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五百四十六番槍 殿を逃がせ!

執筆遅れました…。

埼玉に戻ることになりまして、少々バタついております。

姫路、結構気に入ってたんだけどなぁ…。

1573年。

この年甲斐の武田信玄は上洛を目指し、軍を西へと進めていた。


進軍経路上にある浜松城を守る徳川家康は、信玄との決戦に備えていたのだが…。


「浜松など無視して織田を叩くぞ!」


信玄はなんと家康が籠もる浜松城をスルー。

目の前を通り過ぎていったのだった。


「はぁ!?俺はアウトオブ眼中ってか!?許さねぇ…!許さねぇぞ信玄!!追っかけてその首天高くかかげてやる!!」


信玄のスルーに家康は激怒。

信玄を追いかけていったのだった。


しかし追いかけていった家康を待っていたのは、完璧な統制で素早く陣形を整え、既に臨戦態勢の武田信玄だった。


「おのれ信玄!誘い込みやがったな!だが、負けるわけにはいかねぇ!皆のもの!鶴翼の陣だ!」


「ほう、鶴翼の陣か。こちらは魚鱗の陣よ。誤ったな家康め」


家康が取った鶴翼の陣は、大将を中心にV字に構える陣形。

両側からの挟撃が得意な反面、中央の防御が薄く、人数有利な場合に効果が大きい攻撃特化の陣形。


対して信玄の魚鱗の陣は、三角形に陣形を作る。

中央が厚い陣形であり、攻防どちらもこなせる陣形。


この両者がぶつかることになった。

俗に言う三方ヶ原の戦いである。


この戦いは浜松城から程近い台地で行われたため、城の櫓から戦況が見て取れた。


「ヤバいヤバい!殿がピンチだ!俺等も出るぞ!」


浜松城から戦況を観察し、家康のピンチを察して駆けつけたのは夏目吉信。


徳川家でも忠臣と知られる家臣である。


「殿!!ご退却を!!急いで!」


「吉信か!浜松城の留守を守れと言ったろうに!俺は退かぬぞ!ここで退いたら武士の名折れぞ!せめて突撃して死んでやる!」


家康は吉信の進言を却下。

戦って散る選択をする。


「そういうと思ってましたよ!こっちもその覚悟で来てるんです!」


そういうと、吉信は家康が乗る馬の向きを強引に向け、信玄に背を向けるよう反転させた。


「吉信!?お前何して!こんなことして、あとでどうなるかわかってるんだろうな!」


「後で…か。俺はかつて一向一揆に加担して殿に刃を向けました。その時、殿は俺を許してくれた。再び家臣として迎えてくれました。あの時、俺はもう死んでいたんです!だからこの命、殿のために使えるならこれ以上ない喜びなんです!だから…!!」


吉信は家康の馬に向かって刀を振り下ろした。


…峰打ちだった。


「吉信…」


峰打ちを合図に戦場とは逆方向、城方面に走り出す馬。


振り返る家康の目に映った吉信の姿。


「我こそは徳川家康!大将首はここにあり!さぁ武田の猛者どもよ!この首取ってみやがれ!わりぃな、この家康、ちょっとやそっとじゃ倒れんぞ!!」


それは仲間25人を引き連れ、自らを家康と称して十文字槍をかかげ馬に乗り武田軍に突撃を仕掛ける吉信だった。


「吉信ーーーーー!!!!」


「殿…!生きてください!殿さえいれば、徳川は倒れませぬ!お仕えできて、幸せでございました…!!」


忠臣、夏目吉信は三方ヶ原で露と消えた。


吉信の活躍もあり、命かながら城へ帰った家康は、法蔵寺に吉信の墓を建てた。


墓には「信誉徹忠居士」と刻まれ、その忠義を未来へと伝えている。

夏目吉信の逸話でした。

「どうする家康」の配信が始まったので今更ながら見始めまして、戦国ファンではない嫁の感想が新鮮で面白いです。

今回はその繋がりて夏目吉信をチョイスしてみました。


家康に仕える忠義の武将。

少々強引ながら家康を逃がし、自ら身代わりとなりました。

いつぞやの昌幸ロスとまではいきませんでしたが、グッとくる名シーンだったかと思います。


歴史好きな方なら本文最後の方の「命かながら城へ帰った」のところ、何があったかご存知かと思います。


今回は感動的な話で終わらせたかったのでその辺省きました。

はい、無銭飲食と脱糞です。


逸話ストックも増えてきましたので、のんびりかける時に書いていきます!


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