかも知れないってときに。
「ガアァアア!!!」
HIVEが4匹周りを囲む。
手には鉄パイプ。
「さぁ、かかってこいや!!!」
光は叫んだ。
正面の1匹が光に向かって走る。
「ガアァアア!!」
舌を伸ばす。
「うおおおぉお!!」
光は鉄パイプを横から振り上げた。
ゴキッ!!!
鈍い音がする。
どすっ!!
化け物が数メートル飛んで倒れた。
「おまえらなんて怖くねぇ…どこからでも来い。」
鉄パイプを軽々しく扱い、構える光。
何だろう…
いつもより体が軽く感じた。
HIVEは素早く動き、光に襲い掛かろうとする。
シュッ!!
「ガアァアア!!!」
ゴキンッ!!!
鉄パイプがHIVEを捉える。
「うらあぁ!!」
ガツッ!!!
次々とHIVEを倒していった。
「はぁ…はぁ…」
素早い動きにも体がついていく。何でだ…?
この感覚、どこかで…
ふと光はバスケのことを思い出した。
そーか!!
バスケ部で反射神経とか多く使ってたから、奴らの動きも見切れるんだ!!!
「ふっ!!
バスケやっててよかった。」光は笑った。
パチパチパチパチ!!
シュウが拍手している。
「実にすばらしい格闘センスを持ってるな…
俺らのガードマンにでもなる気はないか?」
「人を平気で殺すことが出来るような奴のために、戦う気はない!!
俺は…守るべきもののために戦う。
その邪魔をするなら、容赦しないぞ!?」
光は凄んだ!!
「守るべきものか…
そんなものとっくに失ったさ!!
俺は…生きるために……」
シュウがそう言ったときだった。
ガシャーン!!!
2階の窓からHIVEが侵入した。
「あいつは!!」
そのHIVEは手足が4本ずつある、道路で見た奴と同じタイプのHIVEだった。
「うひゃあああ!!!」
シュウの仲間のザクが逃げる。
「ア゛アァアア!!」
悍ましい叫びを出す新型HIVE。
ブサッ!!!
「がはっ!!!」
化け物の長いニョロッとした手が、まっすぐザクの腹に突き刺さった。
「ザクー!!!」
キュウが叫ぶ。
「ゲホッ!!た、助けて…」
血を吐きながらザクが助けを求める。
ニュルッ!!
別の手がキュウの首に巻き付く。
「があぁああ!!!」
HIVEは次にシュウを見る。
「や、やめろ!!」
尻餅をつきながら後ろに下がるシュウ。
「くるんじゃねぇええ!!!」
「階段を降ろせ、シュウ!俺が助けてやる!!!」
光の声を聞いたシュウが何度も階段のスイッチを押す。
ウィイイーン。
ゆっくりと階段が降りてくる。
「早く助けに来いよー!!!」
シュウが泣き叫んだ。
ウィイイーン……カチッ。
階段が止まった。
急いで階段をあがる光。
「うわ、うわ、うあああああ!!!」
シュウの叫びが聞こえた。
あがり切った光がその方向をみる。
「なっ……」
シュウは化け物の大きな口に喰いちぎられていた。
「遅かった…」
HIVEは光を見る。
「!!!
来るなら来い…
さおり達には触らせねぇ!!」
光が鉄パイプを構える。
「ああ゛ぁああ!!」
HIVEが叫ぶ。
来る!!
そう思った。
しかし化け物はクルッと後ろを向き、窓から出て行った。
「……行った…のか。」
光が肩の力を抜く。
「光!!」
里志が呼ぶ。
「待ってろ、今開けてやる。」
ガチャッ!!
鍵を開けた瞬間、さおりが光に抱き着いた。
「ばかっ!!どれだけ人を泣かせるのよ。」
さおりは大粒の涙を流す。
「わるい…」
「もう…知らないんだから!!」
さおりが笑顔で笑いかける。
「さおり…」
光はぎゅっと強く抱きしめる。
4時05分
「あいつ、俺を襲えたのに襲わなかった…」
光が里志に話す。
「…必要な分をとったら後は帰る。…本当なのかもな。」
「だとしても化け物はあいつだけじゃねぇだろ?」
慶が言った。
「場所を変えるのか?」
「もうしばらく様子を見よう。」
光が言った。
「あのさ…光。」
美月が光に近づく。
「ん?どうした?」
「ありがとね…私をかばってくれて。」
「あぁ、どういたしまして…」
光はニコッと笑った。
「光…私やっぱりあなたが……」
サッと美月の口を塞ぐ光
「俺らは友達だ。美月が辛いときは助けてやる。それだけじゃダメか?」
「光…うん、わかった。」美月は考え込む。
ああいったけど、私はやっぱり光が好きなんだよ。
たとえ今は友達でも、私はあきらめないから。
そのうち辺りは明るくなっていった。
「朝か……」
「油断するな…まだ9時じゃない。」
「でも、今日はひどく長く感じるな…」
「あんなことがあればしかたないさ。」
「ただ、敵は化け物だけじゃない。
時として人間の方が恐ろしいこともあるんだ。」
里志が言った。
「でも、俺は人間を信じる。
みんなただ怯えてるだけなんだ。
シュウも、最後のあの時は敵じゃなかった…
人間は分かり合える…そう信じたいな」
光はどこか悲しげにそういった。
結局その後は何もないまま、9時を迎えた。
ゴゴゴゴゴ!!!
ゴゴゴゴゴ!!
6人は終わりを告げる地震と、静か過ぎる町を眺めていた。
一体今人類はどのくらいいるんだろう。
この町に人はいるのだろうか…
そんな普段ならおかしい疑問ばかりが頭を過ぎっていた。
そして6人は思った。
このまま生き残ったら何になるんだろう。
静か過ぎる町を目の前に、大きな孤独を感じてしまう。
そんな思いも虚しく、今日も生きるために戦うのだった。