問答
ここは多分どこでもない場所。
心がつながる場所。
銀ちゃんと会えたように、なにかと心を通じ合わせられる。
なぜかそう思った。
『是』
『空間』
『想像』
『刹那』
『交流』
『疎通』
頭の中にいくつものメッセージが浮かぶ。
発しているのは誰?
『無限』
『存在』
『空』
ああ、もう、めんどくさい。
ちゃんとわかりやすく話して!!
こういうのは難しくしゃべる人は却下ね。
そう、牧師様のお父さん。
神様の話をいつもわかりやすくしてくれた。
覚えてる。
低い声でゆっくりと話すの。
私を見つめながら。少しでも首を傾げるとわかりやすく噛み砕いて何度でも教えてくれた。
透き通るような瞳はなんでもお見通しで、すごく安心できた。
「なるほど。便利なものだね。」
っ!! お父さん!?
「私は貴方のお父さんではないのだよ。姿を借りているんだ。」
・・・はい。なんとなくわかります。
「私はここにいて、ここに存在しないもの。何物でもないがすべてのものである。」
「私は世界であり、空であり、水であり、命であり、意思である。」
「私は生であり、死であり、有であり、無である。」
難しいよ。何を言っているか全然わからない。
でも、とてつもなく凄い存在だということはわかる。
凄いお父さん?
「私はとてつもなく凄いお父さんである。」
え、そんなに簡単でいいの?
「良いよ。貴方と心を通わせたいのだから。」
私と?
「そう。貴方は強い願いを抱いた。私と同じ存在になって初めてだ。」
強い願い?
そう!逢未!
逢未のそばに行きたいの!
死なせたくない。
絶対に!
「生は奇跡、死は必然。不変の自然の摂理だ。自然淘汰もまた自然の摂理。」
わかってる!
わかってる!!
でも。
でも、どうしても嫌なの!
失いたくない!!
大事なの。
大切なの。
かけがえのない私の家族。
「獣の摂理を曲げれば、アレはもう獣の中では生きられないだろう。それでも、獣でありながら獣として生きられない道を歩ませても、存在させたいと願うのかい?」
それでも、生きていてほしい。
どうか。どうか。
命を奪わないで。
「彼は我。我は個にして全。すべての命もそれを願うか。ああ、我も生を望もう。」
「我が娘のそばで。」
お父さんが白くなっていく。
白は雪にかわり、ここはどこかの森の中?
茂った葉は屋根になって足下の雪は浅い。
雪の中、光るものは?
足下の雪の中に輝く銀毛が。
「逢未!」
静かに横たわる銀灰色の肢体。
必死に雪を払う。
冷たくなった身体を抱きしめる。
こすって暖める。
口に手を当ててみる。
かすかに息を感じる。
「逢未!死なないで!」
私の体温全部あげる。
冷たい逢未をあたためて!
「ユウ!!」
いつの間に?
逢未の身体を温め続けて、身体の感覚が無くなった私を呼ぶ声が聞こえた。
ふりむくと大きなそりを引いた未来。そばにはジークとアルもいる。
銀ちゃんが連れてきてくれた?
「ユウ、早く!」
3人がかりでそりに逢未を乗せると、未来が走り出す。あわててそりに飛び乗り逢未にすがりつく。
「逢未! 逢未!」
吹雪はすっかりやんでいた。
腕の中の逢未を抱きしめる私の周りを銀ちゃんが嬉しそうにくるくるまわる。
きっと大丈夫。
「銀ちゃん、ありがとう。」
凄いお父さんありがとう。




