巫女
「ようこそ、アマリス神殿へ
王立騎士様」
金色の髪の少女が銀色のドレスの裾をつまみお手本のような洗礼されたお辞儀した。
後ろには神官やシスター達が主人に倣って
頭を下げていた。
「私はアマリスの神殿の巫女、リリアーヌ。
リリーとお呼びください。
お久しぶりですわね。ルーク殿下」
「そうだな」
微笑むリリーにルークも笑いかえした。
二人の親しげな様子に
エレノアはなぜか胸の奥がモヤモヤした。
「本日は乙女祭のことですか? 」
「そうだ。まず、これを見てくれ。」
リリーはルークから手紙を受け取り開けると、
手紙をきゃっという悲鳴とともに落とした。
そしてガタガタと震えだす。
「どうした?! 」
「きゃぁぁあ! なんてこと! 」
ルークの声が聞こえないのかリリーは狂ったように叫んだ。
「リリー様!! 」
奥に控えていたシスターが飛び出した。
「お引き取りください」
リリーの異変にシスターは有無を言わさない声を言い放つ。
「……大丈夫です。」
リリーは震える声でシスターを制止した。
「取り乱して申し訳ございません。」
「あれ程の魔力が込められていたのですから」
ルークがいうとリリーは首を振った。
「いえ、私が取り乱したのはあの魔力は魔人のものだからです。」
「魔人って? 」
「知能が高く強い魔力を持った人の姿をした魔族です。」
またガタガタというだすリリーをシスターは優しく背中をさすった。
「何故魔人がこんな手紙を? 」
「申し訳ありません。
手紙の内容を教えていただけませんか? 」
「『銀の花で包まれし時、
盛大な前夜祭を開催する。
封印はアマリスの乙女を贄に解かれる。』と書かれてました。」
「なっ……」
エレノアの言葉を聞いたリリーは絶句した。
「どういう意味かお分かりで? 」
「はい。彼らは乙女祭で人々を襲い、
そして、魔王の封印を解くつもりです」
リリーの体はガタガタと震え、
瞳は恐怖に染まっていた。