夢
月が静寂な森を照らす。
エレノアは大木に腰をかけていた。
横には漆黒の髪の少年
少年の顔は靄がかかったように分からない
エレノアはザワザワと木々が擦れるたびに体をびくんと震わしていた。
「大丈夫だよ」
少年は安心させるようにそっとエレノアの肩に手を回した。
少年の手は優しく温かく緊張は次第に溶けていった。
「お願いがあるの」
エレノアはかすかに震える手でそっと少年のもう片方の手を握った。
「そばにいてね」
離れて欲しくない。
いつかこの少年がいなくなるのが怖かった。
少年はエレノアを抱き締めた。
エレノアの胸がどくんと高鳴る。
「あぁ。約束だ。
ノア、ずっとそばにいるよ。
絶対お前を守ってやるから。」
少年しか呼ばない愛称、
そしてそばにいるという言葉。
エレノアの胸から嬉しさと愛しさがこみ上げてきた。
エレノアはぎゅっと少年の背中に手を回した。
「ありがとう。
じゃあ、私も約束するね。
貴方と…」
エレノアははっと目覚めた。
薄っすらと差す日差しはまだ登ったばかりなのか
ぼんやりとしていた。
「ーまたあの夢。」
今まで薄っすらとしか見たことがなかった。
しかし、ルークと出会ってから3カ月。
エレノアは頻繁にこの夢を見ていた。
しかも、日を増すごとに明確になる。
ふぅとため息をついた。
この夢は本当に夢なのかしら。
どこか懐かしく胸が締め付けられるような感覚にエレノアは戸惑いを隠せなかった。