九段目:プライド
「おっ、水野。早いじゃん。どうしたの?」
音楽室に行くとまだ須田先生しか居なかった。
「練習しようと思って…。」
『どうしたの?』は無いだろ…。
「練習は7時以降からだからな。今日は特別に私が見てあげよっか?」
「えっ!?」
一気に緊張する。
「ほら、やってみて。」
「いきなり!?」
「別にウォームアップも無いだろ?」
「そんなこと…」
そういえばウォームアップを教えてもらってなかった。シンバルにもあるのだろうか…?
とりあえず手首を回してシンバルを持ちあげた。
「じゃあmfで一発叩いてみて。」
「はい。」
深呼吸してふりかぶった。
「ジャーン。」
多分ダメな音だ。
『良い音か分からない時は全部ダメな音だから。良い音はすぐ分かる。』
昨日の舞の名言だ。よく分かんない時はダメって事だ。
「やっぱまだ無理かぁ。水野、やっぱまだ全体練習出なくて良いから。」
「えっ?」
せっかく意気込んで来たのに…。
「そゆこと。じゃあ練習頑張れよ。」
須田はそう言い残し音楽室を出て行った。
透はあっけにとられた。
昨日あんなに真剣に話していたのに。
てか何も教えて無いじゃん。。。
「水野君早いね。おはよ―。」
舞がやってきた。
「…おはよ。」
「どうかした?今日は水野君の初全体だから頑張らなきゃね!」
「望月…さっき須田先生がまだ全体練習出なくて良いって言ってきた。」
「えっ?ホントに?」
「うん。」
「ちょっと須田先生と話してくる。水野君は練習してて。」
舞は音楽室から出て行った。
シンバルを持ち上げる。
『やっぱ良い音鳴らせなかったからかな。』
しかし、1発聞いただけで決めるなんて…。
透は昨日舞に言われた事を思い出しつつシンバルを叩いた。
透が練習していると部員が続々と登校してきた。それと一緒に舞も戻ってきた。
「須田先生何て言ってた?」
「まだ全体に混ぜるのは早いって。」
「そんなの当たり前じゃん!なのに自分で言ったんだぞ?」
「水野君ならもっと出来てると思ったんだって…。」
よく分からないけど…何だか悔しい。
一生懸命やってるのに認められない。
透のプライドが何かを放った。
これにより透の気持ちは本当の意味で少しずつシンバルに向き始める。
この章は後で書き直すかもしれません…。