10話 カンペさんの協力者
「異常なんです。そもそもレベル1である渡り人が適正レベル10以上の森で狩りができるのが。まあ、あなたは冒険者ではないので狩りができた秘密を無理には聞き出せないのですが」
『そうなんですか。ところで、買取はまだですか?』
「ああ、すみません。全て合わせて5200Gです。内訳は、フォレストウルフの皮が12個で1680G、フォレストウルフの牙が12個で1800G、フォレストスパイダーの糸が7個で910G、フォレストスパイダーの外骨格が7個で1120G、フォレストスネークの毒牙が4個で880G、フォレストスネークの皮が4個で840Gです。どうぞ」
差し出されたのは、袋に詰められたお金。手に取ると消えてストレージに入って行きました。これで一文無しではなくなりました。
出て行こうと振り返ると、そこには一人の男がいました。
「ねえちょっと、いいかな?」
よくないのでそのまま知らんぷりをして通り抜けます。
「ねえちょっと待ってよ!」
何故か腕を掴まれ、男の方を向けさせられました。
『なんですか?それと時間がないので手を離してください。あなたに構ってる時間はないので』
男は整った顔を持っていました。そして金髪碧眼で整った顔も合わせると王子様のような方でした。そして今は、綺麗な低音の声を響かせながら、甘い笑顔をしています。
その笑顔を見て私はときめいてしまうーーーわけでもなく、気持ちが悪くなり吐きそうになりました。
「なっ?!なっなあちょっとだけでいいからさ頼むよ」
よほど自分の顔に自信があるのでしょうか?またまた甘い笑顔を見せてきます。
正直もう顔も見たくありません。
「ちょっとあなた!セージュが話しかけてやってるんだから「はい」って言いなさいよ!」
いつの間にかきたのか、セージュというこのキモイ男の取り巻きらしき女の人がいました。
『はぁ、本当に時間ないので。通らせていただきますね』
そう答えた私は、私を遮るように立っている男の横を一気に走り抜けました。いつもより早いので【スキル:ダッシュ】と【スキル:逃走】が発動しているみたいですね。何か後ろで騒いでるような感じがしましたが気にしなくてもいいでしょう。
そのまま冒険者ギルドを出たら露店が多く出ているところに行きました。その途中で混んでくるので走るのをやめます。
ピロン ん?ああちょうど二つのスキルのレベルが上がりましたね。思わぬ収穫でした。ちなみに何でレベルが上がっているかと言いますと、街に帰ってくるときにレベルが上がってスキル枠が3増えてたのに気付きまして。その空いた枠に【スキル:ダッシュ】、【スキル:逃走】、【スキル:暗殺術】を入れたというわけです。
そうしてるうちに、露店が多くある場所に着きました。左右に所狭しと並ぶ露店を冷やかしながら何かいいものはないか探します。
いろんな露店を見ていくうちに1つの露店に興味を持ちました。店主はプレイヤーのようですね。プレイヤーかNPCかを見破るにはその人をじっと見るとその人の頭の上に緑色の逆さ三角錐が見えたらプレイヤー、青色の逆さ三角錐が見えたらNPC、赤色の逆さ三角錐が見えたら犯罪を起こしたプレイヤーです。NPCは犯罪を起こしても逆さ三角錐が赤色になることはありません。羨ましいですね、NPCが。
私が何に興味を持ったかと言いますと、防具の機能です。
レベルが低いせいでうまくはできていませんが例えば、蹴ったら剣が飛び出るやつや、殴ったら毒針が刺さるようなものがあり、ぜひこっち側(悪役側)に招きたいと思いました。
幸い、その露店でアイテムを物色してる人はいないので話し掛けに行きます。
『すみません。少しこの防具について話したいのですが、お時間よろしいですか?』
音が出ないので気付いてくれないようです。
仕方がないので肩をたたくと、
「ん?ああ、どうされました?」
よかった。気付いてくれました。
『少しこれらの防具について話したいのですが、お時間よろしいですか?』
「?!仮面に文字が・・・いいえ今話すことではありませんね。時間ですか・・・幸い今は誰もいないのでいいですよ」
キョロキョロと周りを見た後笑顔で応じてくれます。あっちなみに18歳くらいの男のアバターの人です。結構美青年です。白髪に赤目があっていていいですね。
「どこに行きますか?」
ん~人目につかないところといえばこの仮面を買ったあの店ですが、ひとまずは悪役について、PKについてどう思うか聞いてからにしましょう。前に仮面に細工されたやつが転移する時に相手に触れていれば一緒に転移されるらしいので。
『付いてきてください』
「わかりました」
そう言った瞬間露店が消えます。便利ですね。
そのまま路地裏に向かい周囲に誰もいないことを確認しついに話し始めました。
『あなたは悪役、PKについてどう思いますか?』
「あ、悪役、PKですか?ーーーかっこいいと思います。ロマンがあって」
お?これは嬉しいですね。このまま防具を作ってくれないかと依頼してみましょう。
『では、私にロマンと効率の良い悪役が着るような防具を作ってくれませんか?出来が良ければ専属にもなって欲しいのですが』
「その前に、あなたがなぜそのような防具を求めるかか聞いても?」
ふむ、まあいいでしょう。これくらいは許容範囲内です。
『私は、準備が整ったらPKや悪役ロールプレイをしたいからです。そしてそのためにはあなたの防具が必要なだけです』
「本当ですか?!実は自分、悪役の装備を作る人になりたいと思ってたんですよ!もちろん作らせていただきます!それで、どんな感じの防具にしますか?」
よし!これであの防具が手にはいります!あの防具には一目惚れでしたからね!
『その前に場所を移動します。ここでは誰に聞かれるかわからないので』
そのまま彼の服の裾をつかみます。そしてーーー
『転移!』
キーワードを話す?と視界が歪みました。
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筆者 「お〜い!そこの青年!PKっていいよな!ロマンがあって!」
そこの青年 「はい!いいですよね!特にいきなり暗器が出てきたり、毒とか使って卑怯でも勝負に勝とうとするのがすごい好きなんですよ!筆者さんは、どう思いますか?」
カナリ『あのー。少しいいですか?』
筆者 「うんうん、わかるよ!あのどうやって勝つのかわからないハラハラ感がいいんだよね!後さーーーー」
しばらく話続けてしまい気づいてもらえないカナリ。