狩り
「ジーク様、ユウ様、今日は私に休息をいただきたいのです。よろしいですか?」
皆の様子を見てまわってから、遅い朝食をとっているときのこと。
冬ごもりの獣達。
よく眠り、時々狩りに出て行くもの。
定期的に蓄えた食料を食べるもの。
秋に食べるだけ食べてからひたすら動かないもの。
それぞれに冬を過ごしている。
私たちは毎日、遅い朝ご飯と早い夕ご飯と午後のお茶をとっている。
獣達の食料を減らすわけにはいかないと思ったが、食べすには生きていけない。他のもの達のように狩りや食材探しをしようとしたが、保存した中から食べるようにしっかり言われてしまった。私たちの食べる量なんて少な過ぎて大して変わりないと笑われたくらいだ。
ジークのお土産の中から、獣達にはあまり食べさせない方が良いと思われる調味量や刺激のある食材なんかを取り入れながらの試行錯誤料理。
台所はないので、精霊のおかげで絶えない火のある私の部屋で料理する。
アルもジークも手伝ってくれるが普段は私に任せてもらっている。
小麦粉にヤギの乳と塩。よくこねてのばし、鍋をひっくり返して焼くナンもどき。山菜やお芋、干した肉にハーブを入れてスープを作る。
鳥達が卵を産んでくれるようになったら、もう少し豪華になるだろう。
暖かい季節にせっせと作ったジャムは好評で、食卓には欠かせない。
フォークやスプーンはマルクの作ってくれたものをまねてジークが増やしてくれた。以外と器用な彼は、おもいつくまま木や蔓を加工して生活に便利なものを作ってくれる。
アルは身体は大きくて剣の腕に覚えはあるようだが、料理も細かい作業もうまくいかずひたすら肉体労働を受け持ってくれている。
アルに頼りすぎたのだろうか。休みたい程疲れていたなんて。
「いえ、休みをいただいてちょっと出かけたいんです。」
「どこへ行こうというんだ。こんな雪の中。」
「ジーク様、実は不要品の部屋の中で弓矢を見つけたので、使ってみようかと思いまして。」
旅好きカラスが集めたいろいろなものは獣達にはほとんどが不要品なので、奥の部屋にまとめて入れてある。私には宝の部屋だけど。
そういえば、包丁やナイフの隣に槍や刀、弓矢なんかもおいてあったな。斧や鉈も使わせて貰っている。
「狩りに出てみようと思うのです。たまに新鮮な肉も食べたいなと。」
ジークの目が輝いた。
「肉!いいな、狩り。行こう!俺も行く!」
「いえ、ジーク様はだめです。何があるかわかりません。危険です。」
「ならば、アル1人で行かせる方が危険だろう。」
「私はなれているので大丈夫です。まだ仕事が残っていますので、2人で休みをもらう訳にはいきませんし。任せてください。上等な獲物を捕って参りましょう。」
「いや、しかし。狩りなら俺だって得意だぞ!」
2人とも新鮮なお肉が食べたいというよりは、狩りに行きたいのかな。
狩りで穫った獲物自慢に変わっていった。
「2人で行っておいでよ。」
「えっ?」
「ユウ様?』
困った顔と驚いた顔。ふふっ。
「私も1人で行かせるのは心配だから、二人で行ってきてほしいな。いつもの仕事は1人でも大丈夫だし。出来ないことは誰かに手伝ってもらっても良いしね。」
「ですが」
「おいしいお肉とってきて!ただし、危ないことはしないこと。もし、うまくいかなくても日暮れまでには帰ってくること。ね?」
「はい。」
「ありがとうございます。」
2人は朝ご飯を綺麗に平らげると、いそいそと支度をして出かけて行った。
そういう所は男の子(あれ?男の人?)だなあ。
そうだよね。
きっと遠慮して何も言わないけど、いつものご飯じゃ物足りないよね。
仕事以外じゃ身体を動かすことも少ないし。たまに楽しいこともないとね。
2人が狩りを楽しめますように。
そして出来たら美味しいごちそうを作ってあげられますように。
夕方、楽しそうににぎやかな会話をしながら得意そうな顔をした2人が帰ってきた。手に、十分な手応えを持って。
残念ながら鴨らしき鳥をさばいたのはアルで(ごめんなさい。出来ません!!)、3羽のうち2羽は成長期の子猫姉妹に奪われてしまう騒動も起こり、残りの一羽を暖炉の火で丸焼きにしただけの料理になってしまったが、2人は満足げに完食。
次の機会があれば、もう少し頑張ります。




