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明日は  作者: 白い花びら
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生まれ変わる

 逢未は一命をとりとめた。

 弱った身体はなかなか回復しなかったけれど、ユウが泣きながら差し出すスープを黙ってすすっている。

 ユウに下の世話をされるのを凄く嫌がって俺が外まで連れて行ってやっている。男だからな、気持ちはわかる。


 ユウはあれから遠慮することをやめたみたいだ。俺にもうるさく毎日食事を食べさせる。

 俺も必死で狩りを続け、腹一杯で食べきれない分をユウや逢未に食べさせることもある。


 家族だから独り立ちしてもご飯を食べさせ合いっこをしても良いんだって。

 他の大人狼達が何か言っても「よそはよそ、うちはうち」ユウに教わった呪文を唱えて聞き流す。


 しばらくしてから、俺とユウは国王の間に呼ばれて話を聞かれた。

 弱い逢未を助けて今も食べさせて生かしていることに一部の大人達がいろいろ言ってきたが、北狐宰相がそれを黙らせた。


 「3日前、手負いの雌鹿を譲ってもらったのは黒狼『うっ。おほん!!ごほん!」・・・。では、7日程前に丁度弱ったウサギを「あああ!!いや、なんでも。」・・・秋の終わりにうちの子ども達が息の絶えたばかりの獲物を拾ってきまして、他にもいい大人でも助けられて生かされている例はいくらでもあります。」

 

 へえ、そうなのか。

 偉そうにしていた大人狼達も心当たりがあるのか目が泳いでいる。


 「弱いものは淘汰される。我が国はそれでここまで衰退しました。ユウが教えてくれました。今日助けられたものが明日誰かを助けるかもしれない。どんな者も誰かの大切なものなのだと。この国はこれから繁栄していくでしょう。お互いに助け合って、命をつないで。そうですね、国王。」


 「ああ。そうだな。助け合って命をつないでいこう。」


 俺たちは呪文を唱えなくても堂々と助け合うことができるようになった。


 北狐宰相がこっそり教えてくれた。ライオン国王が弱い者達のために獲物を譲って歩いていること。みんなわかっていて黙っていたんだって。

 ライオン国王には家族がいたんだけど、俺たちが産まれる前の冬にみんな冬を越せずに死んでしまったんだそうだ。家族を守れなかった国王は国民を守ることを誓って、自分の食べる分も減らしてみんなに食べさせてくれていた。今年の冬はそうやってできることをやりつくしたら、後の者に命を譲ろうとしていたらしい。

 宰相が止めてくれていてよかった。まあ、ユウがきっと許さないだろうけどな。





 めずらしく風雪のない穏やかな朝、ユウがみんなを畑に集めた。


 「皆さん、今日はお願いがあります。この平らな場所は一面お芋畑でした。畑の周りの荒れ地まで蔓を伸ばした芋がそのまま雪の下にあります。

 今日はその芋を全部掘りましょう。春までまだもう少し。蓄えていた食料も少なくなってきて、皆さん食べる量を減らし出したのでしょう?でも、大丈夫です。秋に収穫した量と同じくらい、もしかしたらもっとたくさんお芋がとれるはずです。

 今日はお芋パーティーにしましょう。力自慢の皆さんは芋掘りを、他の皆さんは手分けして収穫したお芋を温泉で洗ってゆでたり、たき火で焼いたりしましょう!残った分は各家とお城の貯蔵庫に。食べきってしまっても大丈夫です。

 まだ、手つかずの芋畑があちこちに残っています。

 春までいくらでもお芋パーティーできますよ!」


 「うおおお!!!」


 お芋パーティーはうまかった。掘って掘って、腹一杯食べて笑ってお土産付き。実はいつものくせで小さいお芋は埋めなおしておいたから、春になったらまたぐんぐん育って食べきれなくなるかも。


 お腹のふっくらした雌もちらほらみかけた。

 男たちはせっせと芋を食べさせる。


 初めて迎える春は、きっと忙しくて楽しそうだ。


 逢未とユウと俺。助け合って生きていくんだ。

 

 

 読んでくださり、ありがとうございます。

 命の話はつらいです。死は心が痛くて悲しくて。でも、獣達の国ではさけて通れない課題でした。何度も考え直してこんなストーリーになりました。読み返しては泣いてしまいます。

 私の考えるお話ですからご都合主義と言われようがみんなに幸せになって欲しいと思っています。

 ライオン国王のことはどこかで理由を書きたいと思っていました。孤独になった彼も国民達に慕われ必要とされていることに気がついて欲しい。命を譲るのではなく、命を支え合って生きていって欲しい。幸せを感じて欲しい。

 欲しいばかりですね。

 愛するキャラクター達一人一人の幸せのかたちを考えています。

 

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