目が覚めて
目を覚ますと、知らない白い壁が目に入った。天蓋からおりているカーテンは透けるような白。どこ?
「***、**********。」
私に声をかけた女の人はあわてた様子で扉のそとにでていった。
なぜ、私はここで寝ているんだろう。あの女の人は誰なんだろう。
ぼんやりとしたまま、身体を起こすと、窓の外に色とりどりの花や果実が眩しい日の光に照らされているのが見えた。窓が開いているのだろうか。穏やかな風が頬をなでた。
女の人がもどってきた。枕元においてあったつぼのようなものを傾けて一緒においてあったコップに水のようなものを注ぐと私に渡してくれる。
「***********。」
「あの。私は」
「***!!******!!」
勢いよく開いた扉から大きな声を上げあげながら男の人が入ってきた。若そうな長身の人。突然のことに驚いて声が出せない。
目が合う。すんだ湖のようなきれいな目。ただその目から目が離せない。
「***、************。」
後から入ってきただろう人が声をかける。目を移すと、白髪に白いひげ、彫りの深い顔に寄せたしわが優しそうな雰囲気をみせるおじいさんが私たちを見ていた。おじいさんに続いてあわてて入って来た人たちは多分警備を目的にしてる人と高貴な人に仕える感じの人。腰にある剣は人を傷つける道具。それが身近にあるって怖いと思う。
「あの、私はどうしてここにいるのでしょうか?」
「****、*****。・・・・・。 」
言葉が通じない?どうしよう。こういうときはどうしたらいいんだろう。
おじいさんも、困った顔をした。でも、すぐに何かを思いついたらしい。
「*******、******!」
なにかを唱えながら、おじいさんが持っていた杖を振り上げると、強い風が巻き起こった。不思議な面持ちでおじいさんを見つめる。何がおこったのかしら。
「わしの言葉がわかりますかな。」
「はい、わかります」
「それはよかった。少し話を聞かせてもらってもいいでしょうか?」
不思議ながらも言葉が通じることに安堵して、うなずいた。
おじいさんはこの国の神に仕える神官でブランさんといい、青い目の男の人はジークフリート。この国の第一王子なんだそうだ。ここのところずっと続いている暗い曇り空から一筋の光がもれ、その光をまとうように空から私が落ちてきたのだという。知らせを受けてその場所に駆けつけ、私を保護してくれたそうだ。
私が空から落ちてきたなんて信じられないと思う。なぜ、空から?それより、空から落ちてどうして私は生きているのだろう。
「信じられん話じゃが、本当のことです。わしもこの目で見たからな。鳥の羽が舞うように貴殿は降りてこられた。」
「私もみました。貴殿は天からの御使いなのですね。明日を憂う私たちをお導きくださるために、この地に降りられたのでしょう?」
「あの、私はただの人間です。どうして、空から落ちたのか、落ちたのに生きていられるのか全然わかりませんが、間違いなく神様のお使いではありません。」
「ふむ。・・・。ところで貴殿は精霊を使えるのかね?」
「精霊ですか?それは、どういう・・」
「貴殿のまわりに精霊の存在を感じるからじゃ。今、言葉を交わすのを手伝っているのは風の精霊じゃ。窓も開いておらんのに気持ちのいい風がふいておるじゃろ。」
「はい。」
「昼間でも暗い曇り空なのにこの部屋は眩しいほどの光に満ちている。窓の外にはなぜか急に茂りだした庭の木々に花。どれも貴殿のためじゃろうて。」
「私のために、精霊が?」
「心をすませば精霊の気配はわかるはずじゃ。じゃが、その様子では精霊が勝手にやっているということか?そんなことがあるのじゃろうか。ううむ。」
「神官長殿。彼女は神の御使いではないのですか?そんなはずはない!確かに彼女は虹の光に包まれて私たちのもとへ舞い降りてきたではありませんか!」
「断言はできぬ。自身が違うというておるしの。」
「しかし!」
「あのう」
「見ず知らずの私を保護してくださってありがとうございました。それで、これから私はどうしたらいいでしょうか。迷子の相談に乗ってくれる機関などがあったら教えていただきたいのですが。」
「その心配はいらぬ。国王が貴殿を保護すると言った。だから、安心してここにいるとよい。」
「ありがとうございます。」
いろんな不安を考えないようにしながら、私は笑顔をつくった。