ともだち
柔らかなものが頬をなでる。
朝日のまぶしさと新緑と甘い花の香りにうっとりと目を開ける。銀色の光。風が頬をなでる。銀色の・・・
「銀ちゃん?」
ふふっと笑った銀ちゃんはくるっと回ってベッドから降りると部屋の中をかけ回る。
「あれ?まだ夢見てるのかな。」
「ちがうよ。ゆめじゃない。ぼく、ぎんちゃん。ともだち。」
いつの間にか男の子になった銀ちゃんが叫ぶ。かけまわるのはそのまま。元気だなあ。ふふっ。
あんまり楽しそうだからどうでも良くなって私も笑いがこぼれた。そうだね。銀ちゃんは友達。私の友達。
ここは昨日のお部屋。窓の外は木々が生い茂り、色とりどりの花が咲き乱れ、鳥たちのさえずりが聞こえてくる。窓は開いていないようだけれど、さわやかな風が髪をなでる。清々しい朝だな。凄く気分がいい。
コンコン。ノックの音。
返事をするとマリーさんが入って来た。
身支度を手伝われ、軽食をとる。くるくるかける銀ちゃんは目に入っていないようだった。
食後のお茶を楽しんでいると訪れを問われる。承諾すると昨日のおじいさん、ブランさんと王子がまた同じような人たちを従えて入って来た。学者さんみたいな人もいる。
おじいさんは銀ちゃんに目を留めると少し驚いたようだったが、そのまま席についた。
「お顔の色はよろしいようですね。なによりじゃ。」
「不便はありませんか?御使い様」
それからおじいさんが話してくれたことをまとめるとこんな感じ。
昔から語られている神の御使い様のこと。
暗雲立ちこめるこの国の現状。語りそのままに空から私が降りて来たこと。
そして、この部屋から見える景色が私の影響であろうこと。このお城の頭上から青空が広がり、暖かな日差しがさしていること。記憶喪失な私の身元を調査しているけれど私の話していた言葉を使う国がわからないこと。つまり、この世界の存在ではない可能性が高いこと。
日差しに当たりに国の人々が城の周りに集まり、神様に感謝の祈りをささげていること。もう少し時間がたてば御使いの恩恵がもっと実証されると推測していること。
「まぶしいほどの日差しはここ数年大地に降り注ぐことはありませんでした。すべての生き物が歓喜の息吹にあふれています。すべて御使い様をつかわしてくださった神のおかげです。」
王子は胸に手を当て膝をつく。周りの人たちも王子に習う。
「御使い様。感謝します。この国を救ってくださること。私は全身全霊であなた様にお仕えいたします。」