始まりの章 2
ただいまぁ♪
って言っても、誰もいないんだけど。
お父さんはイギリスに単身赴任したままだし、お母さんは全国講演会の真っ最中。
のはず‥よねぇ……?
まあ、それは置いといて先に探さなきゃ。
確かここに………あったぁ!!!
良かったぁ!
ん!?何がって?
ゲームソフトだよ。
お兄ちゃんは、友達と二人でゲームソフトを作る会社をしてたんだ。
詳しくはわからないけど、お兄ちゃんがゲームのストーリー担当で
友達が実際のプログラム担当とか、言ってた。
このソフトが有ったって事は、やっぱりお兄ちゃんはいたって事で…
あれ?ない…
ソフトのケースに書いてあった、お兄ちゃんの名前。
STORY BY TAKESHIって書いてあったはずなのに……
あ〜〜ん、ないよ!
会社の名前は、タイムレスのままなのに。
これが俺のプライドだって言ってた、お兄ちゃんの名前がなくなってるよ。
あれ、電話?
畠中君だ。なんだろ?
お〜い!杏奈!!
何よ?
お前、大丈夫かぁ。
何が?
いや、今朝からなんだか訳わからない事言ってたから。気になってさぁ。
お兄ちゃんが、どうとかこうとか。
だって、いたんだもん。
いや、いるはずなんだもん。
やっぱり、それかよぅ。
信じてくれないなら、もういいよ。
いや、信じるとか信じないとかじゃなくてさ。
僕には理解不能な話しだけど、まあ、その、なんだ……
何よ!?
僕でよければ、話し聞いてやろうかと思ってさ。
ホントに?
ああ。
今、杏奈の家の近くのミスドにいるんだけどさ。
わかった!待ってて、すぐに行くから。
うん、了解。
え〜と、まずは着替えなきゃ。
うわっ!あったよ!!
ネコ耳カチューシャ。
お兄ちゃんのソフト「キャット・アライブ」の初回限定プレゼント。
恥ずかしくて、あたしは着けた事ないんだけど…
とりあえず、持って行こう。
お待たせ〜。
ホント、遅いよお前。
だぁって、出かけるとなると女の子には色々用意があるんだよ。
用意って、そのネコ耳の事かぁ?
お前、私服はそういう系だったの!
これは、違うってば。
ちょっと待て!
それってもしかして、キャット・アライブのプレミアネコ耳なんじゃあ…
ええっ!畠中君知ってるの?
いや、まあ……
見せてよ、それ。
うん…
うわっ、すげえ!!
シリアルナンバー1番だあぁ。
どうして、これを杏奈が持ってるんだあ!?
だって、あのソフトあたしのお兄ちゃんが作ったんだもん。
また、それかよ。
確か、あの会社のソフトはストーリーもプログラムも全部社長が作ったはずだぜ。
お前の言う、お兄ちゃんってタイムレスの社長の事なのか?
社長さんの名前は?
そこまでは知らないけどさ…
なんなら、タイムレスのホームページで調べてやろうか?
うん♪
あった、時任 駈だってよ。
そんな人、知らないし。
ほら、写真もあるぜ。
えっ!見せて。
ああっ!この人なら、会ったことあるよ。
いつ、何処で?
ホントだよ。確かお兄ちゃんの会社のパーティーで、会ったよ。
う〜ん。
話しは、やっぱりそこに戻るか…
だぁって!
よし、わかった。
お前の言うお兄ちゃんの事、全部話してみな。
信じてくれる?
まあ、とりあえず話しを聞いてからだな。
わかった。
その前にさぁ、1つお願いがあるんだけど…
なに?
そのネコ耳、着けてみて。
はあぁ〜!?
い、いゃ‥嫌ならいいけどさ…
わかったよ、そのかわり、ちゃんとあたしの話し聞いてよ。
はい♪お待たせニャン♪
う、うわぁ〜〜〜。
萌えぇ〜♪♪♪
バ〜〜〜カっ。