精霊(仮)
実は。なぜか部屋の中にあふれるほどの数の小さな生き物たち。
私を見つめているのです。
多分、生き物・・・。窓の外にも。窓を埋め尽くしてる。
ほんのり薄いから威圧感とか全然ないんだけど。 目とかあるわけじゃないし、そもそもシャボン玉とか綿毛とか無機質なものかもしれないけど。
感じるというか察しちゃうというか、うまく説明出来ないのがもどかしい。
朝起きたときからなんとなく気がついてたんだけど、だんだん気配が強くなってるような。気のせいにはできない程。
これが精霊なのかな?私の周りに居るっておじいちゃん言ってたし。
どうしてなのかな?この視線。
なにかを訴えてるんだよね。珍しくて見てるだけなのかな。
銀ちゃんが駆け回ってたときはどうしてたのかな?蹴散らされたてのか。
銀ちゃんも不思議な存在だし。・・・。
悩む声が漏れたのか、銀ちゃんが不思議そうに私を見上る。まんまるな目がかわいいなあ。
輪郭がぼやけていつの間にか男の子になって
「どうしたの?」
そうか。男の子姿は会話仕様なんだね。
「あのね。すごくうすいんだけどほんわりした色とりどりの何かがいっぱいみえる?」
「・・・」
「銀ちゃんには見えないのか。それとも、ここではどこでもみられる当たり前の風景なのかな?」
「あたりまえ・・・じゃない・・・ううう・・・。」
どうしたんだろう。言いづらそう。
なんとなく銀ちゃんの柔らかい髪をなでる。
明日おじいちゃんに聞いてみよう。聞いたらきっと教えてくれる。記憶喪失なんだからわからないのなんて当たり前なんだし。他にも、わからないこと書き出しておこうかな。
あれ?
精霊(仮)が少しずつ近寄って来ているような気がする。さっきよりあきらかに近いよね?
銀ちゃんは答えを考えているのかうなっていて気がついてないみたい。
大きさも色もまちまちな中で他より色が濃くて大きな精霊(仮)が私の目の前にふんわりと降りて来た。
なんだろう。さわっても大丈夫かなあ。
おそるおそる手を伸ばす。なんとなくあったかい?
空気をつかめるはずも無いようになにも手にさわらないけれど、ほんのり温かさが感じられる。ほんのりレモン色が濃くなったような。
肩や頭、背中、足下にもほんのりした温かかさを感じる。いつの間にか精霊(仮)に取り囲まれている!?
でも、不快じゃない。
むしろ心地良い。
目を閉じてみる。
春の暖かい日差しと湿った大地のにおいがする。甘い空気。滝のしぶきのそばの清々しさ。新緑の森の中、フットンチットの息吹。吹き抜けるやさしい風。
深呼吸。深く息を吸って、深く吐く。
「だめ!!!」
叫ぶとまわりの精霊(仮)を蹴散らすようにとびかかる銀ちゃん。
あっという間にもとどおりの距離に戻ってしまった。