1:始まりの震動
神はアダムとイヴの2人の人間を造った。
そして神は言った。
『産めよ。増やせよ。』
その言葉通り2人は子をつくった。
その子らもまた育ち、子をつくった。
こうして人間は神の教えを守り続けた…現在まで。
これは神話の話だが、そこに隠された秘密があったとしたら。
ある信者は言った。
「神の秘密…それこそ最大の罪にして最悪の失敗。いずれその代償を払うときがくる。」と。
その代償とは?
神の秘密とは?
2010年12月1日。
ヴーヴーヴー…
携帯のアラームで目が覚める。
「う〜ん、あと5分。」
ドッドッドッ
誰かが階段を上がってくる。
「光、まだ寝てんの?さっさと起きな!」
そう言って母がカーテンを開ける。
あまりの眩しさに目を隠す。
「わかったよ!今起きるから。」
勢いよく布団から出て、まずは髪をワックスで整える。そしていい感じに決まったら階段を降りて朝飯を食う。
そんな俺の名前は矢吹光
高校に通う18歳。大のバスケ好きで夢は世界一の称号っていうよくわかんない夢を持ってる。
「いただきます。」
マイペースでご飯を食べてると母が呆れたように言った。
「早く食べないとさおりちゃん来ちゃうわよ。」
「残念ながらもう来てます。」
「あら、さおりちゃん!」玄関に立っているショートカットの女の子。
こいつは藍田さおり(アイダサオリ)
俺と同じ18歳で、ご近所ということもあり小さい頃から一緒にいる。
何かとわがままで泣き虫で面倒なやつ。
「わりーわりー!今行くからもうちょい待って。」
「じゃあ先に行ってるよ〜」
「おい!ちょっと待てっつったろ?行ってきます。」
こんな感じにすぐ反抗する。
駆け足でさおりに追い付く。
「お前ちょっとも待てねぇのかよ?」
「あんたがのんびりだからでしょ!たまには私を待ちなさいよね。」
「…努力します。」
「それよりさ、昨日の夜地震あったよね?」
さおりが唐突に言う。
「んあ?知らね、そうなの?」
「結構おっきい地震だったのよ。あんたどんだけ深い眠りについてんの?」
「知らねーんだから仕方ないじゃん。んで、その地震がどーしたの?」
「ニュースで言ってたんだけど、0時00分ジャストに起こったらしいの。それで余震があったりしながら1時ちょうどに止まったらしいの。なんか不思議じゃない?」
「偶然だろ?地震なんてそんなに珍しいもんでもないしな…」
「だって震源地も不明で、全国規模だって話だよ?」
「不明?それはおかしいな?」
「でしょ?」
そんな会話をしているうちに学校に着いた。
ガラッ
教室のドアを開けた。
「おっ今日も夫婦で登校か!!」
ニヤニヤしながら机に座るチャラい感じの男。
こいつは藤沢慶
俺の親友で、大の女好きな問題児。
見た目はチャラいが根はいいやつ。
こいつもガキのころからの付き合いだ。
「どうしてこうもいちゃいちゃできんのかねぇ…」
「うっせーよ、慶!大体なんでこいつといちゃつかねぇといけねぇんだよ!」
「はぁ?それこっちの台詞だから!」
さおりが反抗気味に言い返してきた。
しばらく続く俺らの口げんかに嫌気がさしたように慶が止めに入る。
「もういいから…」
そこにもう2人やってきた。
「なんだ、また喧嘩してんの?仲良いのか悪いのかわかんないね。」
「喧嘩するほどだから仲いいんじゃねぇか?」
2人の名前は佐藤美樹と高橋里志。
美樹はサラサラな長い髪の女の子で見た目はお嬢様を思わせる。
ただ性格は世話焼きではきはきしたお姉様タイプ。
そのギャップがいいと言う男子が多く、学校のアイドルになってるらしい。
里志は剣道部のキャプテンでしっかりしている慶とは真逆の兄さんタイプのやつ。
頼りがいがあるからいつも5人のまとめ役になってる。
とまぁこの5人でいつもつるんでるわけです。
ちなみに席も5人は近く…
「それより昨日の地震すごかったよね!?」
美樹が4人に言う。
「あぁ。たしかにすごかったな。あの地震で地割れが各地で起きて朝は交通が大パニックだったらしいな。」
「ナニ?自慢??」
慶が里志に言った。
「どこも自慢になんねーよ。」
「にゃはは。言ってみたかっただけ…」
「慶は相変わらずおバカだね〜。」
美樹が猫を撫でるように言う。
「まっでも、1番おバカはそんな地震にも気付かず眠ってた光のほうだけどね。」
こっちを見ながらさおりが言う。
「・・・」
「マジ!?」
「嘘でしょ!」
「お前スゲーよ。」
3人が声を揃えて言う。
呆れ気味に…
「うっせーよ!!」
ガラッ
「ほら、全員席つけー」
先生がきた。HRだ。
「さっきニュース見たんだが昨日の地震で若干だが、行方不明者が出てるらしいぞ。ただ不自然な点が多くて地震のせいとは言えないらしい。」
「行方不明かよ!?そうなれば俺も学校サボれるかな。」
慶がいつも通りアホなことを言う。
「お前みたいな問題児がいなくなるなら先生助かるんだが…」
『ハハハ』
そんな感じで今日の学校が終わった。
「じゃ俺バスケ部行くわ。さおり行くぞ。」
「はーい。」
さおりはマネージャーだ。
「じゃ俺は帰るわ。」
部活には入ってない慶はさっさと帰る。
それがあの事件の始まりの日だ。
まだ誰も地球に大きな変化が起きていたとは気付かなかった。