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抑えられない気持ち
ルーク視点です。
古びた本の香りが漂う書架の中で
一人残されたルークはため息をついた。
「何やってんだ。俺……」
さっきは危なかった。
近くに座って仕事の話をしているところまでは良かった。
しかし、エレノアが黙った瞬間
触れた肩から熱がこみ上げた。
するとどんどん意識されていった。
エレノアから香るハーブの香りや
陶磁器のように透明感のある白い肌に作られた
長い睫毛の影
真っ直ぐな赤い瞳
月光のように光り輝く銀色の髪
全てが優雅で触れ難いほど高潔で美しかった
幼い頃の彼女も美しかったが、
今はそれ以上だ。
鍵をかけたはずなのに、
鍵穴から漏れ出す想い。
守るって決めたのに……
いつか殺さなければならない。
そんな矛盾をどうすることもできない。
エレノアを好きな気持ち。
王子として与えられた王国を守る義務
どちらも今の自分には選べないのだ。
しかし、
それでもこの想いは抑えられそうになかった。