戦国息子と歴研部 熊之助編
遅ればせながら、明けましておめでとうございます!
去年の終わりに話しは遡ります…。
年末に1年の反省する回を一本書こうと思っていた私ですが、そこにコミケが挟まり、大晦日もバイトで結局書けず年明け。
そしてお正月に入り、二日にも更新しようと思っていたらここで39度の熱が出てダウンしました。
3日間ダウンした後学校が始まりレポートこなして現在…。
遅くなってすいませんでした!
本当は完結するまで書いてから載せるつもりでしたが、早くしなきゃーと思って前後編に切りました。
後編はこれから書きます。
いやはや、言い訳ばかり並べても仕方ありませんので、そろそろ行きましょうか!
明けましておめでとうございます!2015年も君に幸あれ!
「よっ!かーえで!やってるねぇ!」
「わっ!すみれ!来てたの?」
ここは楓の神社。
お正月も三が日を過ぎたというのに朝から大盛況の境内で、絵馬の整理をする同級生を見つけてはしゃぐすみれ。
「晴美と明日香もいるよー」
そう言ってすみれが振り返り、二人を指差す。
「明けましておめでとう、楓」
「楓先輩!おめでとうございます!」
晴美と明日香が新年のあいさつをしたところで、本題に入る。
「この後暇?」
「え?あー、お昼過ぎからは抜けられると思うけど…?」
なんとなーく、すごーく嫌な予感がする楓。
「何?屋台食道楽の旅ならもうやらないわよ?結局全店回って食べれたの2つだったじゃない!」
楓のトラウマとなっているこれは、神社の境内に出店している屋台の前で、晴美・楓・すみれの名前と何も書かれていないカードの4種類の中から1枚引いて、名前が書かれている人だけが食べれないというルールで行った屋台巡り。
何も書かれていないものを引いたら全員食べることはできない。
この結果、やたらめったら白紙のカードを引き、散々な目にあったのだ。
綿菓子とハッカ飴だけを手に、開始直後の「全部食べてたらお金大丈夫かしらね?そんなに食べられるかしら」と言っていた自分を叩いてやりたい気持ちになった。
この時のトラウマから、年明けに晴美から持ちかけられる話には少々身構えてしまう。
「いやいや、終わったら高校来てよ。その格好のまま!幣持って!」
「え?」
その格好…すなわち商売道具の巫女服。
楓のはバイトのと違って各式のあるしっかりとした着物である。
染料も化学ではなく天然だったりとまぁ、いろいろ違う。
「…あの…恥ずかしいんだけど…これで学校行くの…」
「今は恥ずかしくないの?」
「そりゃ、ホームだから!ほら、テーマパークで買ったケモミミカチューシャとか、普段付けてると恥ずかしいでしょ?あんな感じ!テーマパーク内ならいいのよ」
すみれの質問に慌てて返す楓。
「それじゃ、楓。部室で会おう!」
「あの…来てくださいね!」
3人は屋台が並ぶ方へと立ち去って行った。
「よーし、晴美!明日香!出店で食道楽勝負よー!」
そんなすみれの声が遠くから聞こえてきたが、巻き込まれたくないので残りの仕事に集中することにした。
「…行くかなー。服は…持っていこう…制服で…」
小さく伸びをして、巫女としての今日の職務を全うすべく励むのであった。
さて、歴研部。
まだ冬休みで、熱心な運動部くらいしか学校には来ていない。
とはいっても熱心な運動部は野球部くらいなので、校庭から金属バットの甲高い音がひびいてくるくらいである。
社会科資料室を使い開かれるこの部会も、新年初。
黒板には大きく『明けましておめでとう』の文字と、車に貼るような縁起物の藁の編み物。
そして教卓には鏡餅。
これは顧問の由佳先生が持ってきたもの。
大きくは無いが雰囲気は出ている。
異様なのは机の配置。
円形に配置されていて、真ん中は何も置かれていない。
机の数は由佳先生も含め全員分用意されている。
「円卓の騎士ね、これじゃ」
「そんなかっこいいもんでもないでしょー」
紗代の呟きに明日香が突っ込む。
一つだけ席が空いている。
そこが、楓の席になる。
楓は現在お着換え中。
「結構時間かかるんだな」
「女の子の着替え、知らないでしょヤマト」
鬨哉と乙葉。
「まーまー、ただの着替えじゃないんだし?」
「そ、そうですよ!ええと…着物…ですから…」
すみれとひなた。
「大変なんですね」
「お待たせしました!」
由佳先生が立ち上がろうとしたとき、楓が飛び込んできた。
手には幣。
「まったく、仕事終わりにこんなことやらされて…。感謝してよね!」
そう言うと、楓は空いていた机の前に立った。
「じゃあ、やるよー。で、誰を呼び出せばいいの?」
「そうだなぁ…。去年の大河の主役、黒田官兵衛だな!」
「了解!上手くできるかわかんないけど、やってみる!」
楓の降霊術。
天から霊として偉人を呼び出して弄る術。
「そーれ!はい!」
軽快な掛け声と同時に、机でできた円の中心に10歳くらいの男の子が出現した。
「えーっと…?」
戸惑う一同。
しかし、確認しないと始まらない。
ここは乙葉が行く。
「あの…黒田官兵衛さんですか?」
「あ、それ父上の名です!」
官兵衛の息子と言うことは…。
「長政さん…?」
「それは兄です!それがし、黒田熊之助と言います」
誰!?
皆が楓を見る。
「ごめーん。仕事帰りで疲れてたのかなー。間違っちゃった」
笑ってごまかしている。
仕方ないのでそのまま話を聞くことに。
「官兵衛って長政以外に息子がいたんですか?」
「はい、熊之助…確かに実在しましたが…」
乙葉の質問に、なぜか尻すぼみになる紗代。
晴美も、なんとなく顔を背けている。
「ああ!残念な方の息子ね!晴姉ぇ!」
紗代が飲んだ言葉を堂々と吐き出す明日香に、慌てる親友のひなた。
「ざ、残念とはなんですか!」
「でもさー、やっぱり父親は強いじゃん?それなりに凄い活躍したんじゃないのー?」
すみれが聞く。
この言葉、熊之助にはトドメとなりうるものだと知らずに。
「えーと…。ほら!僕の時代は秀吉様が天下を取っていたから平和で!武功は特に無いんだ」
「活躍してないんだー」
「ぐぅ…僕だって…僕だって活躍しようと思ったのに…」
船が轟沈するがごとく勢いで、熊之助の元気が無くなっていく。
「で、でも…関ヶ原とかで…。その…働いたのでは…?」
ひなたの問いに、首をかしげる熊之助。
「関ヶ原?何?何かあったのですか?」
官兵衛死去が1604年。
ひなた的には、官兵衛よりかは長生きのイメージでいたのだろう。
「関ヶ原知らないのー?じゃあ、朝鮮出兵!」
「う゛、頭が…」
明日香がうろ覚えの知識を駆使して放った言葉が突き刺さり、熊之助は頭を抱えてうずくまってしまった。
「あーあー…」
晴美が妹を見る。
笑顔のままハテナマークを浮かべる由佳先生に、晴美が説明を始めた。
「この黒田熊之助はですね、黒田官兵衛の次男です。しかしまぁ、初陣するような戦も無いまま朝鮮出兵があったんです。一度目はそのまま日本にいたんですが…」
ちらっと、熊之助を見る。
涙目だ。
「二度目はなんかもう…」
「…こっそり朝鮮に渡って、父上に内緒で武功をあげてやろうと思ったんです。そしたら…。まさか、乗ってる船が沈むなんて…とんだ泥船でした。タイタニックかよ!が最期の言葉になりました」
「それはおかしくない!?」
乙葉が突っ込むが、本人は気にした様子も無く晴美から引き継いで話した。
「なるほど…。戦ったこと無い戦闘狂か…。新しいな」
鬨哉が熊之助に新しいキャラを付けた。
「武功欲しさに朝鮮に渡ろうとしたら船が沈んだ…。それだけの話です。罰が当たったのよ」
紗代が冷たく言い放つ。
「あの…なんか可哀想だから帰してあげてもいい?」
ずっと見ていただけだった楓がここで口を開いた。
「いいよー」
「じゃあ…はい!」
熊之助の姿は、一瞬ですっと消えた。
「なんか…いじめだったな…」
「この机の配置も相まって…可哀想でしたよ…」
「次は誰にする?」
「家康!」
明日香の提案に反対する者も無く、楓は霊を降ろす。
「はっ!」
振り下ろされた幣の先には、熊之助よりも一回り年上の男がいた。
「拙者、松平忠輝!ここに参上!」
…え?
またミスした楓であった。