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嫁が最強スペックすぎて戸惑うんだが。  作者: tetoc
■ 嫁暗躍 編 ■
12/25

【10】ゲームと結婚式と弟。

 

 レイリアと一緒に生活すること13日。

 嫁との仲を改善させるのに集中させる為、俺は執務をすることは良しとされず、久々に時間に追われない時を過ごしていた。


 あれからレイリアは何度か俺に接触して来たが、俺は冷たく拒否をしている。その為、ここ最近話しかけられることが減ったので気が休まっている。



ファーダ(王手)。」

「あっ!!また…!」



 今何をしているかだって?

 訪問して来た弟のレイノルと、ファーダゲームと言う陣取りゲームをしているんだ。


 その内容は簡単で、最初に時間帯、地形、天候、切り札などを決める魔法の12目のサイコロを振り、魔法でそれにそった盤面が生成される。

 例えば、夜・森・雨・5のそれぞれの目が出れば、雨が降る夜の森の盤面…それに加え、様々な効果を持つ切り札が5枚配られるわけだ。


 プレイヤーは赤、黒に別れ、それに見合った色の駒を使い、生成された盤面で戦い、総大将となる駒を倒せば勝利となるの。だが、切り札を使えば一発逆転のチャンスも作り出せるわけだ。


 フローリアではポピュラーなゲームで、生成された盤面は、同じ目が出たとしてもランダム生成だし、特性も理解しなければならない。

 切り札をどう使うかや、使うタイミングを考えなければならない。これがなかなか楽しい。



 因みに、総大将を次のターンで討ち取ることが可能なら"ファーダ"と言わなければならなくてな、俺がたった今レイノルを追い詰めた所だ。



「…っ…。」

「…兄上?どうなさいました?」

「頭痛がな…。」

「大変だ!医者を…!」

「いや、大丈夫だ。きっと片頭痛のようなものだろう、もうおさまった。」



 でもここ一週間、毎日頭痛に襲われているような…。まあ、肩こりか片頭痛か…一瞬ズキンと強く痛み、数秒から数分ほどで止むから気にすることもないか。もしかしたら、…アイツ(レイリア)といるストレスかもな。



「しかし、レイノル。」



 盤面や自分の切り札を必死に確認するレイノルに話しかける。



「んー…!ん?なんでしょう、兄上。」

「軍のことで分からないことはないか?」

「大丈夫ですよ。兄上が直前まで片付けて下さっていたので。」

「そうか。…すまない、苦労をかけるな。」



 レイノルは、俺が指揮する国軍の執務を代理でやってくれている。コイツも王太子…忙しい身であるにも関わらず、兄である俺の穴埋めをしてくれているわけだ。本当に、申し訳ない。



「構いませんよー。兄弟は助け合わなければ!」



 ドヤ顔で切り札から何か出した。


 ふむ、"影武者"か。

 なるほど、影武者のカードの特効果は、1ゲーム内で1度だけ使用でき、総大将や将軍など軍を指揮する立場の者が倒される時に発動が可能で、その後サイコロを振り、討ち取られるはずだった者が自分の陣地内でどこにいるかを決める。

 まぁ、メリットは大きいが、デメリットもあるな。


 レイノルは、サイコロを振り、出た目に合わせて総大将の駒が移動し、俺の軍の前に影武者の軍が現れた。



「今は戦ってるがな。」



 とりあえず、目の前の影武者を討ち取り、総大将の位置を確認する。

 あの周辺には、影武者や災害系の切り札が出た時用にほぼ無傷の軍を配置している。それも2軍。


 まあ、どうにでもなる。レイノルの切り札は0枚、対する俺の切り札は3枚。俺は1枚のカードを伏せておき、自分のターンを終了した。次の俺のターンで戦いは決するだろう。



「これはゲームだからいいんですよ。あ…ヤバイ。」



 見てなかったのか、お前。おい待て、そこはすぐに俺に討ち取られる場所だぞ。と言うか、俺が伏せたカードを勘繰らなくていいのか?


 レイノルは配置されている俺の2つの軍と、自分の総大将の軍が三角形になるような位置に駒を動かした。



「……お前、ちゃんと考えているのか?」

「はい!ここに配置したら前方が深い谷になっているので、兄上の軍が攻めて来たとしても対処出来るかと。」

「………。」



 やはり考えてないな、コイツ。

 今の盤面は、昼・山・晴天だ。盤面に表示されている情報を見ると、風速は4~5m、西から東に向かっての風。和風か、なるほど。

 俺はさっき伏せたカードをひっくり返した。レイノルの考えを聞いたなら誰もがこうするだろう。…無中生有をしているならば別だが、この場合やる意味はないし、レイノルはそんなこと考えてもいないだろう。



「あ!"火計"!?」

「どうするんだ?風もあるし、燃えてしまうぞ。」



 自分の駒を南に3マス移動させ、ターンを終了させると山に火の手があがった。俺の軍は西、レイノルの軍は南南東。ギリ入ってるぞ、そこ。


 悩むレイノル。だよな、唯一の逃げ道である南は俺が塞いだからな。


 火計は1ターンにつき、風の強さと比例してマスを焼いていく。今は和風だから1ターンにつき2マスだな。

 そこから逃げなければ4ターン後には、レイノルの負けだ。

 南は塞がっているし、もう1つの逃げ道は俺の軍が元からそこにいる。切り札もない。そう、ほぼ詰みの状態だ。



「んんん…ま、参りました…。」

「はははっ、俺の勝ちだな。」



 流石に詰んだと感じたらしく、レイノルは肩を落としながらそう言った。

 その様子と言えば主人にイタズラがバレて、叱られた子犬のよう。思わず笑ってしまう。



「兄上が強いんですよー…。」

「お前が周りを見ていないだけだろう?」

「悔しいなぁ、またやりましょうね!その時は負けませんよ。」

「もちろん、勝たせる気はないけどな。」

「えええ…。」



 このままにしておいて、後で盤面をよく見てみよう。いくら遊びとは言え、このゲームはなかなか勉強になるし、反省を得て次に生かせる。


 俺とレイノルは席を立ち、違うテーブルへ移動した。



「そう言えば兄上。」

「ん?」

「その…レイリア妃殿下とは…。」



 レイノルが来てから薄々気づいていた。

 親父とオフクロ…やはり、俺を慕っているレイノルを使って探りを入れて来たな。



「なんの進展もない。」

「あー…仲良くやろうと言う気は?」

「微塵もないな。」

「兄上が別邸に行っている間に、話したことがあるんですが良い方でしたよ。」



 あの娘…親父やオフクロでは飽き足らず、妹や弟にもその手を伸ばしているのか…?



「どんな話をした?」

「庭にアオアザリの巣が出来ていて、雛もいました。ヒナが無事に巣立つように妃殿下が見守っていらっしゃってて…ですが、ある日ヒナが巣から落ちて死んでしまっていて。妃殿下自らが埋葬を…その時に手伝ったのです。」



 …ダメだ、全てが疑わしく思えて仕方がない。

 レイノルに好印象を植え付ける為に、自ら尊い命を奪ったのではと考えてしまう。俺は…こんなに穢い人間だったのか…。



「妃殿下はとても慈しんでおられ、そして悲しまれていました。その、はっきり言って外見はアレですけど…根は優しい方だと思います!」

「レイノル。俺はレイリアの外見など、もうどうでもいい。」

「えっ!?」

「その他の所で好きにはなれないんだ。」

「兄上…。」



 すまない、レイノル。



「俺は…兄上と妃殿下の結婚式が上手く行けばと思って…。」

「何…?結婚式、だって?」

「はい、本日ここに伺ったのは17日後に開かれる、兄上と妃殿下の結婚式のことについてです。」



 おい、マジか。俺とアイツの結婚式だって!?



「父上と母上が取り決められ、不仲である王太子と王太子妃のことを考慮し、我らフローリアの王族だけが出席することになっています。とりあえず、先んじて式を挙げ、他方へ向けての式はまた別日にと。」



 王族って、何人いるんだよ…。30名は超えるぞ。一族の前でアイツと結婚式だって?!冗談じゃない!



「分かった、わざわざ教えてくれてありがとう。さぁ、そろそろ戻らなければならないだろ?玄関まで送ろう。」

「はい、兄上。」



 いつもの自分を演じ、微笑みながら立ち上がる。

 レイノルもそんな俺を見て、少しは安心したのか笑みを浮かべながら立ち上がった。


 あんな娘と結婚式だと。悪いが俺は欠席だ。

 クソ、頭痛もしてきたし、最悪だ…。



 ────────

 ──────

 ────



 玄関先でレイノルと少し話し込んだ後、見送った俺はファーダゲームをしていた部屋へ向かって歩いていた。


 しかし、17日後に結婚式だなんて…王族全員が出席出来るわけがない。いくらなんでも強引すぎる。

 なんなんだ?…この変な感じ…違和感?とにかく何かが胸につっかえて仕方がない。


 どの道、俺は抗議も兼ねて出る気はない。だとしたらどうやって抜け出すか…。



「頭痛もおさまらないし…ゆっくり休みたい……ん?」



 丁度、廊下の角を曲がった時だ。ファーダゲームをしていた部屋からレイリアが1人で出て来たのを目にする。

 こちらには気気付いていない様子で、彼女は向こう側にある階段に向かって歩いて行き、やがて角を曲がって姿を消した。


 何してたんだ…?

 怪訝に思いながら俺は部屋に入った。別段変わった様子はない、俺とレイノルがいた時のままだ。


 だが違った。ファーダゲームの盤面がガラリと変わっていた。あれだけ俺が優勢で勝利したにも関わらず、レイノル側が勝利していた。


 レイリア…アイツがやったのか!?



「あの局面からどうやって…。」



 それはこのゲームを嗜む者なら誰だって分かるはず、あれはほぼ詰みの状態だ。でも、なぜ?どうやって?

 俺は記録されている盤面の進行を見てみることにした。


 俺が火計を放った次のターン。俺の陣地の奥側に来ていた100人の小隊が動く。この隊は、俺が冗談で総大将の軍を使い、壊滅状態に追いやって、レイノルが捨て去った部隊の残党だ。もちろん、動かした総大将は多少は傷付いたものの、元の位置に戻してある。


 火計のカードの場合、使用した側は火が収まるまで火計を使用した軍周辺は、大きな動きは出来ない。つまりこの場合4ターンの間、レイノルの軍を追い込んだ俺は待っているだけの状態に等しい。

 普通、ファーダ(王手)をかけたら、逃げるか切り札を使って切り抜けるかだ。なのに、そんな小隊を動かしただと?


 見守っていると、その小隊は地形を上手く使い、大部隊の間をすり抜け、2ターンの内で討ち取れば切り札に変換される駒を討ち取った。そして、3ターン目。切り札が使われた。



「"中位魔導師"…そんなものでどうやっ…あっ!」



 "中位魔導師"の効果。

 100人以上の隊で使用することが出来る。

 補足用のサイコロを3回振り、1回目で属性、2回目で範囲、3回目で威力を決めることができ、それに応じた攻撃が出来る。その上、ゾロ目が出れば、もう一度サイコロを振って攻撃が出来る。つまり、運が良ければ、2回攻撃が可能だ。



「まさか…!」



 自軍の総大将の位置と"中位魔導師"を使うであろう、小隊を確認する。サイコロを振って、範囲と威力で最大数である12が出れば、ピンポイントで討ち取れてしまう。


 盤面に表示された。



「12…それもゾロ目…。」



 結果は水・範囲最大・最高威力。

 "中位魔導師"は、1につき2マスの範囲、そして1につき100のダメージだ。

 つまり、1200のダメージが総大将を襲う。総大将の総HPは2500、冗談でレイノルの軍を壊滅状態に追いやったことで、2000まで減っているが、これを2回繰り返されたら…?

 負けを確信した時、レイノル軍を操作するレイリアは、こともあろうか、火刑で追い詰められているあの場所に水魔法を使った。


 強力な水魔法によって、火は完全に鎮火した。



「は…?なんで助けたんだ、総大将を討ち取るのはどうしたっていうんだ。」



 どうやら2回目のサイコロが振られたらしく、結果が盤面に表示された。



「12のゾロ目!?」



 レイリアは迷わず総大将の軍にそれを放った。

 総大将のHPは800。ゾロ目が出たらもう一度サイコロを振れる…まだレイリアのターンだ。


 3回目のサイコロが振られたようだ、盤面に結果が出た。5・12・9。最大範囲で、総大将がたHPが完全に無くなる雷魔法が総大将を襲った。


 俺の負けだ。たった3ターンの内に逆転された。

 しかも、あの局面で火計にあっている自分の総大将を助け、こちらの総大将を討ち取った。様々なリスクは承知の上だったはずなのに。

 運か?イカサマ?…いや、俺達が使っているファーダゲーム一式は、より実戦に近付ける為に判定が厳しくなっている。イカサマをしたら盤面にかけている魔法が作動し、即失格となる。


 なら…運任せではなく、確信していた?


 なんなんだ。一体…なんなんだ?




【10】ゲームと結婚式と弟。END.

■ レイノル・バーバリィ 20歳(19歳)

5人兄弟の下から2番目。あと少しで誕生日で、まだ19歳。グレイズを尊敬していて、とても協力的。明るく社交的で、上の2人の兄と比べると、接しやすい。

そろそろ自分の妃候補が決定する頃らしく、そわそわしていたりするとか。



■ ファーダゲーム

このゲームの考案者はギルメキア皇帝のゾディアスです。今じわじわときているゲームで、大人達に人気を博しています。

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