四百六十九番槍 川中島の一騎討ち
乙葉
「今回のサブタイトル、詐欺ですね」
晴美
「信玄も謙信も出てこないもんな」
紗代
「それだけならまぁ…。山本勘介とか、川中島の戦いにはいろいろとありますから」
ひなた
「で、でも…今回は…」
晴美
「川中島の戦いが舞台ですらない!」
乙葉
「誰の逸話かは本編を見てください!」
乙葉
「自然な導入!完璧でしたね!」
紗代
「完璧…でしたか…?」
「いやぁ~!俺もいつか武功をあげたいなぁー!鹿介を倒せば俺の名も広まるってもんでしょ!」
そう言うのは、品川大善。
毛利の家臣で武勇に優れた彼は、敵国の尼子家の家臣であり武勇に優れ「麒麟児」とも歌われる山中鹿介をライバル視していた。
「鹿介を討つ!」
日頃からそう言っていた彼は、自らの名をたらの木狼介と改める。
「鹿も麒麟も、狼の前では子犬同然よ!これで勝てる!」
こうして迎えたのが、月山富田城の戦い。
前日の夜、当の鹿介は三日月に願った。
「願わくば、我に七難八苦を与えたまえ。これより30日の間に、武功を挙げられますように」
戦が始まると、狼介は敵軍の中に鹿介を見つけた。
「貴殿は山中鹿介殿とお見受けいたす!我はたらの木狼介。貴殿に一騎討ちを申し込みたい!」
「狼…よかろう」
鹿介はこれを承諾した。
「して、場所は?」
「富田川の中州でいかがか?」
「承知した」
こうして、一騎討ちが行われることとなった。
両軍は川を挟んで向かい合い、この二人の真剣勝負を見守った。
まず先に川へ入ったのは鹿介。
狼介は鹿介が川を半分ほど渡ったころに後を追った。
ここで狼介が先手をうつ。
「はっ!先手必勝油断大敵!喰らえ!」
川を渡りながら矢を構えたのだ。
これには尼子軍は激怒。
尼子十勇士の一人、秋上宗信が叫ぶ。
「一騎討ちで飛び道具など臆病で卑怯な者がすることだ!正々堂々名乗りを上げて、太刀で戦え!」
しかし、狼介は無視。
狙いを定めはじめた。
「あの野郎!正々堂々戦えと言ってるだろうが!」
そう言うと、宗信は雁股の矢と呼ばれる、先が二股に分かれていてその内側が刃となっている大きな矢を放ち、狼介の持つ弓の弦を切った。
神業である。
「何すんだてめー!こうなったら刀で勝負!」
狼介は矢を投げ捨て、中州に上がると刀を抜いた。
「もらった!」
刀を構えて鹿介に駆け寄る狼介。
そして、振り下ろされた刀は見事に鹿介を捕らえる…ことはなく、防がれた。
抜刀した鹿介は、見事一撃を抑えたのである。
「へっ!さすがは麒麟児鹿介!相手にとって不足は無い!」
「そりゃ光栄だね!だが、いつまで着いてこれるかな!」
この二人、わかりやすく言えば狼介はパワータイプ、鹿介はパワーこそ狼介に劣るがその分柔軟に戦えるバランスタイプと言ったところだろうか。
2時間近く行われた太刀による一騎討ちは、とうとう決着がつかなかった。
「はぁはぁ…埒があかねぇ…。どうだ?ここは一つ、取っ組み合いといこうじゃねぇか!」
「…よかろう」
狼介の提案により、両者太刀を捨てての取っ組み合いになった。
こうなればパワーで勝る狼介は有利。
自分の得意な土俵で戦うことができるのである。
「この勝負貰った!」
鹿介に襲いかかった狼介は、そのまま圧倒的な力で馬乗りになり、マウントポジションを取った。
「終わりだ!」
短刀を抜き、鹿介に突き刺そうと構えた狼介。
「ああ、終わりだな!」
鹿介がそう叫んだ瞬間に、勝負は動いた。
「ぐはっ!!て、てめぇ…」
鹿介は、短刀で狼介の太ももを2回刺したのだ。
「わざわざそちらから刺しやすい状況を作ってくれるとはね。この勝負、貰った!」
足に力が入らなくなった狼介は、あっけないものだった。
「どうだ!石見から出た狼を、出雲の鹿が討ち取った!タラの木は好物でね!我に続け!」
鹿介がそう叫ぶと、尼子軍は勝ち鬨をあげた。
「ぐぐぐ…味方が目の前で討たれたのに退けるか!鹿介を討ち取れ!」
毛利軍は狼介の仇を取ろうと突撃を開始した。
「怯むな!押し返すのだ!」
鹿介はそのまま指揮を執り続けた。
結果、自分も3発矢を受けたが、毛利軍はついに攻略を諦め撤退したのであった。
サブタイトル詐欺ともいえる山中鹿介の逸話でした。
一騎討ち抜きにして鹿介は語れません!
中でも一番有名なのが今回のお話ではないでしょうか?
名前まで変えて挑んだ割には卑怯な手に出る狼介とか、もうお前が最強なんじゃないかとすら思う宗信とか、色々面白い一騎討ちですね。
因みに、なんかこの戦いの詳細は書物によってちょっとずつ違いがあるらしいです。
大筋では共通ですが、尼子側と毛利側では書き方が違いますし、ものによっては鹿介が脛を負傷した記述があったりもします。
調べるとなかなか面白いですよ!
因みに、「川中島」は中州って意味です。
べ、別にタイトル詐欺じゃないですよ…?
ウィキペディアも川中島って言ってますし。