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死んだ。

夜中に目が覚めた。

ひんやりとした風が肌を撫でるのを感じ、振り向くと窓が開いてカーテンがゆらりと霊でも出るように揺れていた。


まずは水でも飲んでそれから寝よう。

そう思った自分はベッドから降りて部屋のドアを開けた。


ヒタヒタと素足の音が響く。両親は朝まではいない。仕事が忙しいとか言って、きっとどこがでほっつき歩いているんだと思う。


「ハァ・・・」


思わずため息が漏れた。ため息が漏れると同時にある本を思い出した。


思春期の少年少女たちを描いた、良い本だった。

台所まで着くとガラスのコップを持って水を注いだ。


水道から流れる水は透明で、綺麗。

少しぼやけて見える自分の顔。

自分の瞳と目があった気がした。


水を止めてコップの中を喉にへと運ぶ。

少し乾ききっていた喉が潤っていった。


「・・・・あっつ。」


ミシミシと夜でも暑いこの季節。

外にでも行って風にあたってこようと思い、玄関へと向かった。


靴下すら履いていないが白いスニーカーを履いて外へと出る。

風がなびく。誰もいない夜の道を一人でとぼとぼと歩く。


物静かな街が騒ぐ気配もなく。風の音だけが体全体を包む。

曲がり角を曲がろうとした。その瞬間だった。


キキーーーーーーーーーーーーッッ!!!!








ブチャッ







「・・・・・・」


真っ黒な世界が視界に広がる。

瞬きを繰り返すが何も変わる気配などない。


意味も分からず呆然と立ち尽くしていると声が聞こえる。

それはそれは、高い、奇声のような声。


「レッディーーッエーンジェントルメェーーーーン!!!


貴方様・・・いや、名無し様。ようこそ真っ黒な世界へ。


ここが何処か、という質問には答えませんよ。そんなベタな質問返すはずがないでしょう。


だって、もう既にその答えに返答は完了済みなのですから。


え?じゃあ違う質問を?


そんなもん、この私の正体でしょう?


知ってます。質問の内容はこれでしょう?


でも、これは返答いたしません。


きまりです。まぁ、私の話をだまぁーって聞いてくださいね?


まず、ここは名無し様の人生の折り返し地点です。


名無し様の人生はゴールなどしておりません。


いえ、正確に言うと。ゴールのゴールはまだゴールしていないということです。


分かりやすくいうと、さっき名無し様がゴールした門の先にもう一つか二つゴールがあるというわけです。


ご理解頂けましたか?それでは先に行きましょう。


ゴールの意味は分かりますよね?そう、死です。


さっき名無し様は一つ目のゴールをして、この世界へと来ました。


てことで、もう一回ゴールしていただく、ということになります。


つまり、違う人生を歩んで、ゴールをしてほしいと言うことです。


そして今度こそ完璧にゴールをしようと。


名無し様。私はこの人生を折り返し地点と言いました。


名無し様がさっきゴールを迎えた人生の日数分だけ、違う人生を歩んでいただくことになります。


人によってゴールをくぐりぬける数は違いますが、名無し様の場合。


たった一つの人生を歩むだけで、完璧なゴールをすることが出来ます!


生まれ変わる数も、その人によって変わるのです。


そんなわけで名無し様は、これから違う人生を歩んでいただきます。


理解できましたか?


それでは、早速次の人生のところまでひとっとびしちゃいましょう。


え?もしかして、次の人生の世界を知りたいですか?


じゃあ特別に教えちゃいましょう。


名無し様の次の人生の場は。




異世界ですね♪




それでは完璧なゴールを!」






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