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夢への階段  作者: 望月愛
3/9

三段目:放課後

「ふぁぁ〜。」


大岡中の教師の中でイチバン若い、遠藤先生と目が合う。


透はとっさに口に手をあてた。


「水野君、イチバン前の席でそんなに大きなあくびしないの!!」


「すみません。」


一応謝るが、若く、背も150センチあるか分からない位の遠藤に怒られても全く気にならない。


体育をやって、給食を食べた後の5時間目。

ポカポカとした心地よい天気。


たとえ前日にたくさん寝たとしても眠くなる。

しかし、透はずっとバスケの事を考えていた。



続けるか、


続けないか。




続けるとしても唯野には行かない事、



慎に伝えなきゃ。



でも、言ったら慎は

「なんで!?」を繰り返すだろう・・・‥…




「水野君!」


隣の席の小野ひかりが小声で透をつついた。



「ん?」



透が気づくとクラス全員立っており、全ての視線が自分に向けられていた。



だいぶ熟睡していたらしい。

慌てて起立した。




「水野君、明日は一番難しいトコ当てるからね。」


遠藤先生が去り際に脅すように言った。



今日は水曜日。


水曜日は職員会議があるため授業は5時間で終わる。


あと、HRと掃除を終えれば3時前に帰れてしまう。



『部活が無いってこういう事なんだな―。』



楽だけど、悲しい。



「HR始めるぞ―。」


担任の宮沢俊幸が入ってきた。

宮沢は数学担当のくせに毎日ジャージでいる。


テニス部の顧問をしているからか、40歳過ぎているのに体育教師並の身体つきをしている。


そんな教師。透にとって宮沢は好きな方の先生だ。


「知ってると思うが、もうすぐ期末テストだな。このテストの出来次第で志望校を考えて欲しい位の大切な試験だ。」


教室の中がざわめく。


「そこで、今から配るプリントに志望校を書いてきて欲しい。自分の志望校と親の志望校と書くところがあるから、ちゃんと親にも聞くように。


期限は金曜日まで。これは9月の個人懇談で使うから、しっかりと考えてこいよ。」



透は回されたプリントをぼんやりと見つめた。



「じゃあ後は掃除をしっかりやるように。先週はサボったヤツが数人居るからな。時間一杯やるように。では終わり。」



『進路かぁ…。しかも親に相談…』


透は椅子をゆっくり上げ、考えこんでいた。



「水野君!!」


今の透より100倍テンションが高い声が耳に入る。


後ろを向くと、望月舞がいた。


「あ。」


思わず口から出た言葉だった。



バスケの事を考え過ぎて望月の事をすっかり忘れていた。



「ね、今日の放課後ヒマ?ちょっとで良いから吹奏楽見にこない?」


望月がくりくりの大きな目で見つめてくる。


「あ…今日は慎と公園でバスケする約束してんだ。」


吹奏楽を見に行くなんて…まっぴらごめんだ。


慎と2人で1on1をやるというだけの約束だが、予定があって良かった。。。


「30分とか…10分で良いから。見るだけだし、おねがいっ!」


舞が見上げてくる。


その目は昔よくCMに出ていたチワワのようだ…。



「いや、約束は守らなきゃだし、てか何回も言ってるけど、俺吹奏楽なんてできないよ。」


「そんな事ないって!水野君なら絶対出来るよ。小さい頃からピアノやってたんだし。」


「ピアノは中学入って辞めたし、もうムリだってば。とにかく、助っ人はやるつもりないから!」


これ以上何を言えば分かって貰えるんだ!?透はイライラしてきた。


「なぁ透―。」


気が付くと慎が透の横に立っていた。


「慎。」


透は救われた気持ちになった。これで望月から逃れられる。



「悪いんだけど今日用事出来ちゃったんだ。バスケ、また明日な。悪いけど先帰るわ。」



「えっ!?慎??」


透は慌てて帰ろうとする慎を止めた。


「そうだ、透放課後ヒマになっちゃっただろ?吹奏楽見に行けば良いじゃん。」


そういう慎の目は笑っていた。


「慎、お前、それが狙いで…」


「じゃあな透。望月サンもバイバイ。」


喋りかけた透を遮って慎は教室を出て行ってしまった。


望月と目が合う。


「…じゃあ…練習見に来れるね。」


望月がゆっくりと、伺うように言った。


逃げ場の無い透は頷くほか無かった。


「でも、掃除終わってからな。俺、先週サボっちゃったしちゃんとやらね―と。」


「サボったのって水野君だったんだ―。」


「あと、慎もだぞ。ってあいつ、また帰りやがった!!」


舞はこの上ない笑顔で笑っていた。




それを見て、透の胸が音をたてた。



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