七十一番槍 天性無欲正直の人
個人的に、明智光秀の評価が上がりました。
そして畠山義続の評価が地に落ちました。
本文とは無関係ですが、「大倉集古館」蔵の伊達政宗の肖像画は左目が閉じてますね。
あれ?失明したのは右目のはず…。
ある年の冬。
この年は、特に寒さが厳しかった。
そう。
寒かったのだが…。
「ハックシュ!うぅ…」
大くしゃみをしている男が1人。
それもその筈。
着ている衣服は非常に薄いシャツ一枚。
足はガクガク震えている。
「うわー!と、殿!どうされました?服を着てください!風邪ひきますよ!」
殿と呼ばれた薄着男。
尼子経久という立派なお殿様。
殿の格好に度肝を抜かれた家臣が心配して服を着るように促したのだが…。
「服?持ってない…。あげちゃった!テへ!」
鼻水垂らしながら経久が言った。
「いい歳したオッサンがテへ!とか言っても人気なんか出ません!何であげちゃったんですか!」
「だってぇ~…。この前、『その服かっこいいですね~!』って言われたから…」
「言われたらあげちゃうの!?」
仕方なく自分の上着を脱いで経久に渡した家臣。
何気なく庭を見たら、立派な松の木が生えていた。
「あっ!殿!あの松の木素晴らしいですね!風情の塊ですよ!」
家臣が言った。
すると経久は、家来を二人呼び寄せた。
「あの松の木をこの者にあげたいから抜いて!」
そう命令した。
ええぇ~!?
流石にこれは予想外だった。
「いや、あの…えっと…」
今更要らないとは言えない雰囲気。
「すいませ~ん!抜けないっす!」
「じゃあ細かく切ってあげて!」
「了解っす!」
ああ…。
どうせ貰うならそのままが良かった。
家臣の目には輝くものがあった。
その一件以来、経久の愛用品を褒めるものは皆無となった。
尼子経久。
極端な無欲。
褒められた品は全てあげちゃいます。
「自分は褒めるに値しないようなもので充分です。良い品はあげます」
まさか庭の松の木まであげちゃうとは…。
しかも切られたらただの木材…。
いや要らないから!
褒めた品は断り辛いですよね…。
服無いのはどうかと思いますが…。
因みに、史実だとシャツじゃなくて小袖着てたみたいです。
五円玉様から挿し絵いただきました。
近日中に公開します!