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嫁が最強スペックすぎて戸惑うんだが。  作者: tetoc
■ 嫁暗躍 編 ■
13/25

【11】嫁と恋話とときめく心。

 


「何度も言わせるな。お前を妻とは認めない。」

「申し訳…ございません…。」



 目の前にいるレイリアは暗い顔をして俯いている。

 今し方、廊下で鉢合わせ、久しぶりに話しかけられた。そう、よりによって結婚式の話題をふってきたんだ。



「いい加減、俺に媚を売らないでくれるか?」

「こっ、媚、など売っていません!」

「口答えをするのか。」

「あ…でも、あの…私…。」

「お前と話しているとイライラする。はっきり物を言ったらどうだ?」

「申し訳ございません…。」

「つまらん女だ。」



 毎度毎度はっきりしない様子にイライラする。

 言葉を一々区切らないと話せないのか、そもそもあれも媚びる手の内ならと考えると、より一層腹立たしい。


 それに、この娘は油断ならないとファーダゲームの件で知ることが出来た。あの短時間で、とんでもない、逆転劇を生み出したんだからな。



「もう気安く話しかけるでないぞ。」



 いよいよ顔色も悪くなってきたレイリアに溜息をついて、吐き捨てるようにそう言ってその場を離れた。



 ────────

 ──────

 ────



 自分の部屋に入った途端、後ろに控えていたエリーが走って行った。途中でソファーに置いてあるクッションを手に取り、すごい勢いで壁に投げつける。



「あんの!クソ王子ぃぃいい!!!!」



 分かっていたから、エリーがクッションを持った瞬間に、この部屋全体に防音性のある魔法を使った。

 さっきのことが相当頭に来ているらしいエリー…クッションを拾い上げて、とんでもないスピードでクッションを殴りつけた。


 クッションが空中にとどまっています。…こんな侍女さんがいたら怖いかも…。



「ま、まあまあ。落ち着いて下さい。」

「これが!おち!ついて!られますか!!!」



 言葉を力強く切るのと同時にクッションを殴っています…クッションが可哀想でなりません…。



「大丈夫ですから、ね?!ほら、私がいれるのでお茶でも飲みましょう!」



 この言葉でようやく落ち着いたのか、エリーはブツブツと文句を言いながらソファーに座る。良かった…何とかクッションは助けられました。

 実を言うとあのクッションが逝ってしまったら、エリーの犠牲となったクッションが4つになるんですよねえ…それは流石に防がないと。


 お茶をいれ、エリーの元に向かい、すぐ前のテーブルにお茶を置いてから私も1人掛けのソファーに座る。

 すると、お茶を飲んで胸の内の嫌なものを吐き出すように、エリーは長く深い息をはいた。



「落ち着きましたか?」

「はい…。すみません、お頭。」

「構いませんよー。私の代わりに怒ってくれたんでしょう?」

「……だって…お頭は任務のせいであの人(グレイズ殿下)に何も言えないでしょう…。」

「ふふっ、ありがとうございます。」



 エリーは私のことを相当気にしてくれているみたいです。本当に優しい人ですよね。



「私は慣れっ子ですから大丈夫なのですよ。これくらいではへこたれません!」

「どうしてなんです?」

「何がですか?」

「お頭は私より2つ年下です。16歳なんて子供で…その…。なんでそんなに、ダン副長より落ち着いてるんですか!?」

「エリー…。」



 真剣な雰囲気なのは分かります。分かりますよ、けれどね?



「その言い方では、ダンが落ち着いていないように聞こえちゃいますよ?」

「へ?あ、いや!そんなんじゃないです、ダン副長も落ち着いてます!すごく!」

「ふふふっ。」



 さて、少しは空気が和らいだみたいですね。



「私は落ち着いてなんかいないですよ。」

「でも、私なんかより冷静だし、判断とかも正確で。大人の隊員もそうだし、ダン副長やレナート副長が認めるくらい凄いじゃないですか、お頭。」

「そんなことないです。」



 紅茶を一口飲んでから目の前のテーブルに置いて、改めてエリーを見る。とても不安そうなエリー。



「私は天涯孤独の身だと言うことは知っていますね?」

「はい…。」

「ダンの一族でお世話になっていて、皆さんとても良くしてくれました。でもね、中身は空っぽだったんです。それですごーーく荒みました。」

「お頭が荒んだ!?」

「ええ、何度ダンやダンのお父さんに叱られたことか。」

「お頭が叱られた…!?」



 懐かしい…。まあ、ほんの数年前の話なんですがね。とても懐かしいんです。



「自分の生まれを嘆きもしました。何故私が"祖龍の愛姫"なのか、何故望んでもいないのに全てを背負わされるのか。中身は空っぽなのにそれあまりに大きくて、重くて、辛くて、でも逃げられなくて…それで、もがいてもがいて…でも、悲しいことに現実は変わりませんでした。」

「お頭…。」

「それでもそばにいてくれたのは、ダンやダンの一族…今はレナート、リリーやルディー…それにエリーやDのみんな。みんなの為に頑張ろうって思ったんですよ、このままじゃダメだって。」



 確かに、今も背負わされたモノの大きさに嫌気がさす時があります。でも、それは変えられないものだと、幼いながら私自身が気付いていた。ずっと前から、本能のように。

 だから、私は私を支えてくれた人達の為に生きて行くんです。



「私を強くしているのは、私の大切な人達なんですよ。大切な人達がいてくれるから、私は強く立っていられるんです。大怪我をしても、罵られても、平気でいられるんです。」



 本当にそう思う。彼らと一緒にいられるなら、なんだってする。

 生意気だとか大人ぶっていると言われることも多々あります。その言葉に傷付く時もあります。そう、私は決して強くない。けれど、平気でいられるのは、私を支えてくれる人達のお陰。


 強くいれるのは、そんな人達のお陰なんです。だから私は彼らの為に、背負いたくないモノを喜んで背負うことが出来るんです。



「だから、グレイズ殿下に冷たい態度をとられても…例え殴られたとしても平気なんです。と言うか、逆にエリーに冷たい態度をとられる方が、ショックで寝込んじゃうかも…?!」

「えっ、寝込んじゃうんですか?」

「ええ、任務がたまっちゃって大変になってしまいますねえ。うーん…困りました。」

「あははっ、じゃあ冷たい態度はとらないようにします!任せてください!」



 冗談めかしくそう言うと、エリーの雰囲気が一気に和らいだ。良かった、怒りを忘れてくれたみたいですね。


 ねえ、ダン。貴方があの時教えてくれたよね、怒ると幸せの妖精が離れて行ってしまう、逆に笑っていると幸せの妖精が寄ってくるって。これで、エリーに幸せの妖精が寄ってきてくれますよね?



「そう言えば、前からお頭に聞きたいなって思ってることがあったんですよね。」

「?なんですか?」



 一段落してテーブルに置いたティーカップを手に取り、紅茶を飲みながらエリーの言葉を待つことにします。本当に王室御用達の紅茶は美味しいのです。



「お頭ってダン副長のことが好きなんですか?」

「っ、げほっげほ!!」

「お頭!?」

「だ、大丈夫、けほっ…です!」



 むせてしまった…。どんなタイミング…!



「その反応…やっぱり、お頭はダン副長を…。」

「や、いや!昔っ、昔の話ですよ!?」



 あ…しまった、つい口が滑った!

 時すでに遅し、エリーは目をキラキラとしていて、漂う雰囲気は嬉々としています。



「今は?お頭、今はどうなんです!?」

「い、今はダンは結婚していますし。アヴィくんやラヴィちゃんもいるじゃないですか!なんとも思っていませんよ…!」

「焦ってるところが怪しいですよ?年上でちょっといかついけど、兄貴肌で頼りがいがあって…ダン副長素敵ですものね!」

「だから!昔の話なんですってば…!」

「うふふー!お頭ってば可愛いです!」



 聞く耳を持って下さい…!

 ああ、どうしよう…。久しぶりに顔が熱い…。




 ────────

 ──────

 ────



 緋褪(ひさめ)の森。

 乱れた心を戻す為に、みんなが寝静まった頃にやって来た。ダメですね、不意をうたれると。

 でもいいんです。緋褪の森は私にとって癒しの空間なので、ここでリラックス&リフレッシュです!



「おー?頭じゃねえか!」

「うわ…。」



 前言撤回、ここはダメ。今から王都まで帰ります。



「あん?どうし…。っておいおいおい!どこ行くんだ?!」



 よりによって先客がダンとか。どこの誰のイタズラなんですか。これ。ありったけの力でぶん殴るので出てきて下さい。

 即行で帰ろうとすると、ダンは慌てた様子で走って来て、私の腕を掴んだ。



「や、ちょっと所用を思い出して。」

「俺を見て、うわって言ったよな?」

「気のせいです。」

「大きな声で言ってたぞ。」

「幻聴じゃないんですか?」

「残念だな、健康だ。」

「……あれです。ダンに会えたのが嬉しくて。」

「嬉しそうな声じゃなかったぞ。それに俺の方をちっとも見ねえじゃないか。」

「分かりました。降参します。」



 背を向けたままでいたけれど、両手を挙げて降参のポーズをしたまま振り返る。

 大丈夫、あれから随分落ち着いたら大丈夫。手を下ろし、ダンを見ると早く訳を話せと言わんばかりです。



「ダンがいるとは思わなかったんです。それに、本日ちょっとありまして。こんな日に貴方に会いたくないなーと思っていたので、心のままの声が出ました。」

「なんだそりゃあ?」

「本当なんなんでしょうね、このタイミング。仕組まれていたとしたら、仕組んだ者を全力をもって殺したい気分です。」

「そうか、そこまでの何かがあるんなら、理由は聞かんが、とりあえずここに癒されに来たんだろう?」

「ええ、まあ…。」



 来るんじゃなかった…。


 それから渋々、ダンに促されるまま彼の隣に座り、世間話をして時間を潰します。



「リザの肝っ玉には本当に恐れ入るぜ。」

「ふふっ、リザさんは相変わらずですね。」



 リザさんと言うのは、ダンの奥さんの名前なんです。ここのご夫婦は仲良しなんですよね。聞いていて微笑ましいくらい。



「そう言えば、リザさんの腰痛は大丈夫なんですか?」

「ん?おう、頭が自分の力を練り合わせたりして作ってくれた塗り薬あるだろ?あれが本当によく効くみたいでよ。腰が痛い時はよく使ってる。」

「良かった!あ、でもそろそろ薬が無くなるんじゃないんですか?また作ってリザさんに送りますね。」

「助かる。あの薬俺もたまに使ってるんだよ。」

「……リザさんの為に作ったんですけど。」

「固いこと言うなって。」



 全く…この人は…。

 私は自分のウエストポーチから小さな容器出して、ダンに差し出した。すると、彼はすぐに受け取り、不思議そうにそれを眺める。



「これは?」

「例の塗り薬です。それダンにあげるので、リザさんのは使っちゃダメですよ。成分が違うんですから。」

「おおー!こいつは有り難い!よく効くんだよなー。」



 ダンとリザさんの役に立てたなら良かったかな。そう、のんびり思っていると頭にふと何か乗った感覚が。


 この、久しぶりなこの感覚…。咄嗟にダンの方を見ると、彼の嬉しそうに笑う顔が目の前にあった。



「ありがとな、レイリア!」



 な、まえ…!しかも、頭撫で…!!爆発する!!



 もう初恋は終わったんです。本当に、綺麗に。

 けれど、この日はエリーにしてやられてしまったせいで、あの時の感覚が…。


 久々に高鳴った胸。……明日からまた頑張ろう。





【11】嫁と恋話とときめく心。END.

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