出会い
マルクさん。
私を助けてくれたのは笑顔が可愛い青年だった。
山の仕事をするという彼は背が高くがっしりしていて、私を抱き上げても危なげなさそうでほっとした。
どんなに軽いものでも空から落下してきたら受け止める人も怪我を負うと思う。怪我を心配したが大丈夫だと彼ははにかんだ。
「タスけてくダサってありがとうございマシタ。」
これだけはきちんと伝えたくて練習した。
「いやいや、俺、じゃなくてわたしはむしろ御使い様をこの手に抱けて。いや、ええと、御身を、ううんと」
「普通に話してくれていいです。」
「そうか、助かる。俺の腕に降りてきてくれて嬉しかった。俺、人生で一番良いことがあったって思ってるんだ。あんたのおかげでまた、山仕事出来るようになったし、母ちゃんも調子が良くて、村のみんなも笑ってる。」
「それは、私のせいじゃ・・。お母さん、お体悪かったの?」
「ああ、ずっと寝たきりだったんだ。だけど、あの日から顔色が良くなって食欲も出てきて、今日は御使い様に会えるって朝から嬉しそうにしてる。」
「良かったね。お母さんもっと良くなるといいね。」
私が降りた場所は以前と比べると見違えるほどの景色になり、今も、まぶしいほどの光が射しているそうだ。日光浴もかねてたくさんの人が訪れているんだとか。同行させてもらったみんなもそちらで様子と調べている。
私はマルクさんのお母さんを見舞うことにした。
「ああ、御使い様。」
お母さんが手をつこうとするのを慌てて止める。
「そのまま、横になっていてください。」
「母ちゃん、良かったな。」
「ああ、本当に。寿命が延びるおもいだよ。神様、感謝いたします。」
「そうだ、あんた名前はなんて」
「御使い様、そろそろお戻りを」
少女が急に無表情になる。なにか粗相をしてしまったかと、まわりがおろおろしていると、空を見つめて
声を発した。
『日に当たらないと、血圧や心臓に良くないよ。ビタミンDも作られないからカルシウムの吸収率が悪くなって骨折しやすくなるし。ホルモンのバランスを整える働きもあるから、なるべく日光浴をさせた方が良いよ。』
そんなことを言っているなんて自覚無かった。なぜか、突然みたことも無い人たちと景色が頭の中にあふれて、何もかんがえられなくなったから。
「御使い様?」
「はっ。私ぼうっとしてたみたい。すぐ行きます。」
「・・・。」
本当に仲の良い家族だったな。
帰りの馬車の中、銀ちゃんがすり寄ってきてくれた。ぎゅっと抱きしめる。
きっと病気も良くなるだろう。
みんなが幸せに暮らせますように。願うことしか出来ないけれど。
「ケツ?びたん?よくわからないけど、日光浴した方がいいんだな。みんなにも教えてやろう!
母ちゃん、ちょっと負ぶさってよ。お天道さん見に行こう!」
それから、人々に日光浴が広がり、原因不明の病気で苦しんでいた人たちが回復に向かうことになる。その話が城に届くのはしばらくたってから。