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嫁が最強スペックすぎて戸惑うんだが。  作者: tetoc
■ 嫁暗躍 編 ■
7/25

【05】俺と嫁と亀裂。前編

 

 俺は深くため息をついた。ついでに、気持ちも重い。

 理由は簡単。城に帰って来ているからだ。


 俺が任せられている軍部で、俺の証印がどうしても必要になった。どの場合でもそうなんだが、正式な書類に対しての証印は、俺のサインと判が必要でな。

 俺の判は、城の俺の部屋の金庫にある。当然だ、あの日は飛び出すように城を出て来たんだから。


 結婚して1ヶ月と少し。

 送られてきた手紙もフル無視。帰りづらいのもあるが、嫁に会うのが何より億劫だった。少しばかり背徳感とか罪悪感とかはあるんだよ。流石に。

 だから、幼馴染のアルに持って来てもらおうとしたんだけど、逆に「帰って来ないと陛下に進言して軍隊送るぞ。色ボケクソ王子。」と暴言をはかれながら脅されたわけだ。


 ………。俺が王になったら大臣から引きずり下ろしてやろうかな。


 そんなわけで、城に帰って来ている。



「…何だよ?」

「なんでもねぇ。」



 ついでに自分の執務室で、城を空けてる間に送られてきている手紙に目を通したり、その返事を書いたりしている。

 俺がいる執務机の向こう側にあるソファーには、オフクロに命じられ、俺の見張り役をしているアル。

 大臣としての仕事をしているアルを、恨めしく眺めてたらバレた。



「俺を見てないで手を動かして下さい。グレイズ殿下。」

「もう何通書いてると思ってるんだ。手休めだ、手休め。」

「まだもう三山あるでしょ、お手紙。」



 10枚が一山として置かれていて、残りあと30枚。

 今朝方、城に帰ってきた直後から真面目にずーーっと休憩なく返事書いてただろ、休ませろっての!


 今は昼食時。別邸に帰ってから朝食をとるつもりだったが、この執務のせいで朝飯抜き。空腹も手伝って、流石に集中力が途絶え始めた。


 アルは深いため息をつきながら、自分の書類の束を紐できちんとまとめながら口を開く。



「あのね、この1ヶ月ちょい何してたの。」

「なんでもいいだろ?支障を出さないように執務はしてただろ。」

「そう言う問題じゃないでしょうが。」

「じゃあ、どう言う問題だっつーんだ。」

「レイリア妃殿下。初夜をすっぽかしたお前をとても心配していらっしゃったぞ。」



 なんだかんだ手紙を書きながらアルとやり取りしていたが、レイリアの名前があがって、ふと手が止まる。

 俯いたままアルの方を見ると、こちらをじろりと睨む姿が。



「胸が痛まないのかい?グレイズ。」



 当初は、見た目がどうのとか生理的に受け付けないと思っていたが、最近は違う。

 あの娘が俺に媚び、王位を継いだ時に何らかのアクションをおこすと、考えが及んでしまってから警戒すべき対象となってしまった。

 生理的に受け付けない部分に、それが作用して拍車をかけている。


 己の命を狙っているかも知れない相手と馴れ合うバカがどこにいよう?嫁に対しての罪悪感や背徳感は少なからずあるが、俺はあの娘を愛してなどいない。



「あの娘は好かん。」

「自分のお嫁さんでしょ?」

「公的にはな、だが俺自身は認めていない。と言うかお前、どうしてあの娘のことを黙ってた?」

「俺が何か言って、2人の仲を悪くさせたくないって言ったでしょ。」

「だとしてもだ。もう一度言っておく、俺はあの娘は好かん。」

「よく知りもしないで決めつけちゃダメだって。」

「は?ならお前はあの娘のことを知ってんのか?」

「俺はお前の話をしてんの、グレイズ。」

「正論で攻めても無理だぞ。何度も言う、俺はあの娘は好かん。」



 軽い口論をした後、俺は何も言いたくないとばかりにまたペンを走らせ始める。その様子を見て、アルは何か言葉を飲んだようだった。


 しばらく互いに黙って、各々の執務をこなしていた。

 丁度その時、執務室の扉がノックされ、俺もアルも手を止めて扉の方へ視線を向けた。



「入れ。」



 俺の言葉で扉が静かに開かれ、ボーイが部屋に入って来てお決まりのお辞儀をする。



「失礼致します。」

「何用だ?」

「グレイズ殿下。ゼアル陛下がお呼びでございます。獅子王の間にお越し下さりますようお願い致します。」

「父上が?分かった、すぐ行こう。」



 ペン立てにペンを置き、立ち上がる。

 親父がなんの用なんだろうか。まあ、大体察しはつくがな。



 ────────

 ──────

 ────



 ボーイに導かれ、獅子王の間に入るやいなや、俺は誰にもバレないようにため息をついた。

 昼食を食べるみたいだな。席には親父、オフクロ、そして…ため息の原因、レイリア。



「どうした?早く座らぬか。」

「…はい、父上。」



 扉の前で固まっている俺に痺れを切らして、かかる声。親父に言われたのなら仕方がない。


 すぐに歩きだす。椅子と椅子の間には、人が2人ほど入れるような、十分なスペースが空けられているが、俺が座る席の隣には、レイリアが座っている。

 俺はそちらに見向くことをせず、自分の席に座った。


 親父が、全てを創った祖龍への祈りと感謝の言葉を述べ、食事が開始される。もちろん、無言の。

 レイリアの方からちょいちょい視線を感じる、何か俺に言いたそうだが、これも気付かないように見せかけて無視を決め込む。

 周りに控えているメイドやボーイが気まずそうだ。申し訳ないな。



「そう言えば1ヶ月と少しぶりだな、グレイズ。」



 静かな食事を破ったのは親父だった。

 自然と親父を見るが、こちらを見ずに食事を進めている。



「そうですね、父上。軍部の執務など重なってしまい、長い間城を空けてしまって申し訳ありません。」

「そうか。元気そうで何よりだ。」

「ありがとうございます。」

「だが、グレイズ。そなたは新婚であろう、妃をあまり1人にしていてはいけないぞ。」

「分かっております。が、何分忙しく。」

「顔くらい見せに来い。よいな?」

「…はい、父上。出来る限りそう致します。」



 次期国王という肩書きを得る前と比べては、そんなに忙しくはないんだがな。

 微妙な攻防を繰り広げつつ、いつもより食事を早く進める。空腹だったのもあるが、何より早くここから離れたくて仕方がなかったからだ。



「"出来る限り"では困りますよ。変な噂がたっているのは貴方も知っているでしょう。」



 オフクロが出て来た。クソ、オフクロに口で勝てたことなんて1度たりともないのに。



「なんのことでしょう?」

「知らないふりですか、グレイズ。…まあ、いいでしょう。貴方とレイリア妃の不仲や、それぞれについての悪い噂です。」

「人の噂などすぐに消えてしまいますよ、母上。好きに言わせておけば、いずれ消えるでしょう。」

「噂を立てぬことが肝心なのです。王族をはじめ、貴族や華族は、愛すべき民より国を預けられし者、民なくば成り立ちません。民に悪い噂がまわり、王族に対して不安を抱かせる行為は慎みなさい。」



 一度ナイフとフォークを置き、ナプキンで口元を拭ってからオフクロは俺を真っ直ぐ見つめてきた。



「なのでグレイズ、しばらく貴方とレイリアはルーリス殿で共に生活をするのです。」



 はあ!?

 ルーリス殿!?この大城の中に存在する殿の中で1番小さい所じゃねえか!



「母上、私には軍の総司令と言う重要な執事が…。」

「グレイズ。余と王妃が決めたことぞ、反する事は許さぬ。しばらく軍のことは、弟のレイノルに任せる故、そなたは大人しくルーリス殿で住まうのだ。」



 クソ、強引すぎる!

 ここまで強引に来るってことは、もうルーリス殿で住む準備万端ってことだ。このまま俺はレイリアと一緒にルーリスに閉じ込められんのかよ!



「よいな?グレイズ。」



 親父から、かつてないほどの圧を感じる。

 これ以上食い下がれば、色々不味いことになるかもしれない。最悪、次期国王を剥奪されちまう。…ちくしょう。



「…っ。はい、父上。」




 ────────

 ──────

 ────



 早々に食事を終えた俺は、獅子王の間から出た。

 どうしても両親に対して、苛立ちが抑えられない上に、それをぶつける場所もない。飯も食った気にならんし、もう壁でもぶん殴って穴でも開けてやりたい気分だ。


 廊下を歩く。イライラしながら。

 すれ違ったメイド達が、俺の様子を見て縮こまってしまっているが、今の俺にはそれが気にならなかった。



「グレイズ様…っ!グレイズ殿下!!」



 後ろから名前を呼ばれて、立ち止まり振り返る。

 呼び止めたのはレイリアだ。ドレスを持ち上げ、小走りに追いかけて来た様子。2人の侍女がその後ろを走ってついて来ている。


 空気が読めないのか、コイツ(レイリア)は。



「…何か用か。」



 数歩手前で立ち止まり、瓶底メガネのせいで分からんが、不安げに見上げてくるレイリアにそう言い放つ。自分自身でも驚くほどトーンが低い。

 そんな俺の様子に、不安の色を濃くしながらレイリアが口を開いた。



「あ…あ、あの…わ、私…。」

「用があるのか、ないのかどちらなんだ。」

「その…私、殿下に何かしてしまった…のでしょうか…?」

「は?」



 レイリアの言葉に更に苛立ちを覚える。



「その、あの…。殿下に、避けられて…いるようで…何かしてしまったのでしたら謝罪をと…。」



 抑えろ、抑えるんだ。俺が怒っているのは親父とオフクロの強引さ、今この女は関係ない。落ち着け。



「あの、殿下…その、ええと…私…。」

「……そなたは何もしておらぬ。以上だ。」



 はっきりとしない様子にまた苛立つ。

 抑えが効かなくなる前に立ち去るべく、向かっていた方を向き、歩きだそうとした時だ。



「あっ、お待ちを!」



 左の腕を軽く掴まれた感覚。

 レイリアが咄嗟に俺の腕を掴んだのだろう。


 その一瞬で色んなことが頭をよぎった。

 元から受け付けなかった女、そしてその女に命を狙われているかもしれないということ。

 心底触れて欲しくなかったのにも関わらず、この苛立っている状況で触れられた。



「俺にっ、気安く触るな!」



 プツンと何かが切れた。

 振り払った自覚はあった。あったが、自覚しているよりも強すぎたのか、レイリアが弾かれたように廊下に倒れた。



「…っ!!」

「妃殿下!!」



 その光景に、控えていた侍女2人が悲鳴にも似たような声をあげながら、倒れたレイリアに駆け寄った。



 ……ああ、クソ。やっちまった。





【05】俺と嫁と亀裂。前編 END.

■フローティナ大城

とても広大な敷地を有していて、世界でも美しいと有名なお城です。

敷地内には、1つの宮殿。6つの殿が存在していて、それぞれ違った用途や目的で使われています。

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