捜索
夜明け前、俺たちは捜索を開始した。
身支度を整えて明るくなるのを待っていたのは俺だけじゃなかっただろう。
夜が明けても森は暗かった。
昨日までの晴天が嘘のようにどんよりとした曇り空。
ほんの2ヶ月ほど前までの日々が思い浮かぶ。
しとしと雨も降り出した。
神官2人は神殿へ。おれたちは二手に分かれて捜索していた。昼に一度野営地で落合う。
何の手がかりも見つからなかった。
精霊達の影響であの子の歩いたところには花々や木々が繁る。
それが野営地のすぐそばで途切れていた。
野営地の周りもそういう状態だったから、見つけるのに時間がかかったが、わずかに飛び出している場所があった。だが、それだけだった。
馬のひずめの跡も残っていなかった。
歩かず、馬に乗りもせず、どこへ行ったというのか。
俺は空を見上げた。
神の御使い様は空から降りてくる。この国に住むものなら誰だって知っている。
そのもの 空から降り立ち
虹をまといて 明日を導く
あの日。俺も見た。
暗い空から光が射して、空に7色の橋が架かった。
あの日から雲が切れて青い空が広がりはじめた。
家族や仲間達の顔に笑顔が戻った。
城の庭の一画がすごいことになって、物珍しくて見に行った。
見たこともない花や果物なんかいっぱいあって採ってもとっても繁るらしい。
味気ない食事が変わった。殿下の変事に頭を悩ませながらも、うまかった。
空に帰ったのか?
思いついたらそうとしか考えられなくなった。
皆の明日を導いて 御使い様は空へ帰って行きました。
めでたし、めでたし。
昔話なら、これでおしまいだ。
だけど、いやだ!
神様。俺、頭悪くてうまくいえないけれど、これで終わりじゃ嫌なんだ。
こんなかたちであの子が帰っていいはず無い!
もっと、もっと、あの子にも幸せを感じてもらってからじゃなくちゃ。俺があの子の幸せな顔を見てからじゃなくちゃ。
まだ、俺はありがとうを伝えてない。
俺は暗い空を見上げる。
雨は止まない。
体の熱をどんどん奪って。
俺の心まで濡らして。
護衛騎士視点でした。
シリアスなのは読むの苦手なので、自分の作品にその影響が出ているかもしれません。
長く続くのは作者が耐えられないので、ちょこっとのおつきあいです。