始まりの章 3
おっ!畠中じゃないか。
ネコ耳の彼女とデート中ですか?
そう言うお前達こそ、どうしたんだ。
こんな所で、オタクが二人揃って。
あんたに、オタク呼ばわりされるとは思わなかったよ。
まあ、まあ、二人共。
立ち話もなんだし、隣座ってもいいかな彼女?
あっ、はい……
え〜と、自己紹介ね。
おいらは野瀬京太、こいつが中山伸一。
畠中とは、オフ会仲間。
で、ネコ耳の彼女は?
あっ!神楽坂杏奈です。
「「よろしくね。」」
あのぅ‥オフ会って?
えっ?
彼女なのに、畠中から聞いてない?
だぁから、彼女じゃないって!
えっ、えっ、違うの?
そうです‥ただのクラスメイト。
う〜ん、「ただの」って所は引っ掛かるけど‥
まあ、そう言う事。
そうなんだぁ♪
じゃあ、おいらにもチャンスはあるわけだ。
野瀬!なんのチャンスだよ。
そりゃまあ、色々とさ。
それで、ただのクラスメイトのお二人がどうしてまた?
それは、そのぅ……
そうだ!!
コイツらにも、一緒に聞いてもらおう。
えっ♪
なに、なに。なんの話しかな。
ちょっとまあ、特殊って言うか、あれなんだけどさ。
いいよな、杏奈。
あたしは、ちゃんと信じて聞いてくれるなら…
大丈夫!ネコ耳にウソつきはいない。
中山、ホントお前萌えキャラに弱いよな。
そう言う、野瀬も畠中も好きなはずだけどなぁ。
まあ、まあ萌え論争はそれ位で。
ほら杏奈、話してみな。
うん……
あたしには、お兄ちゃんがいるの。
って言っても、今のお父さんの息子であたしとは血は繋がってなくて。
10才年上の28才。
お兄ちゃんが15才で、あたしが5才の時にお母さんとお父さんが結婚して…
それから、お兄ちゃんはず〜っとあたしのお兄ちゃんで。
あのさぁ、ちょっといいかなぁ?
えっ?
ゴメン、野瀬。
とにかく黙って、最後まで聞いてやって。
杏奈、続き話して。
うん。
それで、お兄ちゃんは大学生の時に友達と二人でゲームソフトの会社作って。
なんだか、すごく売れたらしくて…
あたしにも、このネコ耳くれて。
それって、お兄さんからのプレゼントなの?
中山!うるさい。
なのに、今朝起きたらお兄ちゃんがいなくなっていて。
写真もなくて…
携帯のアドレス帳にも無くて。
メールも、それからソフトのケースの名前も無くなってて‥‥‥‥
ううっ‥‥くくっ……
杏奈、ほらティッシュ。
これ使いな。
あ・り・・がと……
つまりは、お兄さんがいなくなっちゃった訳だ。
失踪?それとも、何かの事件に巻き込まれたとかかなぁ?
いや、そう言うのとは違うみたいなんだ。
と、言うと?
杏奈のお兄さんがこの世界にいた痕跡が、なにもなくなったらしい。
僕の記憶からも……
いや、さすがにそれはないんじゃあ。
中山、お前の言いたい事はわかる。
でも、僕の知ってる限り杏奈は、つまらない嘘をつく人間じゃないし…
そのぅ、彼女の頭がおかしくなった訳でもなさそうなんだ。
そりゃそうだ!
ネコ耳は絶対にウソをつかない。
それは、もうわかったから。
じゃあ、どういう事なんだ?
それがわからないから、お前達にも聞いてもらったんだ。