五百三十三番槍 異見会
この度、北海道を出て関東に戻りました。
近所に城跡も沢山ありまして、これからが楽しみです。(「処刑場跡」なる物騒な旧跡もありますが)
先日また福岡の方に遊びに行ってきました。
いくつか城を見てきたので近々書きます!
今回久しぶりに酷い目にあったのでその辺も含めてお楽しみに!
「長政!お前もそろそろ家督を継ぐときだ。そこで、今後は異見会を定期的…そうだな、月一回開きたいと思う!」
黒田官兵衛の話に戸惑うのは、息子の長政。
「意見会ではなく、異見会?どんなことをするのですか父上?」
息子からの問に、官兵衛はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに説明を始めた。
「いいか?上に立つものは部下からの不満を一心に聞いて、改善していかなければならないものだ。そこで、様々な者を招いて身分を忘れて対等な立場で話を聞くんだ」
「ふむぅ…。それは確かによい考えだと思いますが…。皆全て話してくれるでしょうか?」
「案ずるな、そこでルールを設けることにする。まず一つは今言ったように身分を忘れること。そして、絶対に怒らないこと」
「なるほど!やりましょう!」
こうして異見会は始まった。
長政は家老や下級武士まで様々な家臣を呼び寄せた。
「では異見会を行う!今日集まってもらったのは他でもない、皆から家中をより良くするために積極的な意見を出していただき…」
「わかったわかった!そういうのいいから!皆集まった理由とか知ってるから進めてくれ」
司会を行おうとする長政を、官兵衛が遮った。
するとすかさず家臣から意見が出た。
「官兵衛様のそういうところですよ。今長政様が話してるんだから。人の話は最後まで聞いてください。いつも『そのことはわかってる』って遮っちゃうじゃないですか」
「お、おう…。すまぬ…」
さらに議論は進む。
「長政様も!戦の時あんまり突っ走らないでくださいよ!こっちが気が気じゃないんですから!」
家臣から戦のスタイルを否定された長政は、内心で腹を立てていた。
長政は顔に出やすいタイプだった。
すると、下級の家臣がこれを見抜いた。
「いやいや長政様ぁ?これは一体どういうことですかな?拙者には長政様が怒っているように見えますぞぉ?(煽り)」
煽る家臣。
「いやいや、馬鹿なことを申すな。我が心中に怒りなど少しも無いぞ」
長政はそう言って笑って見せたのだった。
この異見会はその後も行われ、明治の世になっても黒田家の風習として残り続けたのだった。
黒田家の異見会の逸話でした。
良い経営陣ですよ。現場の意見を聞くなんて!
「人の話は最後まで聞け」と官兵衛が怒られたのは史実のようですが、何言ったらそんな意見を言われたのかは脚色してます。
同じように長政がこの会で腹を立てて見抜かれ誤魔化したのは史実ですが、何を咎められたのかは脚色してます。
因みにこの会は官兵衛が始めたのか長政が始めたのかはどうもはっきりしませんでした。
しかし明治の世まで黒田家が残った理由の一つに、この会があるんではないかと思います。
カースト下位層の不満が溜まるとどうなるか…歴史好きな方なら嫌と言うほど例を挙げられると思います。
ガス抜きという意味で有意義だったと思います。