鍵
「で、今回の魔物はどうだった」
3人が出て行き副団長も下がらせると団長は徐ろに口を開いた。
「人語を話せるようになってたが、能力は毒針。
後は脳のないやつだ」
「人語か。なにかやつについて話していたか? 」
「何も。まだそこまでは教えてもらえない試作品だな。」
「そうか。で、あいつの方は? 」
団長がそう口にした途端、ルークの表情は抜けた。
「まだ大丈夫だ。」
「ならよかった。
あいつは俺の娘のようなやつだ。
だけどな俺は同時にこの国の騎士だ。
もしあいつの力が目覚め暴走した時は……」
「やめてくれ。現実になって欲しくない。それにまだ確証はない」
ルークは団長の言葉を遮った。
団長はルークの様子にじっとルークを見据えた。
ルークの顔に陰りがさした。
「そうだな。だが、覚悟を決めろよ、ルーク。
お前にしかエレノアは殺せない。」
「……知ってる。」
「だが、覚悟はできてないだろ? 」
「……俺は王子だ。この国を守る義務がある……」
「王子のお前は出来るだろうな
だがな、いざという時にただの男であるルークの
エレノアへの恋心が邪魔になる」
「俺はーー」
「捨てろよ、ルーク。
あいつが復活する前にな。」
「……分かってる。」
わかってる
このアマリス王国を守らなければならない。
そのためには、一人の愛する少女を犠牲にしなければならないことも
団長の言うとおりなのだ。
覚悟を決めなければならない。
この国のために……
ルークは10年越しの想いに鍵をかけた。