お城で
私はしばらく城に滞在することになった。
おじいちゃんは神官長といういわば教会の一番偉い人で、神の御使いであろう私は教会預かりになるはずだった。もちろん私は大歓迎!
なのに、身の安全や身の立証がはっきりするまでは国預かりの方がいいということになってしまった。
「御使い様。御用をお言いつけください。」
王様に許されたと言って、意気揚々と現れた王子はどんなに諌められようとも私に仕えると言い張り、私から離れなくなった。
これ、私が城に居なくてはいけなくなった大きな理由じゃないかと思う。
なんてったって第一王子。
教会に一緒に行かれたら、困るよね。
決して狭くない私の部屋の応接間に、王子一人でも存在感あるのに、王子付きの従者さんや騎士複数、なぜか学者達まで。
この圧迫感どうにかしてほしい。
マリーさんの他に王子の部屋付きであろう侍女さんが3人も増えた。
記憶の無い私のために神官さんや学者さんが知識を、マナーを教える公爵夫人まで加わって、連日部屋を訪れるからもう、目が回りそう。
銀ちゃんと精霊たちのおかげでなんとか頑張れている。
ほんのりたちは精霊だった。自由気侭な精霊は一所にとどまることはあまりないという。
まして、相性などの関係からいろいろな種類の精霊が同じ場所に集まることはむずかしいそう。
なのに、この部屋の中も外も精霊であふれていて、さらに気配に聡い人じゃなくても感じられるほどの存在感でいるという。
銀ちゃんも風の気配をまとっているので精霊だろうと。なぜ推測なのかというと、形態を持つものは見たことが無いからだそうで・・・。まあ、そこは気にしないことにした。
夢の中で会えるあの動物達もきっと精霊達なんだろうなって思ってる。目が覚めたらほんのり達に戻っちゃうけど。
言葉の通訳は銀ちゃんがしてくれていた。この国の言葉を習うときに手伝ってもらっている。
私の本来の言葉で話すと、学者さんが凄い勢いで質問してくるので言葉の習得はあまりすすんでいない。
「御使い様。一休みいたしましょう。」
今日はおじいちゃんが先生。国と教会の歴史と神様の話をしてくれた。
私が現れてから、晴天が続き作物の成長が著しいそうだ。ここ数年の不作を一年で解消出来るのではないかとみんな涙を流して神に感謝しているそう。
元々信心深い国柄だったのに、子孫の末まで教会の権威は揺るぎないものになったと感謝された。
「御使い様、この国を末永くよろしくお願いいたします。」
膝を折られるのは居心地が悪い。