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歴史絵巻第二十一幕 Let's Go城巡り〜大阪以外の大坂城?〜

姫路在住期間に行った城をすこーしずつ紹介していけたらと思います。


人生で1番行った城は姫路城となりました。

多分行った回数でこれ以上の城は出てこないでしょう。

嫁が姫路城の改札の仕事やってたので、休みの日は迎えに行ったりしておりました。


関西方面の城もかなり見てきたので、話のストックはたくさんあります!

のんびりお待ちいただけると嬉しいです。

「今度、山陽の方に行ってきます!」


部活中の雑談タイム、そう切り出したのは1年生の尼子紗代だった。


「おお!いいなーいいなー!どこどこ!?山陽のどの辺り!?」


「岡山の瀬戸内海の方。親戚がそっちにいるの」

食い気味の焙烙明日香に対し、紗代は笑顔で答える。


「へぇー、いいな!楽しそうだ!」

部長、焙烙晴美が相槌を挟む。


「で、ですね。時間あると思うんでどこかオススメの歴史スポットあればと思いまして」


「ん〜、そうだな。瀬戸内海でも兵庫なら淡路島にある洲本城が、日本最古の再建天守なんだが…いや…」


そこまで言って少し考える晴美。


そして出てきた場所。それは…。


「大阪城」


「…へ?」


「お姉、話聞いてた?紗代ちんが行くのは岡山だよ?大阪じゃないよ?結構遠いよ!」


晴美から出た予想外の言葉に、紗代はわけがわからず声が続かず、明日香は憤る。


「ああ、すまん。言葉が足りなかったな。紗代、離島…小豆島とか行けるか?」


「あ、はい。すぐ近くからフェリーが出てるので、昔観光で行ったことあります。今回も行けるかと思います」


「おっ!なら観光ついでにもなるし、小豆島がオオスメかな」


「確かに観光はできますけど…できれば史跡とか城とかそういうのに行きたいんです」


「うん。実はな、大阪城の石垣って瀬戸内海のいろんな島から切り出して持ってきたものなんだ。小豆島もその1つ。しかも、切り出して運ばれなかった石が残ってるらしい」


「大阪城の石垣…!!面白そうですね!行ってみます!」


目を輝かせる紗代。

晴美が行ってきたら感想よろしく!と伝えた所で部活終了を告げるチャイムが鳴る。


これで本日は解散となった。



数日後、岡山。

新岡山港に紗代の姿があった。

ここから約1時間の船旅で、小豆島へと上陸できる。


からかい上手なアニメの聖地となった縁から、コラボフェリーとでも言うべき外観の船に乗り込む。


小豆島は香川県に属する島故か、船内でうどんが買えるためそれを食べながら船旅を楽しむ。


窓際に腰掛けた紗代は、既に何度も読み込んだ、お気に入りのガイドブックへと目を通す。


行く場所は既に目星をつけてある。

世界一狭い海峡こと、土渕海峡。

醤油蔵巡りなんてのも面白そう。


期待に胸を膨らませ、紗代はいつのまにか着港していた船を降り、小豆島へと踏み出すのであった。



「さて…と」

ちょっとした一人旅。

親戚のみんなは優しいけれど、どうしても心の何処かで気を遣う。


そのちょっとした疲れを振り払うように、私はわざとらしく伸びをする。


スマホで地図を確認し、レンタサイクルを借りてきた。


「よしっ!」


高さを調節し、ペダルに体重をかける。

まず目指すはエンジェルロード!


小豆島のエンジェルロードは、干潮になると出現する砂の道。

特定の時間にだけ現れる美しい景色の中を歩き、今だけ行ける島に渡る。


挿絵(By みてみん)



「さて、次は…」


わざとらしく声に出し、次の目的地をスマホで確認する。


土渕海峡。

世界一狭い海峡として、ギネス記録にも載っているらしい。

陸に挟まれた海のうち、定期的に船が通る場所を海峡と呼ぶらしい。


挿絵(By みてみん)


近くの役場で土渕海峡の横断記念が貰えるというので向かってみるのも良いかもしれない。


私はこういう気の思うままに行動できる一人旅は結構好きだったりする。


役場に入ろうとすると、何やら様子がおかしい事に気付いた。


「あれ、移転?」


入口に張り紙がされており、中が暗い。

どうやら別の場所に移転したようだ。


移転先もすぐ近くのようで一安心。

…と、同時に目に入った物がある。


挿絵(By みてみん)


「あ!これ…!」


つい声が出てしまったそれは、大坂城の残念石。

旧役場前に置かれていたのだ。


小豆島の残念石が実際に見れたというのは、少し嬉しい。

実在したという安心感がある。


改めて役場で海峡横断証明書を貰い、近くの醤油蔵を見学。


そしてその後はいよいよ大坂城の残念石を観るため、道の駅へと向かう。


その名も、道の駅大坂城残石記念公園!

そのまんまなネーミング。


ここに目的の残念石がある。

道の駅横にずらっと並べられた残念石たち。


挿絵(By みてみん)


何処となくシュールな光景に感じてしまう。


道の駅に併設されている無料の資料館には当時の石の削り出し方や使った道具等が展示されている。


「あー、そっか。この残念石たちは徳川時代に再建された時に切り出された石なのね」


展示を見ながら呟く独り言。


大坂城と言えば勝手に豊臣秀吉のイメージだった。


この石たちはその時よりも少しだけ時代が下ってからの物。

そういえば豊臣時代の石垣が発見されて、大坂城で展示が始まったんだっけ。

あれもいつか見てみたいな。


雑念が溢れてきた所で展示物に目を戻す。


瀬戸内海の地図の至る所に、大坂城の石を切り出した採石場跡がマークしてある。


全部行ってみたい!という気持ちと、これ全部は無理だなぁという諦めが同時に湧いてきた。


瀬戸内海は石の産地としてかなり優秀だったらしく、至るところから運び込まれていたようだ。


海運で運べることも強みのようで、それを示すように筏のうえに石が載せられている展示もあった。


瀬戸内海が産地になる前は、六甲辺りから運んでいたらしい。


小豆島の石切り場は、当時島を治めていた小堀遠州の許可を取った黒田藩が開拓したとか。


「そう言えば、たつの市の室津にある御番所跡公園にも残念石とかあった気がする。目の前が港で、近くに牡蠣の直売所とかあるところ」


昔親戚の集まりでこっちに来たとき、釣りをしようとおじさんに連れて行かれ、その時に巨石を見た記憶が蘇った。


挿絵(By みてみん)


あれは確か、運搬中に落っことした石だったか。


石を落とすというのは、落ちるすなわち落城に繋がり縁起が悪いという受験生みたいな言葉遊びから縁起が悪いとされ、落とした石は石垣として使えなくなったのだとか。


資料館はさほど大きくはないので、大した時間はかからず見終わった。


「さて、次行きますか!」


資料館を出て、自転車のペダルに力を込めて走り出す。


次の目的地は実際に石を取っていた現場。


天狗岩丁場!


ここは数多くの残念石が残されているらしく、ネットで見たときからワクワクが止まらなかった。


自然と自転車を漕ぐ脚も軽くなる。


暫く走ると道沿いに採石場跡を示す石碑が出てくる。


ここに自転車を停めて、徒歩でしか行けない見学通路へと入っていく。


少し歩くと、それは突然現れた。


挿絵(By みてみん)


「あれ!?この石、楔の跡がある!」


大きな石にギザギザの加工痕がある。

いろんな城を巡って、各地で見た石垣の石に残る加工痕と同じもの。


更に進んでいくと、突然現れる巨石。


一部が大きく切り取られているがこれこそが…。


挿絵(By みてみん)


「天狗岩…」


見上げながら自然と声が出る。


あちこちに転がるのは無数の残念石。


挿絵(By みてみん)


その隙間を縫うように歩いて斜面を登る。


「ほんとにここが採石場だったんだ」


鬱蒼とした森の中、明らかに異質な加工痕の残る石たちを見下ろしてみる。


「なんだか凄いなぁ…」


思わず昔の人々に思いを馳せてしまう。


この静かな森の中、楔の跡を撫でてみる。


なんだか、凄く落ち着く。

自転車で高低差のある道を走ってきて、あがっていた息も今や落ち着きを取り戻している。


一周ぐるっと見学できるように道が整えられているけど、それでも山道は足元が滑る。


注意しながらゆっくりと斜面を降り、残石群を後にした。


フェリーに乗船し、親戚の家に帰宅して大坂城の石の話をおじさんにしてみると、新たな情報が飛び込んできた。


「大坂城の石垣かぁ。マニアックな物を見るねぇ。確か前島にもそんなのあったなぁ。むかーし魚釣りに行ったの覚えてない?」


全く覚えていない紗代だったが、そんな話をされたら興味が湧く。


「前島?近いの?」


「うん。すぐ近くだよ。何なら島も本土から目の前。フェリーで5分くらい。あー、でも行くならちゃんと飲みものとか買ってけ?自販機すら無いようなところだから。あとイノシシに気を付けてな」


「イノシシ?島に?」


「うん。小豆島でも増えてるし、前島にもいるよ。あいつら泳げるから海渡って来るんだわ」


イノシシは泳げるという知識を得た。


「じゃあ明日は前島行ってみるよ」


こうして紗代の明日の予定が決まった。


翌日。


牛窓港で1時間に1本のフェリーを待つ。


目の前に島は見えてるのに、フェリーの本数が多くないのがもどかしい。


おじさんが言っていたように、島の堤防では沢山の人が釣り糸を垂らしているようだ。


日本のエーゲ海とも評され、小豆島とも並ぶオリーブの産地、牛窓。

そんなポスターが貼られた待合室でのんびりと船を待つ。


待合室にあった「宇喜多直家・秀家を大河ドラマに!」に署名しておいた。

直家は無理じゃないかな…?

どう頑張っても良い人として描けないような…。


暫くするとフェリーが入港してきたので、乗船。


岡山に伝わる伝説の妖怪、牛鬼がこの地で息絶え、その胴体が前島になったという伝説があるらしい。


…前島について調べていたらあっという間に到着。


流石はフェリーで5分の離島。

有人島なのに橋がないのが不思議に感じる。


フェリーを降りて少し自転車を走らせると、すぐに現れるのは一面の畑。


別名「緑島」とも呼ばれるほど、緑にあふれる島らしい。

特にキャベツや白菜の生産が盛ん。


「よし、行こう!」


気合を入れるためにわざと声を出す。


民家がまばらにある道を走ると、ハイキングコースの入り口が現れた。


展望台へと続く道。

この道の先にお目当ての場所がある。


誰もいない中で山登りのような道を歩くのは少々怖いけど、それよりも好奇心が勝った。


歩き始めてすぐ、土道の端に掘り返したような跡があることに気付く。


「うわぁ…イノシシの痕跡だ…。しかもまだ新しいし何度もここを通ってるみたい」


山城を巡ったりする時も、野生動物との遭遇は怖い。


今もすぐそばにイノシシがいるのかも知れない。


そう思うとゾクゾクする。

せめてもの対策としてスマホから音楽を流して進むことにした。


さて、暫く歩いて展望台近くまで来ると、楔を打ち込まれた跡のある石がちらほらと目に付くようになる。


挿絵(By みてみん)


採石場と思われる場所の手前には古い井戸のような遺構も見受けられた。


挿絵(By みてみん)


因みに展望台は老朽化のため閉鎖されており登れなかった。


残石はというと、小豆島が凄かったぶんあんまりインパクトが無いな、といった印象。


わずかに残る石を写真に収め、下山する。


その時だった。


ダダダダと大きな音を立てて目の前を走り去った大きな黒い影。


「キャッ!!イノシシ!!」


出会ってしまった。

心臓がバクバク音を立てる。


そこからは走って下山し、急いで自転車に乗って安全な場所まで走ったのだった。


「はぁはぁはぁ…。イノシシいた…。怖かった…」


声に出すと頭が整理される気がした。


「デカかったなぁ…」


そう呟きながらも、スマホで検索するのはイノシシの避け方…ではなく本命の場所。


展望台を抜けてもう少し行った場所にある、石切り場と残石群。


少し恐怖もあるけど、ここまで来て引き返したくない。

そう思い自転車を走らせる。


ハイキングコースの終点まで車が通れる道があるので、そこを走っていく。


そうしてたどり着いた目的の場所。


挿絵(By みてみん)


「おぉ!」


思わず声が漏れる。


残石群が残るエリアに入ってすぐに現れたのは母石と思われる巨石。


挿絵(By みてみん)


この石を切り出して石垣としたのだろう。


石を割るためにできた矢穴跡がくっきりと残っている。


母石の先に進むと、切り出した石がたくさん転がっている。


挿絵(By みてみん)


こんなに沢山の石を切り出したのに、使わなくなったとか大きさが不適合とかで運ばれず残されていくのは、確かに残念石と呼ばれるのにふさわしいと思ったりする。


切り出された石をよく見ると、刻印が刻まれていた。


挿絵(By みてみん)


丸の両側を丸くくり抜いたような刻印は…松江藩の刻印だったっけ?


うろ覚えながらも刻印をカメラに収めた。


森の中に開けた空間があり、そこに残念石が転がっている。


昔の人の苦労が目に浮かぶのであった。


残念石に満足し、帰るためにフェリー乗り場まで自転車を走らせている時、ふと道路沿いの畑が気になった。


「なにこれ?カキ殻…?」


畑に大量のカキ殻が埋め込まれていたのだ。


挿絵(By みてみん)


粉末にして撒くなら土壌改良の効果がありそうだが、そのまま、それも大量に埋め込まれている。


真っ白くなった畑を見ると面白く思えてくる。


見慣れぬ光景に、岡山の名産品の活かし方を見た気がした。


こうして紗代の残念石巡りの離島旅は終わった。


翌週の月曜日。

早速部活で見てきたものを報告する。

机の上にはお土産のきび団子が広げられている。


「おぉー!ここな!凄い数の残念石が残ってるらしいな!行ってみたい所だったから羨ましいよ」


パソコン画面に表示された天狗岩丁場の写真を見ながら、晴美はそんなことを口にする。


「凄い良かったですよ!石丁場ってすぐ分かる状態で残ってるんです!」


興奮気味に答える紗代。


「いいなぁ。私も遠くに行きたいなぁ」


きびだんごを頬張りながら羨ましそうな目で写真を眺める明日香。


「あの、これ、どうやって石を割るんです?」


「ああ、それはね」


矢穴の開いた岩の写真たちを見ながら、陽菜が疑問を持つ。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


紗代が資料館で見てきた内容を説明する。


「まずミノで岩に切り取り線を付ける。それがさっき写真に出てきた矢穴ってやつね。そしたらその穴に矢と呼ばれるV字の楔を入れて、ハンマーで叩く」


紗代はハンマーを振り下ろすような仕草をする。


「そうすると、石が左右にパカっと割れて切り出せる…って事らしい。切り取った石は山の斜面を伝って海まで下ろして、筏に乗せる」


「あー!なるほど!だから瀬戸内海なんだ!」


暫く大人しく聞いていた乙葉が声を上げた。


「海運!大坂城と言えば木津川口の戦いとかあったみたいに、海からの輸送が便利な場所だったから!」


「大正解です!」


声が弾む乙葉に、紗代が笑って答える。


ここで部活の終了を告げるチャイムが鳴った。


「んー…私たちもどっか行くか」


「おお!素晴らしき提案ですな!何処行く何処行くー?」


晴美の提案に、おどけて答える明日香。


「そうだなぁ。私たちも少し足を伸ばして関西方面行ってみるか!」


「いいねーいいねー!大坂城とか?」


「大坂城は前に行ったからさらに先の兵庫の方まで行ってみるか!」


「おおー!素晴らだねぇ!姫路城!?尼崎城!?」


最近の明日香は姉の影響か部活の影響か、城に詳しくなっている。


「まぁ、考えておこう。姫路城は何度行ってもいいしな!」


「わーい!楽しみだ!」


紗代の次は焙烙姉妹の旅が始まる。

紗代の一人旅パートは一人称で書いてみようかと思ったんですけど、切り替えるのも難しいものですね…。


さて、今回は城ではなく大坂城の石切り場巡りでした。


実は天狗岩の場所がわからなくて彷徨ってたら、気付いたら日が落ちてきて…。

走って見学して光量ギリギリの中で写真撮影してました。


普通に小豆島観光して、ついでに石切り場も見たって感じの回り方だったので、行ったのが遅くなったってのもあります。


前島のイノシシエピソードは実話です。

ほんとビビりました…。

山城行くときは野生動物とか気を付けてるんですが、まさか島で遭遇するとは…。

ハイキングコース入った瞬間、イノシシの痕跡が盛りだくさんだったので警戒してたんですけどね。


さて、瀬戸内海の石切り場は数えるときりがないほど沢山あります。

姫路からも見えるハゲた島、家島なんかも産地だったらしいです。


大坂城に行くと、どの石がどこ産かわかるようにした展示があります。

秀頼自刃の地の向かい側辺りです。

その中に瀬戸内海産のもありますね。


因みに大坂城の残念石は色んなところにありまして、現在では民家の塀になってたり、道頓堀を作った安井道頓の功績を讃える石碑になってたり、様々な再利用がされています。


挿絵(By みてみん)


さらっと流したのですが、私はお醤油に拘りがあるので小豆島の醤油蔵巡りとか凄い楽しかったですよ!


さて、次回も姫路在住時代に行った城を紹介したいと思います。

大体が山城なんですけどね。


どこが出てくるか、お楽しみにしておいてください!

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