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歴史絵巻第四幕 Let's Go 城巡り~小倉城・鉢形城~

乙葉

「まず作者からのお知らせ!前回の、『本能寺の変~光秀のクーデター~』は三十八番槍ではありません!」


晴美

「よしよし。そんなことより久しぶりに私たちの出番だぞ!乙葉よ!」


乙葉

「はいっ!噂によると新キャラが出ると…!」


晴美

「出るぞ!」


乙葉

「そんなあっさり…」

「先生!今回はご同行願いまする!」


右手を高らかに挙げて宣言するように叫んだのは村上乙葉むらかみおとは


高校一年生。戦国時代を愛する歴女。


「先生、今回はお願いしたいです」


乙葉に続き言ったのは焙烙晴美ほうろくはるみ


高校二年生。乙葉の先輩。度を越した歴女。



ここはとある高校の社会科研究室。


今日もここで歴史研究部の活動は行われていた。

珍しく顧問も来ている。


「えぇ…。それは構いませんが…。いつものように公共交通機関を使えばいいのでは…?」


先生と呼ばれていたこの女性。歴史研究部の顧問である毛利由佳もうりよしか


顧問なのに歴史の知識はあまり無い。現在頑張って勉強中。

しかし、彼女たちには追いつけない。


「いつか歴史の知識で部員に勝つ!」が目標の25歳の新任教師!


「いえいえ。車で行きたいんですよ!」


「そういうことですな!」


二人が言った。


「え?ま、まぁ、いいですけど…。何でですか…?」


由佳先生は生徒に対しても敬語を使います。


「八高線が最寄駅なんですけど…。あの路線アテにならないので。しかも駅からメッチャ歩くんですよ!」


力が入る乙葉。


「アテに…ならない…?」


首をかしげる先生。


「はい。一時間に一本あることは稀な路線です!」


「ああ…。そういうことなら…!」


「「ありがとうございます!」」


二人揃ってお礼を言った。



翌日…。


集合時間よりも30分早く、学校の正門で待っている由佳先生の姿があった。


手にはスマホ。


ネットに繋いで検索するワードは「小倉城」。


必死に今日行く城の勉強中。


一生懸命な先生です。


「おっはようごっざいまーす!」


「おはようございまーす!」


乙葉と晴美同時に登場。


電車が一緒だった。


「あ、おはようございます。早いですね…」


時計を見ると、集合時間までまだ20分ある。


「えへへ~!」


笑って見せる乙葉。


「よしっ!揃ったので出陣しますぞぉ!」


晴美が叫んだ。




先生の車に乗り込み出発。


カーナビは小倉城を案内している。


道が空いていることもあって順調に目的地に近づいていった。


暫く絵に描いたような田舎道を走ると…。


『目的地に到着しました』


カーナビの案内は確かにそう言った。


しかし、目の前には川。


橋は無い。


カーナビを見ると、川の向こうに「小倉城」の表示がある。


「えぇ~~…」


誰しもがカーナビに突っ込みたくなった。


「目的地じゃねー!」


仕方がないので、橋を見つけて川を渡り、それらしい場所を求めて車を走らせた。


しかし城への道が分からない。


そんなとき…。


「カーナビ的には、ここの真横なんですが…」


そう言って、由佳先生が車を停めた。


そこは、寺の前だった。


「お寺…」


「行ってみる価値有りだな!」


「行くんですか!?」


3人は車を降りてお寺に向かった。


大福寺と書かれた門を抜けて奥へ行くと…。



「んっ!」


「あっ!」


「お~!」


それぞれ歓声を上げる。


3人の目の前には、「小倉城→」と書かれた看板が立っていた。


矢印の先には細い山道が続いていた。


「城~!お城~!」


「これ…切り通し!乙葉よ!切り通しだぞ!」


上機嫌で山道を登る2人とは対象的に、由佳先生はクタクタだった。


「ちょ、ちょっと待っ…て…」



山道を登りきると、石碑が建っているのが見えた。


駆け出す2人。

それに続く由佳先生。


「ふふん~。これは…山城ですね!」


得意気に言う由佳先生。


朝勉強した成果を発揮したかった。


しかし…。


「え?あぁ。そうですね。山城の典型です。え?あの…どうしたんですか?突然当たり前のこと言い出して…」


晴美が言った。

彼女にとっての当たり前は少しずれている。


「当たり前…」


由佳先生が受けたショックは計り知れない。


「城主は遠山右衛門大夫光景か…。松山城と共に小田原攻めで落城…」


晴美が案内看板を読み上げた。


「小倉城と言って、福岡に行かないあたり私たちですよね!」


乙葉が説明看板を読みながら言った。


「乙葉ちゃん。福岡にも小倉城ってあるの?」


生徒をちゃん付けで呼ぶ由佳先生。


「はいっ!細川忠興のがありますよ!あっちのほうが遥に有名です」


ホソカワ…タダオキ…?どなた様?


由佳先生にとっては呪文のようだった。



「よしっ!大体わかった!では遺構を回ろうではないか!」


説明を読み終えると、晴美は高らかに叫んで遺構を観察し始めた。


「この岩を切り通したみたいのが虎口門跡なんですね!」


要所には紙が貼られていて、わかりやすくなっている。


「所々、凹凸があって…。何ですか?これ…」


由佳先生の言う通り、辺りには溝や盛り土がある。


「それは堀や土塁ですよ!城跡っぽいですよね!」


由佳先生の疑問に乙葉が答えた。


乙葉の答えに小首を傾げる晴美。


少し土塁が崩れ、石が露わになっている部分があったのに気付いた。


「乙葉よ!恐らくこれは土塁じゃない!石垣だ!」


乙葉に向かって言い放った。


「先輩?土ですよ…?積んであるの…」


彼女は不思議そうな顔で晴美を見ている。


「いや、これは保護のために石垣に土をかけたのだろう。さっきから、石垣の積みかたがおかしいのだ!」


「で、珍しいから保護の為に…?」


「恐らくは。関東だとあまり見ない石の積みかただしな!薄い石を積んだ平積みというやつだ」



他の郭も見て、小倉城を後にした。


土塁、堀などが割とキレイに残っていた。



「ふぅ~…。疲れましたぁ~…」


車に戻った由佳先生が、真っ先に発した言葉。


多分、肉体的によりも、精神的に。


晴美と乙葉に付いていけなかったのだろう。


「お疲れ様です!ジュースでも買って…って、この辺自販機無いですねぇ…」


苦笑いする乙葉だった。



「この後は…学校でいいのかしら?」


カーナビをセットしながら聞く由佳先生。


「ふふふ!甘いですぞ毛利先生!今日はもう一つ落としますよ!」


晴美が得意気に言った。


カーナビをセットする手を止めた先生。


肉体的にも疲れている。

山歩いたし…。


「え?まだ行くんですか…?もう山道は嫌です…」


肩を落とす先生に晴美が言った。


「次のところは山じゃないです。車で直接ですから!」



カーナビの目的地にセットされた場所。


「鉢形城」。


小倉城からはそんなに離れていない。


ついでに回るには都合がいい。


カーナビの案内が終わる直前、景色が変わった。



芝生。

広い芝生。


これは明らかに…。


「お城ですー!」


「鉢形城だっ!」


テンションの上がる2人。


由佳先生は山登りをしなくて済むことに安心感を覚えた。


まずは車から見えた芝生を見に行った。


ところどころ案内版が建っている。


「ほう…。ここが馬出で、あっちが三の郭…。石垣と門はみんな復元か…」


「わあっ!石組の排水溝まであります!こっちが通路になってて…。井戸まで再現されてるー!」


早速思い思いの行動を取る2人。


30分後に集合ということにして、由佳先生も城跡を歩いた。


「ここが…堀なのかなぁ?結構深い…。堀の底が仕切られるようにデコボコしてるけど…。あれは何かなぁ…。段差…?」


由佳先生は「障子堀」を知らない。


「へぇ~。庭園もあったのねぇ!何でもあるのね」


のんびりと歩いていると、自然に2人をみつけた。


「川の合流地点…。難攻不落の城だったんですねぇ」


「そりゃそうだ、太田道灌や前田利家や鳥居元忠や本多忠勝や上杉景勝や武田信玄や上杉謙信に攻められたからな!」


「無理無理無理!無理ですよそれは!よくぞまぁ、そんな名だたる武将が…」


「で、最後は小田原攻めですよね!?」


話しこんでいる乙葉と晴美の背後から、由佳先生が話しかけた。


「ひゃっ!ビックリした…。そうですよ。最近小田原攻めの被害を受けてる城しか行ってないような…」


肩をビクンッ!

素で驚いた様子の乙葉。


確かに、乙葉の言う通りではある。


小田原城・松山城・山田城・小倉城・鉢形城…。


大坂城以外は全て…。


「まぁ、住んでるのが関東だからな!近場だとそうなってしまうのは仕方が無い!というか先生、よく御存じで…!」


感心した様子の晴美。


「えへへ~。あなた達の話に少しでも付いていければと思いまして…!」


さっきまでスマホで見ていたとは言えない。


「障子掘、見ました?」


「障子堀?」


頭にハテナマークを浮かべる先生。


乙葉が晴美に目で合図を送る。

説明してあげて!という意味らしい。


「障子掘は、堀の構造のことです。底が障子の格子のように仕切られている堀です。大坂城なんかが有名ですが、そこの堀にもちょっとだけありますよ。敵が動きにくくなるんですね」


晴美が説明した。

これぞ以心伝心!


ああ、さっきの段差は意味があったのね。


これで納得した。


「向こうに、鉢形城歴史館という建物がありましたよ。行ってみませんか?」


「「はいっ!」」


3人で歴史館へ入った。


「城主は北条氏邦か。確か…氏康の息子…」


「四男ですよ!先輩!」


由佳先生にとっては少々難しい説明が並んでいた。


歴史館を出て、ベンチでジュースを飲みながら休憩する3人。


「結構大変なんですね、お城回るのも…」


「いえいえ、日本100名城に登録されてるような城は楽ですよ!まぁ、今日の小倉城みたいなのは大変ですけどね…」


しばらく休憩すると、晴美が立ち上がった。


「よ~し!もう一発行きますかぁ!」


そう叫んだ。


「えぇ~!まだどこかあるんですかぁ…」


目が回りそうな由佳先生。


「ここからそう遠くないところに、あるんですよ!玉川温泉!」


「温泉!先輩…いつの間に調べたんですか!?」


「いいですね、温泉!」


3人は玉川温泉へと向かった。




由佳

「はじめまして。後書き初登場です!」


乙葉

「わぁ!先生!お疲れ様でした!


晴美

「小倉城は大変でしたね」


由佳

「でも、温泉は気持ち良かったなぁ…」


乙葉

「玉川温泉は成分が良いんですよ。結構混んでましたし、地元じゃ有名みたいですね」


晴美

「ちょっとくらい、温泉に入っている場面が出てきても良かったんじゃないか!?」


乙葉&由佳

「「嫌です!」」


晴美

「………。実は、小倉城近くにお豆腐専門店もあったんだが…」


乙葉

「あっ!そっちも行ってみたかったですぅ…」


由佳

「次は、どこへ行くんですか?」


乙葉

「ん~…。片倉でしょうか?」


晴美

「まぁ、作者が行った城も、あとは片倉と沖縄のグスクくらいしかないからな」


由佳

「えぇ?せっかく私も一緒に行ったのにぃ~…。グスク…?」


晴美

「グスクは沖縄版の城です。まぁ、作者の隣町にも城はありますし…。大丈夫でしょう…」


由佳

「うぅ~…」


乙葉

(片倉城…。大丈夫かなぁ…)

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