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ショートショート4月~

議事恋愛

作者: たかさば



「本日の議事を始めましょう」


「テーマは、恋愛についてです」


「議長!僕は恋をしたことがありません!」


「最近は人間関係が希薄ということもあり、そういう若者が増えているというが・・・」


「誰かを好きになったことはないのかね」


「自分が一番好きです」


「自分に自信を持っているのだね、すばらしい」


「恋と言うものにあこがれています!」


「では、誰か、恋の話をするように」


「とても仲のいいひとがいました」


「続けて」


「一緒にいると、自分が自分でなくなるような、それでいて自分が認められているような、不思議な感じがしました」


「なるほど、続けて」


「この気持ちが恋なのかもと思い始めた時、別の人にNTRれました」


「なんだそれは。」


「今はやりの寝取られというやつです」


「なんとなく好きだという気持ちを伝えていたので、このままうまくいくと思っていたのです」


「なんとなくで恋を成就させようとしたのか!!」


「恋とはもっとはっきりとした明確な好意が前面に出てくるものだ!」


「議長!!決め付けがひどいと思います!!!」


「揺蕩うような、ぬるい恋心があってもよいのでは?」


「恋心とは、体が震え上がるような熱意がわいて出るものだと私は認識している」


「それはあなたの思い込みだ!!」


「ああ、いいなと思う、ゆるりとした漠然たる安心感こそが恋なのではないのか」


「いや、それは、愛だろう」


「恋とは、相手を思う気持ちが暴走しがちであり、激しく狂おしいものだ」


「独断と偏見が過ぎる!あなたの考えを押し付けるのは止めていただきたい!!!」


「NTRれた時、君は奪い返そうと思わなかったのかね」


「相手に迷惑がかかると思いました」


「それで身を引いたと?はは、君こそ依怙地になっているじゃないか!」


「僕は彼女が幸せであるならと、身を引いたのです」


「気持ちを伝えるでもなく?はは!身勝手なことだ!勝手に思い、勝手にあきらめる!」


「逃げ出したということかね」


「彼女に自分を選んでもらえる自信がなかったのです」


「君は自信が持てない状態で、対等な会話ができていたと認識し、恋い慕ったというのかね」


「彼女はいつも優しい言葉をくれました!」


「それは愛情から来るものだったと言い切れるのか?もしや憐れみだったのではないのかね」


「自信を持たずに発言するような弱気なものに対する、気遣いだったのではないのか」


「NTRれたことに対する、焦燥感の表れではないのか」


「いいえ、あれは確かに、恋でした」


「具体的に説明しなさい」


「話したいと、毎日、話をしたいと願っていました」


「それは、その人でなくてもよかったのではないか」


「いいえ、彼女だけが、僕のほしい言葉をくれていたのです」


「それは、君の望む言葉を選んで話していたからではないのか」


「私の望む言葉をくれたのは彼女だけでした」


「君が彼女以外に話す人がいなかったからじゃないのか」


「ほかにも仲のいい知人はいましたが、みな不快な事をいうので、距離を置いていました」


「自分に心地いい言葉を投げかけてくる、都合のよい人だっただけなのではないのかね」


「そんなことはありません!…ただ、けんかをしたことは、ありませんでした」


「けんかもできないくらい、相手に気を使って話をしていたということにはならないのか」


「仲のいいひとにも気を使うことはあるでしょう!!!」


「自分だけの理解者と思っていたのに、別の人が持っていった、残された自分はなんだったのかと恨めしく思っているだけなんじゃないのかね」


「恨めしい?むしろ彼女には、たくさんの言葉をかけてもらって、感謝している!」


「そもそも、君は天秤にかけられるような存在であったかどうかも不明確だ」


「相手からすれば、ただの弱気な知人だったのではないのか」


「それは、本当に、恋だったといえるのか?」


「好きだという気持ちを伝えることができないくらい、好きだったのです」


「好きだという気持ちを伝えられないくらいの気持ちだったんじゃないのかね」


「その言い方は、あなた個人の意見の押し付けに過ぎない!」


「そこに感情の交流は、本当に存在していたのかね」


「一方的に、話しやすいから、ほしい言葉をくれるからという理由で、その人に固執していただけなのではないか」


「選んでもらえなかったら、とても生きてはいけないと思いました、だから僕は逃げたのです」


「選んでもらえないとわかっていたんじゃないか。」


「自分に対して当たりのいいひとに、依存していたのではないか」


「依存する対象が、別のひとに依存することになり、あわてて恋だと言い訳を始めたのではないか」


「なぜこんなにも僕が攻められなくてはならないのですか!!!」


「ここが君の頭の中の議事会場だからじゃないか」





今日も、僕の脳内会議は、白熱した。


今回で、およそ1862回目の議会は、またもや自分の形勢不利で閉会した。


答えはいまだ、出ない。


あの日僕は恋をしていたのか、依存していたのか。


いつ、僕のなかで納得の行く、議事録が記されるのだろうか。


明日の議会も白熱が予想される。

早めに就寝して、策を練らねば…。



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