歴史絵巻第十七幕 草津良いとこ一度はおいで
明けましておめでとうございます(もう2月16日ですが)
いやぁ、親が入院したり卒論があったり発表があったりと忙しかったんですよ?(言い訳にしか聞こえないやつ)
さてさて、今更ながら新年一発目!歴史絵巻からスタートです!(これ書くのも2年ぶりという驚きの真実)
でもその前にですね、毎年恒例げどーさんからの新年イラストをいただきましたので、差分も含めて公開です!
あけおめ乙葉です。
次はロゴとか入れてもらったバージョンです。
げどー先生!ありがとうございます!
あと、新年からだいぶ遅刻してすいませんでした。
こんな感じで今年もよろしくお願いいたします。
…就職先北海道なんですが、城巡りがシャクシャインか函館戦争か蠣崎家に限られるという非常に厳しい状態になりそうです。
それでもよければ…ことしもよろしくお願いいたします。(まだストックはアルヨ!)
「温泉に行こう!ね!ね?」
「あ!それいいかも!」
歴研メンバー1年生、焙烙明日香の提案に賛成を唱えるのは2年生の村上乙葉。
「温泉かぁ…。悪くないな」
明日香の姉であり、歴研部長の焙烙晴美もこれに乗る。
「この辺で有名な所だと…草津温泉ですかね」
話が出るなりすぐに調べてくれるエリート1年生は、尼子紗代。
「草津か。いいかもな!じゃあ草津温泉に行こう!」
こうして、さらっと決まった草津行き。
都合のついた4人での温泉旅となった。
集合は高崎駅。
ここから吾妻線で終点まで向かう。
オレンジと緑の古めかしい車両が、ローカルな路線によく似合う。
4人は高崎駅でだるま弁当を買い、ボックスシートに腰掛けた。
そして、直ぐにだるま弁当を開くのは明日香。
「おー!美味しそう」という声を漏らす。
赤いだるま型の容器を開けると、お弁当の中が露になる。
炊き込みごはんにこんにゃく、椎茸の煮物。
ゴボウにお肉など、海のない群馬県の特産品を良い意味で詰め込んでいる。
明日香につられ、他3人もだるまを開ける。
「いっただっきまーす!」
しばし一同は駅弁に舌鼓を打つのであった。
列車は進み郷原駅。
乙葉が車窓を眺めていて気付いた。
「あ!真田丸!」
進行方向左手の車窓、駅前の道沿いに、六文銭の家紋と『真田丸』の大河ドラマタイトルと、「真田家ゆかりの地 真田道」と書かれた赤い旗が何本もたてられていた。
「この辺は真田道が通ってた場所なんですよ」
「真田道…?」
紗代から発せられた聞きなれない単語に、頭にハテナを浮かべる明日香。
「真田道って言うのは、戦国の世よりも前からあって今でも使われている古い道です。山道みたいになっているところもありますが、当時は真田の行軍ルートとして重要な役割を持っていました」
そういうなり、今度は進行方向逆側を指差した紗代。
「ほら、あの山を見てください。凄い岩がある山です」
紗代が指差した法をみると、確かに断崖絶壁の崖を持つ山が見える。
「実はあれ、岩櫃城っていう城なんです」
「あー、あれが!」
「ん?乙葉知ってるのか?」
それまで黙って紗代の説明を聞いていた晴美が聞いた。
因みに、妹の方はもう寝ている。
何とも切り返しの早いこと。
「昨日丁度大河ドラマで岩櫃城が出てきたんですよ。勝頼を岩櫃城に呼ぼうとして…」
「来なかったやつね。やってたね」
「ここだったんですね」
改めて、その岩肌を見ると、登城するにはある程度の覚悟が必要な城であることが容易に想像できる。
「行くなら登山かぁ…」
乙葉は誰にも聞こえないようにぼそっと呟くのであった。
さて、そのまま電車は定刻通り終点の長野原草津口駅に到着した。
長野原とついてはいるが、草津は群馬県である。
何県にあるのかよく分からない駅名になっている。
ここからバスで30分かけて、いわゆる草津の温泉街に向かう。
時期は1月の終わり。
暖冬だと騒がれていた二週間前が嘘のように雪が降ったのが一週間前。
この辺はスキー場もあり、雪が多く降ることが伺える。
温泉街に到着することには、道路わきには雪が積もっていた。
「着いたー!」
明日香が大はしゃぎでバスから降りる。
「どうします?」
「とりあえず、湯畑に行きましょう」
紗代の提案で草津温泉の中心、湯畑へと向かうことになった。
バス停からはそう遠くない場所に、それはある。
「おー!硫黄のにおいだー!」
やけにテンションの高い明日香。
それと対照的に、落ち着いて周りを眺める紗代。
紗代が気にしているのは、湯畑の周りにある柵。
この策には、草津に足を運んだと言われている偉人の名前が彫ってあり、意外な著名人もあって驚かされる。
「えーと、年代的にはこの辺かな…?あった」
紗代が見つけたそれは…。
豊臣秀次、大谷吉継、前田利家と3人の戦国武将の名が刻まれた柵であった。
「戦国時代、この草津は傷や病気の治療に効果的な温泉として人が押し寄せたことがあってな。近代の話では、医者も治すことができなかったハンセン病の患者が最期の望みとしてここに来てたって話だから、この強酸性のお湯はよっぽどなんだろう」
「なるほど…。ハンセン病ってことは…」
「うん。大谷吉継もその一人だ」
「ここに名前が無いですが、他にも来てる武将はいますよ。丹羽長秀とか堀秀政なんかが来てますね。武田家滅亡祝いには丁度いい場所にありますから。あと、朝日姫なんかも病気療養に来てます」
「朝日姫って…秀吉の妹だっけ?」
「そうですね」
織田家や豊臣家と言った、中央に近い武将の家からもわざわざ草津まで足を運んだものがいるという。
「ねー、秀吉本人は来てないのー?」
話しを聞きながら明日香が聞く。
「秀吉本人は行く予定をばっちり立てて宿の予約とかまで整えてはいたけど、ドタキャンしたらしいよ」
「なんで?」
「…忙しかったんじゃない?」
紗代の言う通り、秀吉のこのドタキャンは多忙のためだと言われている。
「他にも面白い逸話はあるぞ!」
今度は晴美が説明を開始する。
「秀吉は、家康に草津の温泉を勧めたことがあってな」
「行ったことないくせに?」
「…うん」
明日香の横やりにちょっと困る晴美。
それでも話は続ける。
「草津は対立してた真田家のものだったから、家康は行きたくても行けなかったんだけど、その代りお湯だけは家臣に送ってもらったみたいね。暴れん坊将軍も同じようにお湯だけ江戸に送らせてるから、徳川家は草津ファンだったんだよ」
へぇー、と一同声を漏らす。
「本多忠勝も草津には是非行きます!って手紙出してるよ。行って無いけど」
「行って無いんかい!」
明日香の鋭いツッコミが飛んだところで、今度は紗代。
「ここに書いてある大谷吉継ですけど、草津の効能について直江兼続に手紙でわざわざ書いてます。草津のお湯は目に良いって」
「目…?ほんと?」
「さぁ…でも、関ヶ原の時にはすでに失明していたとも言われる吉継ですから、きっと嘘は言わないかと。目洗い地蔵と言うものもあって、昔から眼病に効果があるってされてますよ」
乙葉の質問に言葉を選びながら返した紗代だった。
「前田利家は何かしたんです?」
乙葉が晴美に聞く。
「ああ、利家は死ぬ前年に来てるんだ。で、盛大に湯治に励んだ。なんか湯治と言うよりかは宴会に近いものだったらしい。きっともう死ぬってわかってたから最後に楽しいことがしたかったんだろう」
「なるほど…」
知れば知るほど、歴史の重みが増してくる。
この温泉も神聖な場所のような気さえする。
今は観光地になってはいるが、昔は病に苦しむ人が最後の切り札としてやってくることも多かったこの場所には、数多くの無縁仏が今も数多く存在している。
「なんか…歴史を知るとただの観光地って感じじゃなくなりますね」
「…そうかもな」
「ねぇ!そろそろ温泉入ろうよ!」
明日香の声に、みんなが歩きだす。
「まずはどこ行く!?ね!ね?」
「じゃあ、ここは?西の河原露天風呂!」
地図を広げながらはしゃぐ明日香に、意見を出す乙葉。
「いいですね!」
「いいじゃん!露天風呂!」
それに二人が同意して、4人は西の河原へと足を進めるのであった。
大学の研究室の卒業旅行で草津行ってきました。
その時にやたらテンション高くなったのが本文3枚目の武将の名前が彫られてる柵です。
で、気になってちょっと調べたら逸話が出るわ出るわ。
で、急遽草津編でお話を一本書いた次第でございます。
…で、せっかくの温泉回なのに挿絵は無いのかって?
A.ありません。
すいません、気が利かなくて…。
(今から言えばげどーさん描いてくれるかな?)
読者様からのご要望があれば…きっと!(いやらしいコメントのおねだりをしてみる)
さて、では今回はこの辺で!
草津はいいところでしたよ!
これから新幹線乗って大坂と姫路に行ってまいります(なのに徹夜でこれ書いてた)
目指すは大阪城と真田丸跡とその他たくさんの大河ドラマで出てきそうなところと姫路城です!
岩櫃城もいつか行きたいけど…体力が…。