四百三十七番槍 「殿」と呼ばれること
以前、「日の本も各武将にキャラ付ければ相当面白くなると思うのにー」と言われたことがあります。…五円玉に。
一理ある。ごもっとも。
たしかにそれはあるのです。
しかしですね、変にキャラを付けて、明らかにキャラに合わない逸話とか出てきたらおっかないじゃないですか。
そんなわけで、私はそれ却下しました。
悪くないんですが…3年間も同じように書いてると、キャラ忘れますし…。
「敵軍、その数4万!」
「…ふぅむ。こちらは?」
「お味方、約700くらいかと」
改めて聞かずとも、分かっていた。
敵の数も、圧倒的不利も。
…ここが死に場所ということも。
高橋紹運は、圧倒的不利の中、岩屋城に籠城した。
攻者3倍の法則など、もはや無力なほどの兵力差。
岩屋城を囲む島津軍は、それほどに強かった。
「この城は、あと20日持てば大したもんじゃな…」
城から外を眺める紹運は、もはや覚悟を決めていた。
そして、一人の家臣を呼び寄せた。
「山城殿!」
紹運が呼んだのは杉山山城。
「殿?」
山城は戸惑う。
主君から「殿」などと呼ばれたのだから。
すると、紹運は薄く笑った。
「杉山家は、かつては我が高橋家よりも上位にあったお家であった。今でこそ逆となってしまったが、以前から同僚のような気がしてらなんのだ。…もはやこの城は、20日ほどしか持たないだろう。そんな現状で領地増加を約束したところで、実現はできぬゆえ、殿と呼ばせていただき、褒美としたい」
そこまで聞くと、山城はギュッと拳を握る。
「なんなりと!殿のお頼みとは、何でございましょう」
呼ばれたからには、用がある。
山城は紹運の心遣いに感謝しつつ、それには触れずにまっすぐ主君を見て、そう聞いた。
「…今、敵軍の中で我が次男、直次が孤立して戦っておる。どうか、心残りが無いように宝満時に送ってやってくれ。…それが無理そうなら、殺してくれ」
「わかりました。必ずや!」
そういうと、山城は城を出て行った。
「山城、出撃します!」
「…さらばじゃ」
こうして、山城は敵の中を突破した。
そして、無事に直次を送り届けることに成功したのだった。
紹運です!
暗黒JK…違う。安国寺恵瓊の逸話を探すもいいものが見つからず、紹運に逃げの一手です。
大河も大詰めと言うことで…暗黒JK…安国寺恵瓊書きたかったんですけどねー。
そういや、大河の最終回放送できないかもとかニュースで流れてました…。
…え?
因みに、20日ももたず、実際は13日で落城したっぽいですね、岩屋城。
すっごくどうでもいいですが、最後の「山城、出撃します」のセリフの前には「(扶桑型戦艦)山城、出撃します」と入れると、元ネタが分かるかとおもいます。
じつは意識して書いた艦これネタでした(笑)