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明日は  作者: 白い花びら
23/44

友として

 王子もマルクにも特別なことは出来ず、皆と同じ食べ物をふるまう。畑でとれた山菜とお芋の料理。

 今日はみんな狩りにいけなかったから、干していたお肉をつかったスープ。これでも、来た頃に比べたらごちそうだ。王子は食事はいらないと言って部屋にこもっている。

 マルクは給仕を手伝いながらすっかり獣に打ち解けていた。


 「おお、うまいな、この芋。なんていう芋なんだ?」

 「さあ、山から採ってきたものを畑で増やしたものだ」

 「へえ、山の芋ねえ。畑見たけど俺の知らない作物ばっかりだったな。うまいからか?」

 「いや、この国にはそもそも畑など無かったのだ。食べ物を増やすためにユウが考えた。畑の物は、山や森で食べていた物を植えてみて、育ったものだ。」

 「ええ?畑無かったのか。そりゃあ、大変だったな。」

 「マルク、わかるの?」

 「ああ、わかるさ。俺の村は山に囲まれてほとんど畑にならない。木を切って売ったり、炭や木工品つくって売ったりして、もらったお金で米や小麦を買う。採る物が無くなったらどうにもならねえ。広い畑が作れりゃ、いつでもお腹いっぱい飯が食べられるよな。」

 「マルク。この国も山がいっぱいで木はたくさんあるの。冬に備えて薪を作ってもらってるんだけど、他にも役に立つもの作れるかなあ?」

 「薪?良い薪は木を切ってから2年は乾燥させるんだ。燃えないことはないけど、少しでも良い薪にしたいなら細かく割った方がいいな。」

 「そうなんだ。ありがとう。さすが専門家だね。教えてくれて助かるわ。早速明日、皆にお願いしなくちゃ。」

 「俺、一緒にやっても良いか?なにもすることないし、役に立てることがあるかもしれない。」

 「うれしい!お願いします。皆もきっと喜ぶよ。」

 「へへっ。」



 軽食を持って王子の部屋を訪ねる。

 ちゃんと向き合って話をしようと決めていた。


 トントン

 「王子、私です。」

 「みつっ、ユウ様。お入りください」

 「おじゃまします。」


 「私をユウと呼んでくださってありがとうございます。」

 「いいえ。」

 ・・・。

 「考えていたのです。御使い様と呼ばれた貴方がいつも見せていた表情。ご尊顔がいつも曇っていたことを。

 私は貴方の心のうちをもっと考えるべきでした。知るべきでした。

 貴方は優しい方です。貴方は私たちの望むまま、御使い様として居てくださった。私たちが神の御使いという存在に勇気づけられ、生きる希望を与えてもらっていたのを知っていたからです。

 貴方は私たちの都合のいいままに城に留め置かれ、さらに国はずれに移されて。それでもただ従ってくださった。

 私たちは、いいえ私は、貴方自信を認めていなかったのですね。貴方に名前があり、意思があり、感情があることを見ようとせず、貴方を苦しめてしまっていたのですね。」


 「ユウ様。どうか、償わさせてください。私はもう、王子ではありません。国のために生きていたジークフリートは消えました。

 私は私の心のままに生きることができます。ただのジークをおそばにおいてくださいませんか。どうか、どうか。」


 うつむくジークの表情は見えない。


 「じゃあ、ジーク。私の友達になってくれませんか?

 貴方が貴方のやりたいことをやり、心のままに生きることを私は応援します。だから貴方も私を友として、ユウとして生きることを応援してくれませんか。」

 「はい。ユウ様。ありがとうございます。」

 

 正面から目を合わせる。

 深い澄んだ湖に涙がにじんでいた。

 さっきまでくすんでいた金色の髪が輝いているみたい。


 まっすぐな人。

 この人も王子という存在として生きてきた。生まれたときから国を背負う重圧に耐え、ふさわしくあろうと努力してきた人。

 今は私と同じ。1人の人間として生きていく。

 

 「あああ。このあふれる歓喜をなんとあらわしたら良いか・・・感謝します!ああ、母上。神よ。あああ。」


 祈るように目を閉じ涙を流すジーク。


 あれ?

 なんだかちょっと、様子がね。


 テーブルに食事をのせると、そうっと部屋を出た。

 

 しばらくそうっとしておこう。

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