一
☆
窓から差し込む光は、ずいぶんとまぶしく感じた。
招かれた室内には、すでに待ち人がいて、オリヴィアを迎え入れてくれた。
記憶にある人とは、同じようで少し違う。
ただ、印象だけは同じだ。
春の日差しをはじく、美しい金色の髪。スミレよりも濃い、紫紺色の目。
綺麗だと、まず思う。
背が高くなったようでも、どちらかというなら身体全体に貫禄が出た、とでも表現するべきだろうか。穏やかで線の細かった青年は、もういない。
「久しぶりだね、オリヴィア」
元気だったかい、と尋ねられて、はい、と答えた。
飾りのない、薄紅色のワンピースを礼儀に倣ってふわりと横に広げてから、かすかに屈む、淑女の礼。
「お久しぶりです……サイラスお兄様」
あまり表情が変わらないオリヴィアは、サイラスのように微笑みを浮かべることはできなかった。
眩しかっただけではなく、オリヴィアは灰色の目を細めた。
兄とは全く違う輝きの、ごく薄い色の金髪が、一筋だけ顔の横にこぼれていた。肩よりも長くなっても、纏めることはしなかったそれを、耳に掛ける。
本当に懐かしいと、思う。
会わなかった、いや、会えなかった期間は、四年。
オリヴィアは、子供と大人の間といわれる十五から、十九になっていた。
決して長くはないが、短くもない。人の容貌が、立場が、変わっていくのは十分な時間だ。
「……まだ、そう呼んでくれるんだね」
サイラスはじっとオリヴィアを見つめてから、ぽつりと漏らした。
オリヴィアは、ただ瞬く。
かつてサイラスは、兄「だった」。だから呼び方はそれしか知らない。間違いならば、訂正しようと口を開けば、右手が上がって止められた。
「オリヴィア。今日君を呼んだのは……大事な話があるからなんだ」
そうだろうな、とオリヴィアも察していた。よほど「重要」な話でなければ、オリヴィアはこうして彼の招待に応じて、この部屋に立つことはできない。
オリヴィアは――罪人の娘だから。
行動は制限されていた。外出は理由なく許されず、その理由も、生半可なものでは許可が下りない。一日はオリヴィアの勤める研究所で完結していた。
そのため、今日という日は、とても大きな「変化」ではないかと、オリヴィアは予想していた。黙って、サイラスの話を待つ。
そんなに固くならなくていいよ、と兄が笑った。おいでと手招きされ、ソファへ案内される。
飲み物はすぐに運ばれてきた。
正面の、同じ布張りの低い椅子に、サイラスが腰かける。
白い陶器に鮮やかな赤の縁取りの茶器を口元で傾ければ、花のような甘い香りが広がった。ここ何年も飲んだことない、質の良いものだ。四年前までは、当たり前のように家にあっただろうけれど。
出された菓子も、礼儀上、一つ手に取る。美しく、きつね色に焼かれた菓子。これがどれだけの価値があるか、子供のころは全く知らなかった。
丁寧に食していくオリヴィアを、サイラスは、じっと見ていた。
もう一度口を付けたカップを戻した時、再度目が合って、オリヴィア、と呼ばれた。
「はい、なんでしょう」
「私と……もう一度、家族にならないか」
言葉は、まるで石を投げられたかのようだった。