実験。第一節。
ここは、この世界一の大国、ザルツガルク帝国。その大国をたった一代で帝国をここまで大きくした皇帝、デルグアス五代皇帝は、その報告により驚きに顔を隠せないでいた。
「それは……本当か?」
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時は数日前に遡る。
この世界で四番目の大国。バルカズ王国ザルドネルド帝国と隣国である国である。そのバルカズ王国の帝国と反対側の国境線は魔獣が蔓延る森、ネルリア森林と繋がっている。そして、その国境線に『奴』が現れたのは突然だった。
「はぁ~あ、俺は嫁んとこに戻りてぇよ。もうちょいで出産予定日だってのにさぁ……」
「まあまあ、そう言うなよ。後数日の辛抱だし、予定日には間に合うだろう?、それに、子育てには金がかかると聞くし、嫁と生まれてくる子供の為にもこうして街の衛兵して、金を稼いどくべきじゃねえか?」
「まぁ、そうなんだけどさぁ……いかんせん、予定通りにはいかねえんじゃねぇかとなぁ……こう、不安何だよ。っと……何か聞こえなかったか?」
「そうか?特に何も聞こえなかったが……」
「なら、別に良いが……」
『ジュュュュゥゥゥ』
「やっぱり、森の方向から何か聞こえないか?それに……何か焦げ臭い匂いも。山火事か、炎系のモンスターによって燃えてるのか?」
「そうかもしれないな……念のため確認を……って、あれ、あそこ。なんか空に赤いの見えないか?」
「本当だ……なんだあれ?って、ヤバい!!何かこっちに迫ってくる!!」
「モンスターか?まあ、良い。撃退するぞ!!街に近寄らせはしない!!」
「「風よ、我らが矢に纏え!《風纏》!」」
二人は弓を構え、風系中級魔法、《風纏》をかなりのスピードで迫ってくる赤い炎に矢を放つ。しかし、纏わりついた風は魔力を打ち消され、ただの矢となってしまい、炎へと飛んで行く。それを見た瞬間、
「なっ!?、魔力妨害だと!?しかもこの出力…ッツ!お前は応援を呼んでこい!!俺は足止めする!こいつは俺らの手にゃあ負えねえ!!!」
「足止めって……お前!それは……」
「こいつを街に近寄らせる訳にはいかねえ!行け!嫁がいるんだろ!子供が生まれてくるんだろうが!」
「っ!?、すまねえ!!必ず助けを呼んでくる!」
「さぁて、悪あがきだ!喰らえよ、足止めだぜ。化け物。全魔力注入!我を礎とし、この魔力、生命力、あらゆる全てを物を犠牲とし放たんとする!!喰らうがいい!《絶風封陣》!!」
そのとある歴然の戦士の全てを放ち撃ちはなった魔力は、矢と同じく、魔力妨害に威力を半減されつつも、その炎に命中しようとする。しかし、その炎は回避しようとする様子も見せずに魔法に突撃し命中した。しかし、その魔法の効果は、見られない。そして、体が消滅しようとしている衛兵は
「は、はは……んな馬鹿な……なんだこりゃ……はは、後は、よろしく頼ん」
そうして言い切る前に、突然してきた赤い炎に触れて、その魔法により消滅する前に消滅した。そうしてその炎は急激に上昇していき、空へと上がった所で、形を変え始める。
………………そうして、二十秒ほどたっただろうか、それは炎であり、炎ではない……それは、赤く、紅く、紅い。炎で出来た深紅の竜。
「Gurarrrrrrrr!!!!!」
その竜は、その場で高く、高らかに咆哮を叫びながら、自らも蒼の身に変えながら極大な《蒼い》炎を広げる。それは、その街の上空を覆い尽くす大きさで、
「Gaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!」
その絶望の咆哮で蒼い炎は急激に落下する。そして、蒼い炎は街と接触し、街は、
『消失した。』溶けたのではない。文字通りまるで元からなかったかのように消失したのだ。しかし、蒼い炎の中、人や猫、ネズミや犬などだけは残っていた。勿論、人は服や武具は消失している。裸一つで、まるで、生物だけを残したかのように、街は消え失せた。
「Gaaaaaaaaaarrrrrrr!!!!!!!!!」
咆哮の後、また急激にその身にも紅く変えながら蒼い炎が紅い炎へと変化していく。その変化した紅い炎に触れた瞬間、今度は生物を消失させた。そして、紅き竜は興味を失ったかのように、来た方向である森とは反対の方向へと、人の領域へと進んで行く。
「Gurururururu……」
その竜が通った街は、『何も無かった』。人も、城壁も、建物も、生物すらなく、草一つたりとも存在はしていない。ただ、何もかもを消失させ、大地だけが残った。