もふ日和
仕事が終わると倒れるようにベッド代わりの干し草に横になる。
今日はいつもより大変だった。
顔をなでる柔らかい毛。目を閉じていてもわかる。
「銀ちゃん、今日はお部屋にいてくれるの?」
外を走り回る銀ちゃんはなかなか帰ってこない。
今日はたまにのお休みなのかもしれない。
顔にふれるしっぽをなでると、くすぐったそうにしっぽをふるわせてお腹の上に飛び乗ってきた。
頭をくしゃくしゃとなでる。
銀色の毛はつやつやでちょっと冷たい。
小さな頭はいつの間にか子どもの大きさに変わっていた。
「きょうね、みつけたの。」
「何をみつけたの?」
「あのね、ゆきのたまご」
「え?たまご?」
「うん、おへやにいれたらじゅわってなくなった。」
心なしかしょんぼりした顔。
雪の卵がどんなものなのかよくわからないが、なくしてしまうのは悲しいだろう。
「雪は温かい所が苦手なの。冷たいからだが暖まると溶けてしまうから。だから、今度見つけたらお部屋に入れないでお外においておいたらいいんじゃないかな。」
「うん、そうする」
「雪の卵から何が生まれるの?」
「わからない。はじめてみつけたから。 」
「じゃあ、今度見つけるの楽しみだね。」
「うん!またみつける!」
飛び上がってくるんとまわるとまた狼の姿。あっという間に外に飛び出して行ってしまった。
「あれ?せいれいいなかった?」
逢未が戻ってきた。
身体が大きくなってきた2人は今日初めて狩りに連れて行ってもらった。
山の歩き方や獲物の取り方を大人狼が教えてくれる。
独り立ちするためには大切なこと。
「いたんだけど、また行っちゃった。」
干し草ベッドに乗り込んで私を包むように丸くなる。
本当に大きくなった。もう私の身体は埋もれてしまう。
「逢未、狩りはどうだった?」
「うん、うまくいったよ。ぼくが見つけてみくがつかまえた。ゆきに足をすべらせてころんじゃったけど、ふかふかのゆきだったからいたくなかったよ。」
「良かったね。」
耳の後ろに手を伸ばしてゆっくりなでる。気持ち良さそうに首をのばして目を閉じた逢未。
すぐに寝息が聞こえてきた。
「あれ?逢未、もう寝ちゃったの?」
「うん、今眠った所。お帰り、未来。」
私をはさんでベッドにのると未来も丸くなる。
「今日は凄く歩いたんだ。森の奥や山の崖の方も行ってきた。危険な場所とか、緊急なときの目印とか教えてもらった。帰りにウサギの足跡見つけて2人で捕まえた。うまくいったよ。大人達に褒めてもらった。」
「頑張ったんだね。」
未来の頭をなでる。
耳がピクプク動いたけど、じっとしていてくれた。
目をとじた未来はりっぱな狼だ。
初めて会ったときの頼りなかった身体も大人になる日は近い。
いつまで一緒にいられるのかな。
たくさん歩いて疲れたんだね。
未来もすぐに眠ってしまった。
温かい体温につつまれて私もいつしか眠りの中へ誘われていった。




