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転んだ。

体が動かない。

意識はある。しかし脳が信号を送っていないかのように、体がまったく動かない。


さっきの声は一体誰だったのだろうか。

ただ聞かされ、納得もしないうちにいなくなったあの声。

いったい。


「!」


脳が急に体に信号を送った。

動く体に少し戸惑うが、その感情を吹き飛ばす感覚が体を襲った。


落ちている。落下。

強風が背中に強く打たれる。痛い。かなり痛い。

そんな風にも耐え、目を開けた。


青い空が見えた。

それはそれは、雲一つない、綺麗な空だった。


呼吸をする。吸って吐いて。

吸って。



「うわぁぁあああああああああああああああああああああっっっっ!!!」


吐く。


きっとこの叫びは地上まで届いているだろう。

というより、いま地上まで何kmなのですら分からないこの状況は危ない。

現状の危なさに気付いた自分は振り向き、地上を確認しようとしたその時。


固いコンクリート素材が目の前に。







「・・・っあ」


目が覚めた。まだ額部分が痛むが、力を振り絞って起き上がる。

視界にはコンクリートだけ。


振り向く。コンクリート。

全体を眺める。コンクリート。


5mあたりにも及ぶ固いコンクリートに囲まれている今。


「どうしようか・・・」


ぽつりと呟いた。

5mの壁を登ろうと思う度胸は生憎自分にはない。

頭を悩ませていると自分以外の影が視界に写った。

瞳孔が開く。

暑くもないのに少量の汗が肌に現れた。


そういえば、前の人生の最後の日は。

とてつもなく暑い日だったなぁ。


そんな気持ちでいると同時に。

本日二回目の衝撃と、痛み。



「ぐぁっっ・・・!」


腹を直に蹴られた。

視界で意識がある限りの記憶を頭に詰め込む。

細く、短い脚。白い肌にヒラヒラとしたフリルのついたレース状のスカートが少し見える。

靴は、白いスカートに対して水色と藍色の二色で彩られたシンプルなペタンコ靴を履いていた。


これだけの情報で分かることは、10歳から14歳の女で餓鬼。そして、野蛮。


ペタンコ靴だったから腹にはそこまで食い込んでいないが、おそらく5mから飛び降りたと仮定したとして飛距離と勢いはかなりのものだ。


痛い。痛い。いたいいたい。


感情が三文字の綴りを続けるだけ。

瞳孔は開きっぱなし。汗は出て、喉は押しつぶされそうな衝撃を受けている。


そして数秒の蹴りを入れられてからの。

地上に背中を強打。

またまた本日二度目である。


背中を強打した瞬間に閉じてしまっていた目を開け、自分の腹を蹴った本人を視界がぼやけながらも探す。


人影が見える。瞬きを繰り返し鮮明に視界が広がった瞬間。

俺はその張本人を見た。


白と水色のグラデーションのある髪に橙色の瞳。白のワンピースに俺の腹を蹴った靴。


どっからどう見ても幼女だ。

身長は140と言ったところだろうか。小さな身長でよくここから飛び降りたものだと一瞬は思ったがそんなことより大切なことがあった。


「お前、何で俺を蹴ったんだよ・・!」


まだ腹が痛むので迫力は無いし、弱い声にはなっているが単刀直入に聞いてみた。

すると彼女は一言で俺の必死の言葉にナイフを突き刺す。


「私はお前を蹴っていない。たまたまお前がそこに居て、私の足が当たって、お前が転んだだけだろうが。」



どうやら俺は転んだらしい。


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